紙の本
なんていうか、こういう暴力的な武士って嫌いなんです。読んでいて不快感ばかり募って。もっとさわやかな武士がいてもいいのにねえ、これじゃあ戦前の軍人か憲兵みたいじゃありませんか
2008/12/19 20:18
5人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
記憶があいまいなまま、読み始めたせいか、いつまでたっても「読んだ」気がしてなりません。でも、こういう展開に覚えはない。ただ、主人公というか、脇役というか、北定町廻り同心、木暮信次郎の不快としかいえないヤクザな言動にだけは、もしかして?なんて思いながら読了。ともかく信次郎に対するムカツキだけは変わらず。
で、自分の書評メモを検索してみたんですが、最初はスルー。何も引っかかりません。とりあえず書評を書き始めるためにWebで、出版社のHPを訪問。そこにはこの本に関して
「生きるという、ただそれだけのことが何故にこうも不自由なのかと、思うことがございます」
江戸の町で、女郎が次々と殺されていく。誰が、何のために?
切れ者ゆえに世にいらだつ若き同心・信次郎は、被害者の一人が挿していた簪(かんざし)が、元暗殺者の小間物問屋主人・清之介の店『遠野屋』で売られていたことを知る。
因縁ある二人が交差したとき、市井の人々が各々隠し抱えていた過去が徐々に明かされていく。
生き抜く哀しさを、人は歓びに変えることが出来るのか?
『弥勒の月』から一年半。
深まる謎。生きる狂おしさと生きる者への慈しみ。胸を裂く物語。
とあります。そこで『弥勒の月』で自分のメモを探してみると、今回は引っかかりました。読んだのは『弥勒の月』だったんですね。でも、それほどに似ている。要するに、『夜叉桜』は続編で、しかも完結していません。ヤクザな同心という造形に自信をもったあさのは、このままずるずるとシリーズ化をする気配です。
ということで、あくまでそういう連作の中の一編として紹介すれば、この話はHPの案内にある連続女郎殺人事件に、小間物問屋『遠野屋』の主人・清之介がどう絡むのか、ほとんど見込み捜査としかいいようのない、戦前の特高並みの暴力的な高圧的な姿勢で自分の気に入らない男に因縁をつける信次郎がいつ殺されるのかを楽しみに読むお話です。
ちなみに、このヤクザ・信次郎は今回も殺されません。いつか、無残に殺されて欲しいものですが、殺されるのは幼馴染・信三に出会って心ときめかせる女郎のおいとです。信三は小間物問屋『遠野屋』で手代をしています。ま、文句をつけるわけじゃありませんが、清之介、信三、信次郎、もうちっと変化をつけた名前はないのか、なんて思います。
これ以上登場人物紹介をしないのは、そこにこのお話のポイントがあるからで、結構、ミステリとして上手い落とし方をしています。そうきたか、と思わせる。ただし、せっかくの技も木暮信次郎の悪辣ぶりに、ほとんど目立ちません。もったいないなあ、と思います。シリーズでなく、全く別の主人公を据えたらもっと評判になったんじゃないでしょうか。
そういう意味では、前作同様、主人を見守る岡引の伊佐治が効いています。本所尾上町で小料理屋をやっている伊佐治は20歳の時、信次郎の父、木暮右衛門から手札を貰い、それから二十年以上を尾上町の親分として活躍しています。今回は、その息子も登場するので、シリーズ化の駄目押しみたいなものです。
シリーズ化が決まっているので、注文ですが、もう少し北町奉行内部のことを書いてもらえないでしょうか。官僚機構について薀蓄を傾ける必要はありませんが、木暮の動きがどうも公務という印象が薄い。
最後に構成ですが、前作と同じ八章+終章で、タイトルは以下のとおり。
第一章 刃
第二章 陰
第三章 定
第四章 男
第五章 緑
第六章 命
第七章 女
第八章 秘
終 章 真
カバー写真にリーブラ+DAJを使った多田和博の装幀は、なんていうか演歌の世界。ここまでやられたら好きも嫌いもないじゃない、なんて思います。最後に初出関連ですが、奥付には
「小説宝石」2006年10月~07年6月号掲載作品を加筆修正したものです。
とあります。てにをはが変だぞ・・・
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『弥勒の月』に続く話。明らかに前作の設定を踏まえているので、いきなりこちらを読むのはおすすめしません。遠野屋と同心、その手下の岡っ引と、若干の関係性が変化してくるのが読みどころかと。物語の緊張感という点では、前作の方が上だとは思いますが、一冊で見たときの着地点としてはこちらの方がきれいかな。私がこの人の本を手にとるのは、硬質な文章が好きだから。もはや日常ではまずお目にかかることのない、硝子のように硬い響きをもつ言葉の数々。これのためだけにでも、私はこのシリーズを買い続けると思います。この物語はまだ続くようなので、次回作も楽しみです。
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・『弥勒の月』続編にあたる。前作をほとんど忘れてしまっているがなんですが、面白かったです。緊張感がすごい。・木暮の旦那は相変わらずですね(笑)主役なのになんてあくの強い…今ひとつ嫌いになれないところが、特徴なんでしょうか。遠野屋さんの兄のこととか、気になるのですが。また続編が出てくれるでしょうか。
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小暮の旦那の捻くれたキャラがいい。
遠野屋が実兄に頼まれたことは結局どうなったんだろう? 次作に続くということなのだろうか??
