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このシリーズの23「アジア・太平洋戦争」が鮮明な問題意識の上に書かれていたので、本書「満州事変から日中全面戦争へ」も「日本はなぜ中国を侵略したのか、その論理はなにか」という問題に答えてくれるものかと思っていたが、そうした点は通り一遍の記述しかなかった。文章も勢いが感じられず、途中でやめようと思ったほどだ。もちろん本書に特色がないわけではない。著者は国際法が専門らしく、日本が中国に侵略していく過程での国際法上の問題は細かく記述している。日本の侵略を容認する他の諸国の動きもわかる。また、当時は9カ国条約というものがあって、そこで国際紛争が議論されるが、いつも会議に出る出ないと言ってだだをこねている日本はまるで今の北朝鮮。思わず笑ってしまった。日本の重慶への無差別爆撃の記述が詳しいのも本書の特色であろうし、ぼくがこの本を手にとって買おうと思ったのもその場面の写真が目に入ったからだ。そこを読むと、日本がアメリカの日本空襲に対して文句を言えない原因はここにあるのかと思ってしまう。日本も同じようなことをしていたのだ。軍隊の中でのようす、兵士の戦死の連絡法といった「兵士の視点」からの細かな記述もあるが、それが逆に全体として散漫な印象を残してしまう。