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アレクサンドリア四重奏 2 バルタザール みんなのレビュー

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みんなのレビュー6件

みんなの評価4.6

評価内訳

  • 星 5 (4件)
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紙の本

魅力的な人妻ジュスティーヌを崇める青年の愛の賛歌に、老獪で不穏な響きが重ねられる四部作の第2巻。千夜一夜物語のようなエピソードに幻惑されて……。

2007/08/19 20:47

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 若き日の一所懸命の恋愛は、お互いまだ体から良い匂いが立ち昇るし、経験の浅さも手伝って相手を生涯最高の人として尊重し、デートやアニバーサリーのたびごとにマメに手をかける集中力もある。演出に精いっぱいの手間をかけ、甘やかな陶酔に身を任せ「最高」を極めようとするとき、恋愛は大輪の花を咲かす。そして、生きることの、いや、生まれてきたことの意義を提供してくれるのだ。
 アレクサンドリアのあだ花、もとい社交界の華でエキセントリックなユダヤ女性ジュスティーヌと恋仲になった貧乏教師「ぼく」の回顧に始まるアレクサンドリア四重奏の第1巻『ジュスティーヌ』は、彼の青竹のように生硬な音出しが特徴的であった。運命や生、恋愛に向かう青年の姿勢が生硬なのである。その彼が描き出す都市アレクサンドリアとその申し子の女性の物語は、馥郁たる言葉のトリルやメロディーラインで美しい蜃気楼を現出してみせるのであった。
 魅力的な人妻への思いを遂げたことで、若者は文学の霊感を得た。堰を切ったようにあふれ出す言葉や表現の魔術的力に押し流され、彼は自由な都市とイメージが交錯するジュスティーヌの開放的気風を崇める。
 四重奏というからには、四者の音が雑音なく響き合うはず。悩ましい青年の、硬いながらも夢まぼろしを描き切ろうという音に、どういう音がまず重なるのか。それが楽しみで、読み始める。だが、「ぼく」にとっては何とも扱いにくい音が降ってきて、どう合わせたらよいものかと持て余す感じなのである。
 自分とは血のつながりのない幼子を連れ、アレクサンドリアに疲れた身をいやしに島に来た青年のところに、あやかしのように現れたバルタザールは、ジュスティーヌの精神的支えである友人だった。神秘思想に造詣深く、男色趣味にして性病医。教師上がりの小説家「ぼく」に比べれば、いかにも海千山千の人物だ。
 青年が最愛の人の名を冠して書いた体験の手記に、老獪な医師はご丁寧な行間解説や但し書きを入れて持参する。「極上の女に目をかけられたからといって、調子こいているんじゃない。彼女が本当に愛していたのは別の人物だ。お前にはその事実も含めて何にも見えちゃあ、いないのだ」的なお節介な解説を提供してくれる。したがって、「ぼく」に至福と悲痛をもたらしたアレクサンドリアの日々が、第1巻とは違って、時に裏焼きのようにして語られ、ジュスティーヌと彼女を取り巻く人びとの過去、その過去が人物に加える奥行きが、各人の相貌を新たなものにしてしまう。なるほど。音は重なれば、明るい主旋律に不穏な響き、伸びやかな広がりを見せるのだ。老獪なバルタザールの出す音は、とりあえずのコンサートマスター「ぼく」の第1バイオリンに対して、トリッキーな第2バイオリンか、ドスの利いたコントラバスか、あるいは?
 今後、音がどう重なることでアレクサンドリアという社交場の位相がどう変わるかが期待される。いま一つ気にかかるのは、四重奏というからには「音合わせ」があるわけで、それが一体何かということ。少なくとも、本巻までならどうとでも読み取れる。先に書いた「開放的気風」もそうだし、「揺らぎ移ろい行くものに身を任せる快楽」やら、「愛に裏切られる痛みの受容」やら何やら……。
 4巻の中での本書の位置づけに戸惑うので中途半端な小説だが、それにしてもここに挿入されるエピソードの文学的絢爛ぶりはどうか。ジュスティーヌの夫でアレクサンドリア経済大立者ネッシムの帰省場面が非常に強く脳裏に焼き付けられる。わずか1ページに書かれたネッシムの母の娘時代の栄光と家庭生活と酷い不幸、そしてベドウィンのキャンプを目指すネッシムと弟の砂漠横断の旅の躍動感。この40ページ程度を繰り返し読むだけで、数冊の小説を読むほどの感情の波が押し寄せる。それだけで、「20世紀文学の傑作」の片鱗に触れた気にさせられるのであった。

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紙の本

第一部の裏側の物語

2019/07/18 05:57

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:une femme - この投稿者のレビュー一覧を見る

第 一部において描かれた時間を、主人公が別の視点から見直して、描いているのだが、第一部では、美しさやロマンスの雰囲気を醸し出していた物語の、いわば、裏側を垣間見るようである。
アレクサンドリアという都市が、ヨーロッパ化された、中途半端さを持ち、また、ジュスティーヌの策略のような罠を、主人公は、知ることになる。それでも尚、ジュスティーヌが、この土地が生み出した独特の女神のように描かれているのが、面白い。
また、最終部で、時間や記憶について、芸術作品と作家の現実的な生活についての言及が、登場人物らの意見や引用を用いて、主人公の探求として、曖昧に記されるところにも、巧みさがあると思う。
人生の、もっとも濃密な時間を、振り返り眺め描くことでらこのような幾重にも重なる物語となることに、興味深さと、力強さのような魅力を感じる。
最終的に、記憶とは、過去とは、芸術とは、芸術家の生とはというところに、辿り着くのだが、それらの問題に対する答えのなさが、この小説の面白く、素晴らしいところだと思った。

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2013/03/07 22:53

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2016/08/16 22:05

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2018/11/05 06:50

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2019/01/26 20:59

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