紙の本
刺激的すぎる二人の女性作家
2020/11/27 22:58
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
以前からフランス現代文学にとっての重要な二人であるマルグリット・デュラスとフランソワーズ・サガン両氏の作品は読みたいと思っていた、河出書房新社の池澤夏樹の全集でこの二人の作品が同時に読めることがわかり初挑戦。デュラスの「愛人」はかなり昔に映画化された記憶があるが未見、フランス人の女の子が金持ちの中国人の愛人になるというあらすじだけは知っていたのだが、読んでみた衝撃は想像以上だった、そしてこれを書いたのが70才の時だったということもやはり衝撃的だった。サガンの「悲しみよ こんにちは」が店頭に並んだ時、世の母親たちはどう思っただろうか、時代は1954年、世界大戦が終わってから僅か10年しかたっていない、それも19才の女の子が語る愛のないセックスのお話、どちらの作品も刺激が強すぎる
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瑞々しい青春の物語?いえいえ、いかにもヨーロッパ作品らしい悪徳に満ちた殺人のお話。しかも反省ゼロ。これまたフランス人らしいといえば、らしい。
2008/08/30 15:53
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ああ、申し訳ありません。本当はデュラスの「太平洋の防波堤」「愛人ラマン」についても書きたかったのですが、読みきれませんでした、っていうか読み通す自信、喪失。いえ、面白くないわけじゃないんです。「太平洋の防波堤」、100頁まで読みました。貧しい家の兄・妹と彼女に惹かれる金持ちの醜男、っていう構図、そして身分差に苛立つ兄っていうの、それなりに面白いんです。
でも、このまま読みつづけても年内に読み終わる自信が全然ありません。それに、池澤夏樹個人編集のこの全集、実は以前出たケアルック『オン・ザ・ロード』も同じ理由で途中リタイア。でも好きなんですよ、ブックデザイン。この厚さで角背の全集というのは、もしかして例がないのではないか、そんなことを思うし、カバーの色も好き。
黄緑というか鶯色に近い色ですが、ちょっと艶やかさがあります。そこに小さく金文字で英語タイトルと邦題と著者名、訳者名を小さく配する品のよさ。思わず長女が「可愛い」と声をあげるほど。そんな装幀は KAWADE DESIGN WORKS 。帯の装画は新田恵。この帯担当に関してはケアルックの時が藤原新也ですから、かなり力をいれてます、はい。
でも、申し訳ありません、収められている三篇のうちサガン『悲しみよ こんにちは』しか読めませんでした。っていうか読むのを絞りました。で、今回は『悲しみよ こんにちは』についてだけ書きます。実は、私、サガンを読むの、今回が初めてです。世代的にはサガン世代といってもおかしくないのですが、読まずに来ていました。
気にはしていたんです。『悲しみよ』もですが『ブラームスはお好き』だって、なんど新潮文庫に手を出そうとしたことか。でも私に残ったのは躊躇い傷ばかり。それならクイーン、クリスティ、マクリーン、グリーン、ル・カレと手が逆方向に伸びてしまう。そんなこんなでウン十年、やっと手にしたサガンなんです。
でも、私が思っていたのとあまりに違う内容に愕然としてしまいました。だって、私はてっきり爽やか系の楽しいお話だとばかり思っていたのですから。出版当時の反響は、巻末の朝吹 登水子の解説に譲るとして、このお話、日本人には素直に受け容れられないものじゃないか、なんて思うんです。これなら桐野夏生が描く女子高生や主婦の殺人、或は殺された東電OLの話ほうが理解しやすい。
第一、さほど金持ちでもなさそうな40歳の父と17歳の娘が仕事も勉強もそっちのけで女蕩しと男遊びにふける、というのが分からない。いや、今なら分かりますがこの本が最初に出た1954年に簡単に理解されたとは思えないんです。ただし、欧米の現在を考えれば、そういう生き方があることは分かります。
特にフランス人の仕事そっちのけでセックスにふけり、妊娠したら国が責任を持って育てる。そういう仕組みを国が認めた背景には、男女のあり方に関する長い歴史があるわけです。だからヨーロッパでは、ある意味、快哉をもって迎えられたというのも分かる。でも、未だに日本では少子化が社会問題視されても未婚の母や代理出産に対する理解は進んでいません。良くも悪くも、日本にはそういう歴史がある。
仕事そっちのけで異性を追いかけているのが生活、みたいな父娘にとって倫理や命の尊さなんて意味をもちません。邪魔者は死ねばいい。そういうセシルの考え方、行動を訳者の朝水はさも分かったように書きますが、あんた、ほんとにそう思う?って言いたくなります。とはいえ1917年生まれの朝水は2005年に亡くなっているので、空騒ぎですけど・・・
でも、サガンの文学の正当性をいうのに「サルトルに愛された」ことをあげるのはいかがなものか。それならサルトルの威光が地に落ちた今、サガンの文学も泥にまみれるのが当たり前。私にいわせれば、あのサルトルに愛された、っていうことは、それだけの作家じゃない、と言いたくもなります。ただし、この作品に含まれる毒は生半可ではありません。愛すべきとは思いませんがスキャンダラスな存在であることは確かです。
最後に、簡単に登場人物紹介。
セシル:二年前まで修道院にいた17歳の少女。主人公で、ともかく勉強するくらいなら誤魔化して男とセックスするのが好き。嘘をつくのも平気なら、人を陥れるのも全く平気。ある意味、悪漢小説の主人公といったほうが分かりやすい。なんども二年前に寄宿舎を出た、とあるのに、468頁には「三年前に寄宿舎を出たとき」という記述がある。正直、こんなミスが出版から50年近く野放しにされてきたとも思えないので、何かの間違い?
