紙の本
お坊さんが困る仏教ではない話
2008/02/12 20:51
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちひ - この投稿者のレビュー一覧を見る
主な主題は戒名とお経である。戒名が仏教徒としての名前(クリスチャンネームならぬブディストネーム)であることを認識しつつ、現代はもはや戒が成立しないから戒名など無意味だと結論づけたうえで(法名も同じ扱いを受ける)、戒名について大変くわしく解説する。また、大乗仏教は非仏説であるとの説を肯定的になぞった上で、それでも大乗のお経は敬うべきだと言う。混乱している。
たくさんのテーマを、調査も理解も不十分なまま中途半端に扱い、オチだけつけて放り出している。結論としては〈仏教は葬式だけやっていれば良いのです〉と言っているに過ぎない。仏教語の解説も、正しいものもあるが、知識が不完全で空回りしたり偏ったり独りよがりであったり単純に間違ったりしているものも多くある。(地の文で自明的に扱われている言葉がかえって危ない。)
仏教が人にもたらすのは、癒しよりも、圧倒的に救いである。この本のように自身の救いを問題にしない場所から仏教をどれだけ調査して語っても知識的な一時の癒しにしかならない。それでは意味がないのだ。
つまり、この本は、カルチャセンタ的に表層的な知識にとらわれ、仏教が何を目的にしているのかを見誤った地点に立ち、知識的欲求から仏教を理解し尽くすことが可能だと勘違いしている典型的な野狐禅の書、と言える。
「縁なき衆生」は一人でやれば良いのに、本を書いて仲間を作ろうとしているのがいただけない。竹内靖雄『〈脱〉宗教のすすめ』(PHP新書、2000年)なみにひどい。どこがどう事実と違うのか指摘するのも徒労と思える。往生と成仏をまったく理解していない・理解する気もない著者が仏教を語ることなど不可能である。それでも知識欲を刺激する作りになっているから、仏教をよく知らない読者の中には引きずられて間違ってしまう人も出るだろう。そうなると、その人の往生・成仏も叶わない。
こんな悪書が世に出たのは、われわれ「お坊さん」が現状を憂えつつも、抜本的な対策を講じることができず、仏教を説いていないからである。仏教に対する誤解と無理解がここまで進んでしまったのは誰のせいか。われわれ「お坊さん」は、今まさに猛省を促されている。
そういう意味ではたしかにお坊さんが困る本ではあるが、この本は仏教の話ではない。
紙の本
在家の視点から見た仏教に対する素朴な疑問
2007/04/17 10:19
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:イム十一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「戒名はなぜ必要なのか?」を切り口として、仏教のルーツ・思想を辿りながら著者なりの答えを読者に提示している本です。
在家側からするとお坊さんに対してやや訊きづらいこと・ごまかされてしまいそうなことを、こんがらがった糸をひとつひとつ解いていくように丁寧に教えてくれています。
お坊さんを困らせる必要はありませんが、葬式や法事の際に、「なぜこういう戒名なんだろう?」と思われた在家の方はご一読してみてはいかがかと思います。またお坊さん側も、もし在家の方から戒名についての質問があった際に、ひとつの知識としてこの本を読んでおけば、より幅広い答え方ができるのではないか、と思います。
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奈良時代 人物習合 平安時代 本地垂迹説 神は仏が日本で神の姿を借りて現れたもの
学問仏教 三輪宗、法相宗、成実宗、倶舎宗、律宗、華厳宗
平安時代 天台宗(最澄)、真言宗(空海)
鎌倉新仏教 浄土宗(法然)、浄土真宗(親鸞)、時宗(一遍)、臨済宗(栄西)、曹洞宗(道元)、日蓮宗(日蓮)
鑑真 日本に戒の正式の行法を伝えた
現在の主流の13宗派
奈良仏教 法相宗、律宗、華厳宗
密教 真言宗
密教と法華経 天台宗
浄土宗 浄土宗、浄土真宗、融通念仏宗、時宗
禅宗 臨済宗、曹洞宗、黄檗宗
法華経 日蓮宗
仏様の序列
如来(釈迦如来、薬師如来)、菩薩、明王(不動明王、愛染明王)、天(帝釈天、弁財天)
3世紀 大乗仏教 ナーガルジュナ、竜樹 この世のすべては、互いに関連しあって成り立ち、一つとして永久に不変なものはない。それが私の法(ダルマ)の基本だ 一切は空なのだ
大正時代 大正新脩大藏經 お経の総合目録 3527
往生 私たちが死ぬ場合
成仏 菩薩が修行の末に悟りに達する境地
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[ 内容 ]
釈迦仏教は葬儀と無関係。
大乗仏教は釈迦仏教にあらず。
各種の儀礼は道教と儒教からの拝借。
お経は葬儀用に書かれたものではない。
中国で創作されたお経も少なくない。
往生と成仏は異なる。
死後戒名は江戸幕府の押し付け。
永代供養は「永代」ではない。
仏教界にも「勝ち組」と「負け組」がある。
…お寺やお坊さんにとって都合の悪い話にも遠慮なく触れ、仏教の基本と歴史をわかりやすく解説する。
[ 目次 ]
第1章 人は死んでどうなるの(そもそも「戒」とは 従来の死生観が通用しなくなってきた ほか)