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話の流れ自体は面白かった。少しずつほぐれていく感じ。
しかし、人間の闇とか、おもしろさとか、生きることについてとか、主要人物にそれぞれ言わせ、尚且つ何度も言わせているのでくどく感じた。
あと、人物についても「この人物はすごい」と幾度も書いてあるし、そのすごいと言われた人物の内面も書かれているのだけどそれも案外普通の人なので、あんまりインパクトを感じなかった。
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2007.11.13。弥勒の続編です。遠野屋の兄が変わっちゃってて悲しかった。遠野屋には幸せになってほしい。しかし、このシリーズはどうも人の死に方が好きじゃありません。先が予想できちゃうとことか、文章の呼吸が私とうまく合わない。続きそうな雰囲気がありますが、読むか微妙。
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この方の小説といえば、「バッテリー」なんでしょうなぁ。…読んでません、まだw
何冊もある小説は読みきれるか不安になってしまうのでなかなか手に取らないです。
そのイメージが強すぎて、すっかり児童小説作家だと思っていました(苦笑)
私が苦手な時代物。ちょっと抵抗があったものの評判も上々でしたし
先日読んだ「吉原手引草」の自信を思い込みで倍増させて読み始めました。
とにかく、勉学ではない意味で「頭のよい」、でも立場の違う3人の絡むいわば推理物。
おぉ、苦手要素がもう一個増えている・・・と警戒したのもつかの間
描写のおもしろさに手伝ってもらってけっこうすばやくいっき読みしました。
この小説のキーワードは「機微」なんでしょう。いいですねー、こういうの。
人を書いているってかんじがびしびし伝わってきます。おもしろかったです。
そうかー。最近のミステリー系は文明の利器が絡んだりしててめんどくさいけど
それこそ江戸の町の事件を岡っ引きが解決するタイプなら読めるのかもしれないな。
我ながらちょっとした発見でした。
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弥勒の月の続巻。
何かと繋がってくる1人+2人。
内容的にはそれほど哲学などと違い難しくはないので事件の真相が気になりさきへさきへと読み込んでしまった。
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シリーズの続編だということを途中で気づきました。しかし、それでも十分面白かった。主要な登場人物(信次郎・清之介・伊佐治)それぞれの生き方、視点がしっかり描かれています。
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「弥勒の月」の続編のようです。
弥勒と夜叉は正反対の存在です。
こちらの作品の方が怖かったです。
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人は何かを背負って生きている。
それでも人は生きている。
過去を背負いつつ自分を変えた者、
過去に飲まれて夜叉になる者。
また、その人間模様を楽しむ者もいる。
私は何を背負って生きているのか。
これから何を背負うことになるのか。
私は何になるのか。何を求めて、何のために生きて行くのか。
そんなことを考えさせてくれる小説でした。
「弱えほうが、ようござんすよ」
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信次郎と清之介の関係性にどきどきしました。お互いにすごくこだわっていて、意識して執着し合ってる感じがもう…!正直に云うと腐的に萌えます、はい(爆)…でも純粋に見ても、非常に興味深い。お互いについてどう感じるのかなぁ、と思うのです。
これを読む際、前作の「弥勒の月」も再読したんですが、なんだか前読んだ時よりかなり面白く感じました!なんでだろ…バイオリズムの問題かなぁ(笑)
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あさのあつこの本を読むのは、初めて。バッテリイを読みたいと思ったがまだ読んでない。時代劇は、苦手だが表紙の絵が、目をひいて手にした。小暮信次郎、伊佐治、東野家の魅力が面白く、第2段に続くのかな?
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へぇ!あさのあつこが時代物?!って思ってこの5月に買って来た。
けどさぁ…、なんか変。
会話がなんだか時代考証がメチャクチャな気がしてしかたない。
しっくり来ない。
どうして池波正太郎並にとは言わないけれど、じゃぁ、どうして宮部みゆきの時代物には物語にすんなり入っていけるんだろうなぁ。
話し口調が気になるので、そこがポイントなんじゃぁないだろうか。
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異質なものには昔から敏感だった。人でも声でも風景でも、周りとずれるもの、同調しないものに否応なく反応してしまう。
弥勒の月の続編、遠野屋の話。
恐い話じゃないのに、ぞくりとするのが何故か妙に心地よい。時代物ではあるけど、あさのさんらしさが其処此処にある。