父:40歳で、15年来鰥夫(やもめ)、六ヶ月おきに女を替えるそうで、いい女であれば声をかけるし、飽きれば分かれる、それが人生、といったフランス映画によくいるタイプの男。仕事をしている場面はありません。
エルザ:情人(アマン)。赤毛の半商売人で29歳。性格描写皆無。
シリル:セシルのセックスフレンド。法科の学生、25歳。
アンヌ・ラルセン:死んだ母の友人で、42歳。二年前、寄宿舎を出たセシルに趣味の良い服装とか暮らし方、恋の手ほどきなどを教えてくれた魅力のある洗練された女性。遊びや無駄事で日を送るセシルや父親を軽蔑している、とセシルは思う。
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ブ厚いけどどれも面白かった!
2018/11/21 18:30
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投稿者:ROVA - この投稿者のレビュー一覧を見る
ラマンだけは映画を観たことがあったので大体のストーリーは把握していました。
3作ともに共通するのは毒(義)母ですね。
毒母と闘う娘。どうしても共感してしまいます。
デュラス作品の方の母親は毒母ではあるものの、辛い過去を背負っており
それを知っているせいか、やってることは酷い割に心底憎むことが出来ません。
逆にサガンの『悲しみよこんにちは』のアンヌはまームカつくこと!
デュラス作の母親と比べると酷いことなんて何もしてないのに何故かムカつく!
セシルを全力で応援してしまいました。(シリルの役目はちょっと可哀想だったけど)
予想外の結末に驚きつつも「ざまあみろ!」と思ってしまいました。
と言ってもそう思ったのは私であって、セシルは相当なショックを受けています。
ここでセシルが私のように(笑)喜んでたりしたら作品の印象は悪くなっていたでしょう。
とは言え本作は結構読者の感想が分かれるようで
アンヌの方に同情する人も結構いるようです。
私はアンヌの歳によほど近いですから、年齢的なものではないのでしょうね。
何となくですが、人生においてどの価値観に重きを置いているか、で
評価が分かれるのかな?と思いました。
最後の解説もとても面白かったです。
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Duras『太平洋の防波堤』を読みたくなった。
彼女自身の植民地・居留地における体験に基づいている。
インドシナ半島の払い下げ地を抱えて散財していくフランス人一家にとって、
蓄音機と車が唯一の故郷を思い起こす品として物語の伏線になっている。
・・・
とりわけ、世界文学全集シリーズ(池上夏樹氏監修)について述べると、
装丁のビビッドカラーが目を引く点であるが、
3作まとめた分の厚みによって、物理的に読みにくいことが残念な点でもある。
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「悲しみよ こんにちは」
最初の文頭6行、これが一番魅力的なセンテンスだった。
17歳の狂気、として読まれてしまってはもったいない。
必要最低限の登場人物で、ある家族のひと夏の出来事をこんなにも奥まで描ききるなんて。
この作者の他の作品はまだ読んだ事はないけれども、
この作品のインパクトが強すぎて、素直に読めないんじゃないかとも思ったり。
生きていくということは、自分の奥底にある欲望と向き合っていくことなのだと思った。
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[ 内容 ]
「太平洋の防波堤/愛人ラマン」―18歳でわたしは年老いた…仏領インドシナのけだるい風土で暮らす、貧しいフランス人入植者の家族を主人公に描かれる2つの物語。
美しい娘と彼女に焦がれる裕福な男。
『太平洋の防波堤』で執拗に描かれた恋愛未満の性の駆け引きが、『愛人ラマン』では「流れゆくエクリチュール」とともに性愛の高みへと変奏されていく。
デュラスの2つの代表作。
「悲しみよこんにちは」―その夏、私は17だった。
そして私はまったく幸福だった…17歳の少女セシルは、父の愛人と自分の恋人を使って父の再婚相手を破滅へ追いやる。
