紙の本
正直、今回の直木賞の本命だったと思っていたんです。無論、桜庭に関しては当たりましたけど、佐々木もあっていいだろうって。もし問題があるとすれば犯人が当たり前すぎること。でも読み応えあります
2008/02/14 20:26
8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
個人的には、今回の直木賞候補の二番手だと思っていたんです。ま、筆頭は桜庭一樹で、これについては予想があたりました。『私の男』を読んでもいないのに、受賞予想をした、っていうのは乱暴、っちゃあ乱暴なんですが、これはなにより桜庭にある勢いを評価したものでした。
で、『警官の血』、私が何処を評価したか、です。まず、長い。読書人としては、この長さが堪らない。それと、長さを感じさせない文章。これは一概に長所とは言えませんが、読みやすいっていうのは悪くない。私はこの上下本を二日で読み終わりましたが、これが高村薫作品だったら、多分倍以上、それどころか一ヶ月はかかったと思います。
にも係わらず、重厚な印象です。これは高村にもいえますが時代の描き方が丁寧で、詳細まで書かれているわけでもないのにそれがよく伝わって来ます。あからさまに書かれてはいなくても、時代を熟知している、調べこんでいるからできることでしょう。佐々木の年齢が大きく影響していることは言うまでもありません。
それと、三代にわたる話のバランスがよくて、何部の出来がいい、ということもありません。時代と人をともに描いていく、という点では桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』も、そういう世代を越えて存在する家、というか一族の歴史を魅力的に描いていましたが、年代記の壺をおさえた作品だといえるでしょう。
ただし、弱い点がないわけではありません。まず、ユーモアがない。話の運びにゆとりがない。いえ雄大ではあります。でも、これにユーモアのセンスが少しでもあったら、もっと大きな話になったはずです。結果論になりますが、最近の桜庭の小説が持つスケールの大きさには及びません。
それと推理小説であろうとしたことの限界が感じられること。桜庭の小説は、出版社の戦略的な考えで、意図的にミステリに分類されていますが、果たしてご当人にその意識がどれだけあることか。また、彼女の話の受け手が、ミステリとして読んでいるか。少なくとも女性読者は一般小説として読んでいるし、だから楽しいんだと思います。それが強みです。
だって、『警官の血』を最後まで読んでみてください。そりゃないだろ、っていう犯人です。それだけはやめてよね、っていう最悪のものです。少なくとも、ミステリとしてルールを守っているからいい、っていうもんじゃあない。やっぱりサプライズが必要なんで、それもいい意味での驚きが求められるはず。こんな安直な解決?っていうのはサプライズではありません。
でも、面白い。何故か、それはこの小説をミステリとして読まないからです。年代記として、時代小説として読む。以前、山田風太郎が「明治時代も時代小説として扱えるときが来た」みたいなことを言ってたくさんの明治ものの傑作を書きましたが、もしかすると戦後、昭和30年代くらいまでも時代小説扱いできるんじゃないか、そんな気がします。
年代記特有の重み、それが行き着くと高村薫の『新リア王』や加賀乙彦の『岐路』などに繋がっていくし、変化をつければ桜庭の『赤朽葉』になる。私はどの話も好きですが、あえて順番をつければ、トップが『岐路』、次が『新リア王』と『赤朽葉』が並んで、『警官の血』が最後になるわけですが、高いレベルで無理矢理つけたランキング、気にせず読んでみてください。
ああ、昭和30年て、平成元年の頃ってこういう時代だったんだというのがよく分ります。
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警官親子三代にわたる壮大なスケールで物語は進むんです。昭和の空気なんかも、まるでそこにいるかのように感じられます。臨場感たっぷり。ドキドキも満タン。
下巻がめちゃくちゃ気になります!!
