紙の本
劇画で学ぶ金融知の世界
2007/08/14 14:12
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hisao - この投稿者のレビュー一覧を見る
幸田真音さんの小説には一定のパターンがあるようです。
“賢くて美貌”のヒロインやヒーローが“マーケットの論理”で凶暴な“カタルシス”を引き起こし、結果的に日本を救う。デビュー作“小説ヘッジファンド”もベストセラー“日本国債”も、“お約束”と“マーケット信仰”が鼻について、ちょっと引いてしまいました。
でも真音さん、さすがですね、“日銀券”はなかなか素晴らしい出来でした。
と言ってもまさかに真音さんのトラウマとは考えられませんが、相変わらず “賢くて美貌”のヒロインが活躍します。ヒロインにまつわるサスペンス仕立ても劇画調なのですが、
今回は自由化、規制緩和を説きアメリカン・スタンダードを迫るアメリカの“お家の事情”など、より複雑な世界経済の現場を活写しておられます。
“賢くて美貌が何故悪い、劇画調で何故悪い”と真音さんの肩を持ちたくなりました。
マイナス金利の意味、量的緩和政策と日米国債との関係、短資市場・年金等への影響、日本経済と米国経済や中国経済との関係など経済の“ほぼ定説”が日銀や短資取引の現場を通してとても解りやすく描かれています。
現実の日銀“奥の院”でも“量的緩和解除”の際にはこのような議論が戦わされたのじゃないか、アメリカの“中国元切り上げ”要求に日本が諸手を挙げなかったのもこんな感じだったかもと、ちょとドキドキさせてくれました。
それに加えて米国経済を標的とする“陰謀”の懐に入り込み“金融マーケット”の論理を武器に取って“日本経済を救う”美しくて若い日銀副総裁。今時珍しい老学者の“恋のときめき”もあります。
と言う事で“劇画で学ぶ金融知の世界”、いいじゃ有りませんか。
今回発刊された“バイ・アウト”も読むのが楽しみです。
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日銀の政策委員会のメンバーに選ばれた中井昭夫は、新たな日銀副総裁である芦川笙子にゲームへの参加を持ちかけられる。バブル崩壊後の日銀が抱え込んだ最大のテーマ、ゼロ金利政策解除を巡る人間ドラマ。就活中に駅の売店で衝動買いした一冊。
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超金融緩和が続く日本。
日銀の最高意思決定機関、政策委員会のメンバーである中井昭夫は旅行先で、芦川笹子という謎めいた女性と運命的な出会いを果たす。
日銀副総裁として再び目の前に現れた笹子に徐々に惹かれていく中井。
そんな中井に笹子はあるゲームを持ちかけるのだった。
ゼロ金利政策解除をめぐる人間ドラマと日本の病める金融市場の本質を鋭く描いた問題作。
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日銀のゼロ金利政策解除をめぐる人間ドラマ。審議委員の中井昭夫が40歳手前の若さで副総裁に任命された芦川笙子に心奪われて行く。笙子に政策委員会の主権を握るために組むように誘われ、一度中井は断るが笙子の美貌に惑わされて遂に手を組むことに。2人の間に愛があるのか、それとも中井が籠絡されているだけなのか、上巻の段階ではまったく読めません。下巻が楽しみ。著者は女性だけど男心がよく読めている。きっと恋愛経験が豊富なんでしょうね。
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幸田真音2冊目。
んーやっぱりこれも、筆者が自身と重ね合わせているだろう中年女性
(仕事ができて大変魅力的な外銀出身の女性)
がでてくるのでさめてしまいますが・・・
日銀、というなじみのない世界をちょっとしれるのが面白かったです。
にしても、その女性(副総裁になるっていう)が
結局財務大臣となにもなかった、みたいな綺麗なおちになってるけど
主人公にせまったあたりから、
本当理想の登場人物をよごしたくなかったんだな、と
筆者って自分すきなんだな、、とか想像してしまいました。
2008、Aug
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日銀とは、一体どんなことをしているところ
なのだろうということが、よくわからない。
お札を、印刷しているところだと思ったら、
印刷局から購入して、その価格で、流通させるところ
なんですね。一万円札は、28円とは。
三上部長が、将来を担う坂井に、説明をするが、
専門的用語が多く、よくわからない。
量的緩和政策が、日銀の足かせになっていること。
それを、どのように、変革するのか?
新進気鋭の40歳を前にした女性が、日銀の副総裁となる。
笙子が、一体何を目標としているのか。
上巻だけでは、皆目検討もつかない。
東亜大学の中井昭夫。61歳は、日銀のボードメンバーとなり、
アフリカ旅行で、笙子とであう。甘い記憶を残しながら、
再び、副総裁となった 笙子と出会い、ゲームをしないかと誘われる。
61歳という年齢と実直である中井は、心が揺れ動く。
幸田真音の世界が、巧みに展開される。
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★4.3(3.23)2004年10月発行。自分が金融機関出身だからか日銀の審議委員に二人も知り合いがいるからかとても面白く読めました。日銀副総裁に女性をもってきたり、最初の中井と笙子のアフリカでの出会い・・・なかなか面白かったです。前回読んだコイン・トスも面白かったが、著者のディーラーの経験が生み出した小説なんだろうなぁと。ディーリングの部分は少し専門的なところが多くよくわからなかったが、中井と笙子が今後どのように関わっていくのか、下巻が楽しみですね。