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風景と物語との距離感が実に心地良い。風景を物語の象徴だと受け取ってしまえばそれまでなのだけれど、そこはあえて、ただそこにあるものとして読んだ方が楽しめるはずだ。
この短篇集で描かれるのは、人情劇に近いものなのだけれど、それにしてはテーマが明確で無いし(けして悪いことではない)登場人物たちの感情もはっきりしない(重ねて言うが、けして悪いことではない)。
こういうタイプの小説としては、O・ヘンリーほど劇的ではないし、モーパッサンほど冷たい視線を注いではいない。
ただ実に正確に、実際に存在するであろうタイプの人々に心を寄せて描くその姿勢には、不覚にもうるっとくるものがある。レイモンド・カーヴァーというのは、本当に良い小説家だ。
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本全体としては、アメリカの中流階級の家庭にまつわる出来事についてのものであった。前半の短編では強い意図を感じさせる語句が文章に散りばめられていて読みやすくあったが、後半の短編に行くにつれてすぐにそれとわかるような隠喩などが減って多様な解釈を許してくれるような文体に変化していくのが分かり、興味深く感じられた。個人的にいえば登場人物に救いが与えられる後半の短編たちの方が好みであった。
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短篇集。自分の好みだった。ラストに人の覚悟や希望が映し出されるような短編があってとてもよかった。「ささやかだけれど、役にたつこと」は『愛について語るときに我々の語ること』に収録された「風呂」に、続きを少し足したもの。とはいえそれが感動的だった。
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こんなにすっと入ってくる短篇ははじめて。重い話題が多いのに、その人がどんな人なのかとてもよく想像できる。悲しい話が多くて人間の嫌な部分も出るんだけど、何処かあったかくなる。希望が持てる。
『ささやかだけれど、役に立つこと(A small, good thing)』の解題で「悲しい話だ。本当にヘビーな話だと思う。しかし最後にふっとパンの温かみが手のなかに残るのだ。これは本当に素晴らしいことだと思う。」って村上春樹が言ってて、本当にそれなのよ〜〜〜って10回ぐらいうなずいた
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人生の辛い局面をどう悲しみを悲しいまま感じつつ、かつ冷静にスルーしていくか。
「ささやかだけど役に立つこと」で息子を亡くした両親の苦悩と、彼らを救ったパン屋さんの存在。
生きてることと死ぬことはとても近くにある、それと同じく、喜びと悲しみも近くにあることを教えてくれる。一生読み返そうと思う。
カーヴァーさんは本当に労働者に優しい本を書く。人生がゴミクソでも、働かないとご飯は食べられない私にとって、心強い。
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レイモンド・カーヴァーの三冊目の短編集。
これまでの作品よりも、話が長くなって人間味が出て来てた。 登場人物はやはりアル中や夫婦生活が破綻している(しそう)な人、失業者など。この辺がカーヴァーさんのアイデンティティーなのでしょう。
半分くらいの話は面白いけれど、あとはそうでもなくて、全体としてもまあまあといった感じでした。
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レイモンド・カーヴァーの短編集。これぞ読書の醍醐味と言っても決して過言ではない。どの短編も捨てがたいが、特に表題作である「大聖堂」を読んだときには、何かが「降りてきた」ように感じた。そんな本ってあまりない。
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悲劇的な出来事であってもレイモンドカーヴァーに語られることでどんなハッピーエンドよりも美しい話であるように思える。
人生から悲劇を取り除くことはできないけれど
レイモンドカーヴァー的考えがあれば全ての出来事を美化できると思う。
この思考を持っていれば見かけだけのキラキラ生活を送るよりもずっと素敵だろうな。
本当に美しいものに触れた時に感じる、胸が締め付けられる冷静な高揚がずっと続いていた。
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どの作品でも、何気ない日常を描きながら、そこに不意に起きる奇跡的なシーンが印象的だった。人に優しく生きるとはどういうことかを考えさせられた。
特に、タイトルでもある大聖堂はよかった。カーヴァーはまた読みたい。
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すべて違うストーリーを集めたものだけど一貫して人と人とが接した時にぽっと起こる奇跡みたいな。同じことを形を変えてみせられてるような感じがした。影響し影響され、癒し癒され。タイトルになっている大聖堂がピカいち。次は原文読みたい!
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羽根
ささやかだけど、役にたつこと
大聖堂
がよかった
大聖堂の最後はどういうことだろう?と考えた
なんだか不気味だけど、味わい深い
またカーヴァーの作品を読んでみたいと思った
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優れた小説は確かさに裏打ちされる。フィッツジェラルドの短編も、ヘミングウェイの短編もそうだ。確かなあたたかみ、確かな孤独、確かな悲しみ。そういった確かさをレイモンドカーヴァーの短編はしっかりと備えている。それは一級の文学作品であることと裏表だ。優れた小説を読む喜びに胸を浸しながらゆっくりと一冊読んだ。
どの短編もじんわりと良くて一言ぐらい何か言いたくなるが、『ささやかだけど、役に立つこと』がなかでも抜きん出ていたように感じた。突然の悲劇に見舞われる夫婦と、愛から見放されて投げやりな日々を送るパン屋の出会い。悲しみはとめどなく、そこから浮上する方法は見えないが、パンは確かにあたたかくて柔らかい。そういったことがシンプルな描写から実感としてずしりと伝わってくる。
派手さと分かりやすさがない分、カーヴァーを読みこなすにはそれなりの小説を読む力というか、味わう力が必要なように感じた。これはある人にはあるし、ない人にはない、私もかつてはなかったのだけれど、いろんな小説を読んで鍛錬して、小説を読む力が少しずつ育てられたみたいだ。そういうことを感じられるのは、私にとってとても嬉しいことだった。
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ポッドキャストの紹介を聞いて。
大聖堂、見えない世界で見えること、見えないで感じること。
何の内側にもいない感覚のすごさ。止まらなくなること。
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『バーナード嬢曰く。』6巻に出てきた短編集。この表題作について話す遠藤くんと長谷川さんのやりとりが大好きすぎて、作品へのハードルが上がってしまったな。『ささやかだけれど、役にたつこと』が一番胸に応えた。
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密室殺人の謎を解き明かしたいから、ホッキョクグマの生態が知りたいから、はたまた確定申告の仕方がわからないから、、、人は色んな理由で色んな本を手に取る。私にとって、本、もっと言えば小説を読む理由は色々あるが「自分が歩むかもしれなかったifの人生を追体験し、そこにどんな感情が生まれるのかを知りたい」からというのが一つだ。
その意味でこの「大聖堂」は自分の経験値を高めてくれたと感じた。
自分の子があまりに不細工でも(友達が嫌々見せてくれた彼女があまり可愛くなかったあの感覚に似ている)その子を愛すことの尊さを知った。
自分の子を失った絶望の淵で救いになるのは見え透いた同情でもお金でもなく、小さなパンの温かみであることを知った。
飲んだくれの浮気者だからこそ愛を信じたいと、そう思った。
妻に逃げられ、何もかもうまくいかない中で一人のベビーシッターから喪失と向き合う力をもらった。
盲人と手を重ね合わせながら目が見えない人間の心のありようを感じとった。
書き出してしまうとあまりに陳腐だが今後自分の人生で悲しい出来事に見舞われた時、帰ってくるのはこういう作品なんだと思う。