第2章 仏教がやって来た(祖霊まします我が山河 宗教心の源にあるもの ほか)
第3章 大乗仏教は釈迦仏教にあらず(「悟り」から「慈悲」へ 仏教と葬儀は無関係だった ほか)
第4章 あの世という世界(浄土教と西方浄土 往生と成仏はどう違うのか ほか)
第5章 葬式仏教に徹すべし(江戸幕府の寺請制度 戒名はこうして作る ほか)
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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一般目線で書かれた仏教入門書とお寺との付き合い方などのあれこれ。
非常に文章が読みやすく、著者がしっかりと勉強して理解したことを
親切に書いているのがわかる。
お寺の現状、戒名の是非、仏陀の仏教と大乗仏教の違いなどは、
知識がなくてもひととおりのことがわかるだろう。
ただ1点。この本は誰に向けたのだろうか。
・仏教のことを知りたい一般人
・戒名のことを知りたい人
・これからを担う仏教関係者
本の中では、この3者に向けてのメッセージが混在しているため、
読者のなかには「こんなこと言われても…」と
戸惑いを感じる人もいるかもしれない(余計なお世話か)。
ともあれ、自分は興味深く読めた。
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最近は仏教ブームということで、まじめに仏教に取り組む大衆向けの本がたくさん出版されているが、もとを辿れば、この本がベストセラーになったことから大きな流れが始まっていると思う。この本は、一言でいえば葬式仏教を批判する本なんだけど、その批判の論拠は、断片的な事象をただ並べているだけで、仏教思想史に対する深い洞察に基づいて書かれた形跡が感じられないので、内容はちょっと危なっかしい。というか、わざと下世話な感じの本に仕上げているフシがあり、哲学的に深入りしないのも作戦のうちかな。まあ、大衆の共感を得るにはもってこいのセンセーショナルな内容であることには間違いない。
日本独自の葬式仏教を支える「死ねば煩悩も消えてなくなるから、たちまち仏になれる」という理屈を考えたのは誰なんだろ?(こういう直接的な思考回路は個人的には大好き)
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葬式や仏教のしきたりで何となく行っていること、お坊さんには聞きづらいことが飄々と書いてあり、読んでいて心地いい。しかし、簡単にだけでなく、各宗派での捉え方や、仏教の基本原理も触れているので初心者でなくても、読み応えはある。
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五木寛之さんと立松和平さんとの対談集『親鸞と道元』を読んで「拈華微笑」が中国の偽経だと初めて知りました。(http://booklog.jp/users/tukubai/archives/4396613806)
今、私が知っている仏教の教えの何が中国で足されたものなのか知りたくて、“大乗仏教は釈迦仏教にあらず”と銘打ったこの本を手にとりました。望んだものはあまり収穫できませんでしたが、「戒名料」が如何におかしなことであるかがよく理解できました。「戒」の基本的な「不殺生・不偸盗・不邪淫・不妄語・不飲酒」のすべてを守っていない僧侶が果たして死者に対して「戒名」を授ける資格があるのか、そこまで考えさせられます。
釈迦の教えに中国の僧は何を足したのか それはまた別の本で学ぶとします。
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評価:★☆☆☆☆(1/5)
タイトルの「お坊さんが困る」というのは、戒名について詳しく云々するということのようだ。果たして本当に困るのかかどうかはハテネだ。
舞台裏を曝露・・・というほど曝露できていない気がする。
本書のほとんどは、原始仏教と現代の仏教のあり方を、時代考証や仏教史を利用して、比較している。つまり、本来の仏教はこうなんだよ、という内容。
本書のいるところで時代があっちへ流れこっちへ流れで読みにくかった。
また、【はじめに】では『現代の日本仏教は「霊はある」という立場をとっていますが、仏教を始められた教祖のお釈迦さまは、そんなものがあるはずはないと真っ向から否定されているのです。』とあるが、あまりにざっくり書かれすぎているような気がする。他には『「空」とは、簡単にいえば、数字におけるゼロを意味します。』というのも。
全般的にはざっくりとしすぎている印象があったけども、所々のエピソードでは勉強になるところがいくつもあった。
入門書として、良いのか悪いのかよくわからない本だった。
著者の肩書きは「仏教研究家」とあるが、所々疑問に思うところがあったので、他の本と併せて読んだ方が良さそうだと感じた。
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【目次】
第1章 人は死んでどうなるの
・そもそも「戒」とは
・従来の死生観が通用しなくなってきた
・現世以外の世界はあるのか
第2章 仏教がやって来た
・祖霊まします我が山河
・宗教心の源にあるもの
・鑑真はなぜ来日したのか
第3章 大乗仏教は釈迦仏教にあらず
・「悟り」から「慈悲」へ
・仏教と葬儀は無関係だった
・お経を書いたのは誰?
