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東条英機は太平洋戦争を回避したかった。
そんな今まで教えられてきたこととは正反対の話から始まり、どうして開戦になってしまったのか、世論などとは別の“空気”が官僚制を支配したことが述べられている。同じことが道路改革でもおきていたと、その当事者自身が語る。
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山本七平『空気の研究』を援用しながら、太平洋戦争直前に設立された総力戦研究所や、理工系学生の戦争観を記述している。某大学での講義を書籍化したもの。
「必敗」と分かっていながら、日本は空気に流されて対米戦争に突入した。その過程を丁寧に追っている本書は、「KY」という言葉が流行する今、読んでおくべきであろう。なお、猪瀬氏の著作『昭和十六年夏の敗戦』は総力戦研究所を描いた作品であるので、併せて読むとよい。
ちなみに、「空気を読む」という言葉自体は戦前期から存在したようで、先日長野の地方名士の日記(昭和初期)を読んでいて「彼ハ空気ノ読メヌ奴・・・」というフレーズを目にした。
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けっきょく、戦争の原因は石油なのだと。
日本が戦争を始めたのも石油が無かったからだと。
後、何となく、雰囲気で始めたみたい。統帥権を持った人たちが陶酔して。
こんどは、全世界で石油が無くなるようです。
ピークオイルというもので。
陶酔してる場合やないなぁ。
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予想したほど面白くはなかったが、負けるとわかっている戦争に向かっていった「組織」に、その方向性を決定付ける有無を言わせぬ「空気」があったことを実証主義的に叙述しており、意義は大きいと思う。
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太平洋戦争開戦前の昭和16年、軍部が「総力戦研究所」を立ち上げ、戦争の成否についてシミュレーションし、戦争は持ち堪えられないとの結論を得ていたのに、当時の空気と捏造した数字と神頼みで戦争に突き進んでいく哀れな日本の姿が、現在の日本とも重なって見えます。
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近衛首相も東條陸相も、「大政治家というものは、正しいと自分で判断した場合、国民などを黙らせてもその方向へ引っ張っていく」という強いリーダシップは発揮しなかった。
数字をごまかすと国は滅びると、僕は信じて疑わない。官僚機構は、虚実を匠に使い分けると、知っている。局所的な実に拘泥しながらついに全体を見ない、全体が虚であっても責任を取らないのである。
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技術者という自分の役割の中で自分にできることは何かを「事実」にもとづいて、論理とデータで考えて行くことだ。そうやって社会で働いていれば自然と「空気」とは無縁の「オンリーワン」になれる。
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満州での利権に拘るあまりに、アメリカより石油の禁輸制裁を食らったために、インドネシアへの南進を諮ることとなった日本。完了より石油備蓄の試算の説明を受けた後に決断を請われて、東条は「泥棒せというのか」と怒鳴ったという。東条英機は当初は開戦論者であったが、昭和天皇より開戦の回避を指示される。天皇の忠臣であった東条は、なんとかこれを模索するが自らが作った流れは変える事が出来ず開戦と至った。正直以外な事実であった。いったん作られた流れが止められずに破壊的な結末に至るのは、もう日本人の民族的な特性といっても仕方がないであろう。しかし、あの時代から学ぶことなく同じ事を繰り返すのであれば、太平洋戦争で死んでいった先人はうかばれない。経済が疲弊していくなか、自らを変えられない日本人。結局、市場による暴力的な調整によって再度の敗戦を迎えなかれば変わる事はできないのであろうか?
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[ 内容 ]
太平洋戦争という日本の針路決定の陰に、二十代、三十代の若者達の戦いがあった!