南仏の海岸を舞台に、少女の好奇心、独占欲、完璧なものへの反発、愛と孤独が描かれる衝撃のデビュー作。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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河出書房から、世界文学全集が刊行されています。
全30巻だったかな。
読書家というより、本の収集家であるボクは、もちろん全部集める予定なのだけど、ようやく4巻です。
なにぶん、一冊の値段が3000円近いという高価な本なので、集めるのに時間がかかります。
しかも、どれもこれもまさに文学然とした文学作品ばかりだし、なかなか分厚いので読むのにも時間がかかります。
全部集まるのはいつの日になるんでしょうねぇ。
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『太平洋の防波堤』
『愛人/ラマン』
デュラスの作品の中で重要な位置を占める作品。
しかし私はデュラスにはあまり馴染めなかった。
特に『愛人 ラマン』は難解でした。
『悲しみよこんにちは』
これが当時18歳の著者が書いた処女作とは思えないほど文章は美しく内容も面白い。
登場人物ひとりひとりの表情や心理といった描き方も丁寧で素晴しい。
芸術に秀でたフランスという国が生んだ才能であろうか。
文章の量も適度ですから一読をおすすめします。
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デュラスの「太平洋の防波堤」「愛人 ラマン」は、どちらも作者が仏領インドシナで過ごした若き日の体験を元に書かれた作品。どちらの作品も、使い物にならない土地に縛られた仏印での貧しい生活とそこから逃げ出したいという欲求が背景にあるが、前者では出口の見えない暮らしの閉塞感がせっぱつまった雰囲気でひしひしと感じられるのに対し、仏印での日々=青春の日々として回想している晩年の作品である後者では、貧しさも、金持ちの男を“愛人”に持つことも、全てが熱帯の湿気にぼんやり覆われたメランコリックな情景として描かれている印象。前者は閉塞していてもエネルギッシュであり、後者は赤裸々であっても物憂く優美。“現実”がどう“思い出”に変わるか、という変化を味わえる二作かもしれない。
サガンの「悲しみよ こんにちは」は、18歳の少女にしか書けないような鋭く繊細な感情と、18歳の少女が書いたということに驚きを禁じ得ない美しい文章の、どちらもがインパクト大。ものすごくティーンズらしい内容なのに、瑞々しい少女の感性に溢れつつも感傷に耽溺していない醒めた距離感の文章のおかげで、“ありがち”な印象は全く残らない。大作というほどのボリュームはないが、作品全体の輝きが強烈に胸に残る一作。
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デュラスの『太平洋の防波堤』『愛人 ラマン』と、サガンの『悲しみよ こんにちは』が入ってるなら、このイケザワ全集を買うべし、と思いました(これらの手元の本はかなり黄ばんでるし)。個人的には帯を外して「きみどり色一色の本体」を愛でることをおすすめします。サガンは、朝吹登水子訳だし。全集最大のお楽しみ、月報が入っていること!!この黄緑色の単行本を境目にして、サガンとデュラスの著書を並べてみる、ってのはどうでしょう。昔の、新潮文庫サガンの数々、処分できずにとってあるんですよ。鮮やかなピンクの背表紙が褪せたから、自分でカヴァーを作って同じピンクでタイトルを印字して。あそこに並べるのもいいぞ、それとも別な場所を空けようかな。デュラスのいくつかの作品を読み返して、「女の酒の飲み方」について考えました。さまになるなぁ、かっこいいな(実際にはどうなのかなぁ)。そういうお酒、飲みたい(退廃的に)。今のところの計画(いつになるかな)、新潮文庫のサガンをずらりと並べる(そこには朝吹登水子の自伝的小説も)、境目にこのイケザワ本を一冊、そしてデュラスの本を。私には経験ないけど、強そうで理性を朦朧とさせて官能に溺れたくなる酒の代表(勝手なイメージ)『アブサン』(クリストフ・バタイユ)もこのへんに置いてみよう!!