第4章 あの世という世界
・浄土教と西方浄土
・往生と成仏はどう違うのか
・お経に霊力はあるのか?
第5章 葬式仏教に徹すべし
・江戸幕府の寺請制度
・戒名はこうして作る
・位牌とお墓について
・私の提案
あとがき
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戒名に焦点を当てて、歴史を振り返っている。仏教の大まかな流れに触れることができ、仏教の理解の一助になると感じた。
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きっとそんなことだろうと想像しておりましたが、かように詳説いただきますと得心できます。
目からウロコのご高説でございました。
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釈迦の教えを学んだ人ならば誰もが、今の日本の仏教のあり方との整合性について素朴な疑問を持つ訳であるが、そこのところを、仏教史もおさえながら、簡潔かつ丁寧に説明してくれている。その際、「戒名」「葬儀」「成仏」といった事柄に焦点をあてて語ることで、常に今の仏教への問いに立ち返ることができるような説明になっている。こうした本は、ありそうでなかなかなかったように思う。また、最終節「私の提案」で、これからの日本の仏教のあり方として、「人々によかったと言われる葬式仏教に徹すべくハラを括ること」をお坊さんに求めているが、これがそれまでの説明を背景として語られることで、説得力をもって響いてくる。それだけに残念なのがタイトル。この方が多くの人の手にとってもらえるとの判断なのだろうが、かえって下世話な内容と誤解され、こうした本を本当に必要とする人との出会いを妨げていはしないかと感じた。
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日本の仏教って釈迦仏教はおろか中国発祥の大乗仏教としても同じくくりに入れちゃいけないぐらい独特で変ですよ、とひたすら皮肉る本。
お布施の額で戒名の良さが変わるとか、もう滑稽すぎて目も当てられないし、今のようにツッコミどころが多いままだと日本のお坊さんに未来は無いと警告する。
仏教伝来以降、なぜこれほどまでに日本の仏教が独自の進化をしてきたのかざっくりと理解できた。全体的にざっくりとし過ぎていてちょっと危なかっしい気もした。
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一口に仏教と言っても諸宗あるわけで、本書は正に仏教の解体新書入門編といったところ。
本書では、あの世はあるのか、戒名って何であるの、葬式っていつから始まったのか、お経の意味はなどなど、いつの間にやら習慣だからとしか知らない人々にも非常に分かりやすく解説されている。
元来、仏教は釈迦が始めたものである。
釈迦仏教から大乗小乗仏教なるものがある。
カトリックからプロテスタント、ピューリタンみたいなものね。
で、釈迦仏教にはあの世って考えはなく、現世での解脱が目的だったが、釈迦の死後、弟子達がいい具合に解釈して、教義なりを作っていったわけだ。
で、今現在読まれているお経も、本来お釈迦さんが言葉にしたものを弟子達が都合よく解釈し、さらにそれを中国の僧が、割と冗談めいた内容も含め加筆されたものが、日本へ渡来する、と。
現在の仏教葬式なんてのも、そこまで歴史は古くなく、江戸期の徳川幕府の切支丹弾圧の為、寺請制度を作り、強制的に、婚姻その他諸々で必要になる、今でいう戸籍謄本みたいなものを、全国民、寺で管理させたわけだ。
マイナンバーみたいなもんだな。
と、まぁ、非常に興味深く読ませて頂きました。
これを読むと、友人知人や何方かのご自宅に伺った際に仏壇でもあると、この人、この宗派のんだ、なんてのが、分かりますね。
しっかし、戒、そして戒名ってのは本来の意義は最早ないな。
仏教から葬式を引いたら何も残りゃしない。という一文が、正に現代の日本仏教界を如実に表しているね。
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なかなか難しい。仏教を理解するのはまだまだ先だなぁ。「成仏」=「死ぬこと」ではないということがわかった。あと、キリスト教とかイスラム教の本も読んでみたくなった。