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祖父-父-子と三代続く警官の物語。上巻は起承転結の「起」で終わっているような気がします。冗長と言ってもいいくらい長いんじゃないかなぁ。
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親子三代にわたる警官の物語を、それぞれの信念を縦糸に、激動の時代背景を横糸にして、控えめな力強さで見事に描ききっている。警官を志したスタート地点から、組織の中で葛藤とジレンマに苦悩しながらも、己の警官としての人生を必死に生きようとするプロセスは、リアリティがあって実に読み応えがあった。謎をどう扱うのか、危惧しながら読んでいる部分もあったが、結果的には理想的な場所に着地出来たように思う。残念に感じたのは、筆致の淡白さ。キャラに共感しようにも、作中の浅い部分での描写では、読み手の内側にはなかなか入ってこない。がしかし、作者の作品に対する視点には好感が持てたので、あと何冊かリピートしようとは思っている。
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面白かったです。上下一気に読みました。戦後から現代に渡り親子三代警官になった一族の物語です。全ての世代の展開が面白かった。誰もが警官になろうとするその志は清廉であったのでしょう。祖父の代の戦後の混乱期の日本と、息子の代の激しい学生運動の時代と。そして現代の警視庁内の汚職という問題と。全ての時代に読み応えがありました。もともと祖父の代の時代背景に興味があって手に取ったのだが、これがすごく面白かったし、息子の代は筆者自身に思い入れが強いのか、かなり緻密に書かれていて、一番興味がなさそうな展開だと思っていたのが、なんだか旦那がえらく共感を持っていろいろ説明してくれたのでがその時代をリアルタイムに過ごしていないのが残念なくらいで、セクト内でスパイ活動をするぎりぎりの恐怖とか読み応えがありました。息子の代が、まさに今の私と同世代。人の営みが戦後の混乱からこうして流れて続いているのだ、ということが妙に実感させられた。息子が今後どのように暗躍していくのか、気になるところだが祖父の死の謎解きと共にこの小説が終わる形で好ましい思う。
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上下2巻ですが、すっと入り込んで一気に読めました。さすがは佐々木譲。文体にゆるぎないし、ストーリー展開も巧いです。親子3代に渡る警視庁警察官の話しなのですが、戦後から現代までの世相を絡めたストーリーが巧みで、しかもそこに祖父の死、父親の死という謎解きを絡めて非常に面白かったです。話が唐突に飛んでたりする感じがあるかもしれませんが、全てがラストへの伏線になっていたりするので気をつけるべしです。非常に面白かったが、これが今年のこのミス国内編の1位だったんですかね?1位は高すぎるかなと思いますが、佐々木譲はここ数年非常にレベルの高い作品を書いているので、合わせ技1本という感じですかね。けど、普通におススメ。
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理想の駐在所巡査であった父が突然の不審死。長男が志を継ぎ警察官となるが道は厳しい。ところで、次男はどうなったのだろうか。
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ミステリー嫌いなのですが、大賞とかを受けている作品だと聞いたので手に取る。祖父、父、孫と家族三代で警視庁勤務という家系のそれぞれの物語。その長い年月の中に時効を超えて根付く1本の事件の真相。世代間の隔たりが、うまく物語を3つに分けてくれて飽きずに読めた気がします。【続】
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親子三代の警官のお話。
上巻は戦後史みたいな感じ。
でも、読みやすいと思います。
ちょっと個人的に身近に感じてしまいます。
なんか、共感してしまう部分がたまにあります。
会社の先輩に借りて読んだ本。
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2008/4
三代にわたる警察官の物語。上巻の書きだしはなんと谷中の五重塔が燃え落ちる瞬間。内容にもどんどん引き込まれるが、土地勘のある場所なので余計に臨場感を強く感じる。
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非常に面白い。淡々としたトーンで物語は進行していくが、読んできて飽きることもなく、世界に引き込まれていく。サラサラっと流れていくところに物足りなさを感じることもあるかもしれないが、あくまで清二、民雄の章は序章として描かれているのだ、と思うようにしている。なので上巻はこれでOKで、様々な伏線がどう展開されるのかを含めて下巻に期待。
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上下の「上巻」
3代にわたって、警官になり、1代目「清二」の追っていた事件、「清二」の死の謎を追う。
と言うのが、上巻の件。
2代目息子「民雄」は意思とは違う、公安の潜入捜査官となり、精神的に病んでしまう。
上巻は「清二」・「民雄」の視点が書かれている。
ただ、世代背景が多く書かれているが、個人的に「民雄の頃の学生運動」の所は、
知らないので、読むのに少し苦労した。
それでも、めちゃめちゃ、面白い。
「清二」も「民雄」の所も省略的な所が無く、どう言う警察人生を送っていたのかが、
丁寧に、それでいて、簡潔に少し謎を残して書かれているので、
下巻が気になります。
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地味なお話なんですが、三世代に渡ってという所が面白い。昔の警察のあり方ということも学べたように思います。
犯人はすぐわかっちゃうので推理小説ではないです。展開も結構読める。
けど戦後史をよく知らないあたしにとってとても勉強になりました。
仕事への情熱がかっこいい。
三世代目の最後はなかなか好きな感じの人になってましたが、二世代目の人はもうちょっと報われて欲しかったなぁ…。
それと私は刺激に飢えてるのでもっとハラハラドキドキした本がすきなのでこれはちょっと自分と趣味が合わないかな。
警察小説なら横山秀夫さんが一番好きです。
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これは大河ドラマですね。今度TVになるそうな。
去年のこのミス1位だったのにここまで読んでこなくてすみません。
警察モノは横山さんのでちょっと・・・でしたが、これはぐいぐいと引き込まれました。
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言わずとしれた佐々木譲の大作です。
いろんなところで書評が出ていますが、確かに警察小説と言うより、警察の歴史小説を読んでいる感じでした。
ただ読者を引き込ませる文章はさすが!
5,600ページある上下巻を、1日かからずに読んでしまいました。
中盤がかなり盛り上がった分、ラストが・・・消化不良です・・・