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サガンはじつは読むのは初めてだったが、結構面白い。女性の微妙なアンビバレントの心理を巧みに表現している。父親と今までの生活を奪う継母に対する憎しみと、それでも女性としては尊敬と愛情を感じる継母。そして最後の・・・。これを18歳で書いたというのがすごい。
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好きなアーティストGARNET CROWのazuki七さんが、影響を受けたサガンやデュラス。大学の図書館にはちょうどセットのこれがあったのでちょうど良かった。
最初の二作品はデュラス自身の実体験に基づいて書かれているが、どうにもならない重苦しい境遇と東南アジアの暑苦しさがなんとも言えない悲しみを作り出している。
サガンの方は、最初と最後のフレーズにしびれた。azuki七さんも歌詞にしたとおり、思わず波の音が聞こえてきそうな感じ。
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大分前に、談話室で薦めてもらった本。
今回は、サガンの方しか読んでいませんが。
皆さんのレビューを拝見すると、アンヌかセシルどちらかに共感するみたいですね。
私はやはりセシルと歳も近いこともあって、セシルの考え方とかすごく分かります。
セシルの考え方は残酷だという人もいるみたいですが、私には「え?普通じゃない?」って感じ。
またアンヌと同じくらいの年齢になったら、セシルへの感じかたも違うのかな?
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デュラス作の『愛人ラマン』の映画を見た。
映画館でやってたころに見たので20年位前に見て以来だ。
主人公と同じくらいの年齢だったころ見るのと、年を重ねてから見るのとでは受ける印象が全く違う。
高校生のころは主人公とチョロンの男との恋愛の映画だと思っていたが
フランス人でありながら植民地のベトナムで貧困と崩壊している家族関係の中にいる少女、そして、大金持ちではあるけれど華僑の社会やしきたりの中で生きてゆくしかない男のやるせなさが描かれた社会派の映画に見えた。少女はチョロンの男の中にある富に魅かれ、男は少女の中にあるフランスに魅かれた。
原作が読んでみたくなった。
『太平洋の防波堤』は、デュラスの家族についてよく分かる作品だ。
映画ではアヘン中毒の長男を溺愛し。
主人公を虐待し、チョロンの男の前ではご馳走になっておいてレストランで居眠りを始めるようなぶっ壊れた母親だったが、フランスから移住したものの、夫に先立たれ
全財産をなげうって役人から塩害で農作物も作ることができない土地を買い絶望する母。
そこにさらに借金をして、防波堤を築き、それもまた無残に流されてしまう。
不幸の上に不幸が重なりぶっ壊れても仕方なかったのかもしれない。
『愛人ラマン』
主人公の帰国によって、チョロンの男と別れることになる。
帰国の船中で自分はチョロンの男を愛していたことに気づく。
それから数十年経って男から電話がある。
「以前と同じように自分はまだあなたを愛している。
あなたを愛することをやめるなんて決して自分にはできないだろう、死ぬまであなたを愛するだろう。」
恋愛が終わってから気づくことも多いね。
気づいていても思うように行動できないこともある。
でも、一生思い続けられる誰かがいるって素敵なことかもしれない。
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収録順ではなく以前より読みたいと思いつつなかなか読めなかった順に読み進めてみた。
フランスの女性作家、十代の女の子が主役という共通点はあるものの、サガンの描く女の子は奔放で、デュラスは王子様願望のある内省的な女の子、といったイメージを持った。
【悲しみよこんにちは 2015/02/28読了】
サガンの処女作となるこの作品は、青春の鬱屈した気持ちが表現されていた。もう少し若い頃に読んでいれば、セシルの気持ちにより添えたかもしれない。
だが今はアンヌの言い分もわかり、私は板挟み状態。
【愛人 ラマン 2015/03/04読了】
デュラスの自伝的作品。ジャンジャック・アノーにより映画化された作品で、当時かなり話題になったのを覚えている。平たく言ってしまうと、女子高生が援助交際をする話。
細い糸でつながっている二人の関係が切なかった。
【太平洋の防波堤 2015/03/12読了】
被害を防ごうと防波堤を造ったもののあっけなく壊れてしまう。もう一度、防波堤を築こうとする母親を支えようとする息子ジョセフと娘シュザンヌ。
家族の物語であると同時に、子供たちの成長を描いている。
この作品を読み終えたのは、奇しくも東日本大震災から4年後の翌日だった。読んでいて、スーパー堤防を思い出してしまった。