東京工業大学の学生に向けた、目からウロコの名講義を再現。
「時代に流されずに生きるとは」を熱く説く。
[ 目次 ]
はじめに(戦前も「アメリカ」は流行だった;「右の左翼」の謀略史観)
第1章 東條英機に怒鳴られた二十六歳の高橋中尉(人造石油とバイオマス;少佐と中尉はどちらが偉いのか ほか)
第2章 三十代の模擬内閣のシミュレーション(『昭和16年夏の敗戦』;にわかづくりの総力戦研究所 ほか)
第3章 数字が勝手に歩きだす(口外してはならぬ;「虎穴に入らずんば虎児を得ずだね」 ほか)
第4章 霞が関との戦い(戦前と戦後をつらぬく官僚主権;歴史は繰り返す ほか)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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他著書とのダブりも多い点を除けば満足の一冊。東工大での講義記録という性質上いた仕方なし。
東条英機に関する記載は、知らない人が多いだろうと思われる。
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著者の東工大での講義録。
第二次世界大戦の原因の一つは石油禁輸網であるが、その石油をめぐって当時の若手エンジニアなどの精鋭があつめられ総力戦研究所で開戦シミュレーションを提出、必敗という結果が。しかし数字が独り歩きして、戦争ができる、という方向にまがってしまいあの悲惨な結果になったという話があるらしい。
その話をもとに、技術者は空気社会日本の中でどう処していくか?という内容。
組織には猛烈な同調圧力がある。「同調圧力に屈しないためには自分探しなどというヤワなものにとらわれずに、技術者という自分の役割のなかで自分にできることは何かという事実にもとづいて、論理とデータでかんがえていくことだ(188)
組織の中の個人が組織の空気、システムに妨害されて力を発揮できないでいるとしたら、僕の役割は明らかだ。官僚的な日常性と逆の立場から、組織や時代の空気に流されずに生きろ!と励ますことだろ。(192)
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東工大での講義「日本の近代」が書籍化されたもの。内容は「昭和16年夏の敗戦」とかぶるところが大きいのでお買い得感がないのだがw、現代の学生向きに時代背景が補足されている。さらに重要なのは『本書のテーマは、戦前と戦後はむしろ連続してますよ、という視点で、これからの日本のあり方を考える』(P.10)点で価値がある。『実質的に日本を動かしていたのは官僚機構であり、天皇主権でも主権在民でもない官僚主権がつづいているという意味では戦前も戦後も連続しているといえる。』(P.11)
その連続性を考える上でのキーワードが「空気」となっている。空気に流されると、数字が一人歩きを始める。
『数字を誤魔化すと国が滅びる、と僕は信じて疑わない。官僚機構は、虚実を巧みに使い分ける、と知っている。局所的な「実」に拘泥しながらついに全体を見ない、全体が「虚」であっても責任を取らないのである。』(P.170)
いろいろ身につまされる言葉である。
山本七平の『「空気」の研究』もあわせて読みたい。
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ABCD包囲網のDはオランダ領インドネシア、インドとマレー半島はBのイギリス領。昭和16年8月1日にアメリカは対日石油禁輸措置を発令したが、実質的には6月21日に石油製品輸出許可制が完全実施されて以来一滴の石油も入手できなくなっていた。
筆者の前書『日本人はなぜ戦争をしたのか 昭和16年夏の敗戦』の内容。昭和16年4月近衛内閣が総力戦研究所を作った。官僚、学者、軍人、マスコミのエリート36名が集められ、もし日米が戦えばどのような結果となるかを研究させた。8月には結果がでた。初戦は勝つであろうが、やがて国力、物量の差が明らかになって、最終的にはソビエトの参戦という形でこの戦争は必ず負けると、近衛内閣閣僚の前で発表した。東條陸軍大臣は、机上の空論であるとしてこの研究の成果は決して口外しないようにと命ずる。
東條内閣の企画院総裁として、開戦直前の御前会議で燃料の供給消費予想を報告した鈴木貞一は、「僕は腹の中ではアメリカと戦争をやって勝てるとは想っていなかった」述懐するが、問題があるとわかっていながら、そのデータを出さざるを得いムードがあったという。空気である。
山本七平の『空気の研究』も紹介されている。また戦前と現在は様々な点でつながっているということも筆者は繰り返し主張している。
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結論ありきで数値を作る。複雑な状況下で判断下す必要があり、その作業が困難を伴うことは理解する。しかるに、
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読んだのは2回目。
「南進、南進と騒いではいても、実際にそれでは石油を取りにいくにはどうするか、という調査なり計画なりは昭和15年まではなにひとつなかった。実際に私たちがそれに取り組み始めたのは買い付け騒ぎが一段落した昭和16年2月か3月だった。」というのは、作中に引用された高橋中尉(当時)の回顧である。
電力に関して騒いでる今とほとんど同じではないか。歴史は繰り返すと言うがまさにその通りである。
危機に対する立ち向かい方は、戦争直前の時期と驚くほど共通点がある。こうした性質をもはや変えられないものと考え、どうにか補正するような制度設計ができないものか(制度を作る側がこれだから、かなり難しいことだとは思う)。
とても読みやすい本である。震災後、特に原発問題に関する雰囲気がなんだかおかしいと思う人にとっては、おそらく腑に落ちる内容だと思う。