投稿元:
レビューを見る
2009年NHK大河ドラマは、上杉景勝を支えた名家老・直江兼続が主人公の『天地人』。坂口安吾に「骨の髄まで戦争狂」と評されたこの直江さん、山城国を支配したわけではないのに、「山城守」と呼ばれている。さらに彼は朝廷(豊臣秀吉)から正式に任官される前に、景勝の指図で既に「山城守」と名乗っている。
官職の名前と職務が乖離しているのも不思議なら、朝廷の承認もなく、官職を勝手に与えたり名乗ったりしてしまうというのも不思議じゃありません?
朝廷は無力とはいえ存在しているのに。
とにかく分からないことが多い日本中世史。私にとっては、ちょっと敬遠する分野になっていたりする。
そんな私でも、興味深く読ませていただいたのが、この本。著者は苗字のごとく?東大の先生。
中世史の大枠として主流的な見解となっている西の黒田俊雄学説(権門体制論)に、東の嫡流として徹頭徹尾、挑戦している。
そして、荒削りにも見えながら、とにかく野心的。ザイン/ゾルレンやらツリー/リゾームなんて、中世史の本にまず登場しない単語だろう。学問とは抽象化、というのはこういうこと。厳密に重箱の隅をつついておればいいというものではないのだ。
歴史学(若者の歴史離れ)に対する危機感が、著者を駆り立てているのがよく分かる。
キーワードは自立して、自律する「王権」。
何で上杉景勝が、直江兼続を「山城守」にしたか。それは景勝が「王さま」だったから、ということになるか。抽象化しすぎか?
投稿元:
レビューを見る
新書でありながら、日本の中世について、的確に腑分けしています。
黒田俊雄の権門体制、佐藤進一の東国国家論、五味史彦の二権王権論をよく精査しています。
さすが、石井進、五味文彦門下です。
この人のユニークさもまた、好きなんだなあ。
投稿元:
レビューを見る
[ 内容 ]
日本語教師にとって一番の問題は何か。
それは西洋語と日本語の根本的な発想・世界観の違いがどの文法書にも記述されていないことだ。
日本語の学校文法は西洋語、特に英文法を下敷きにしているからである。
本書はそれと反対の方向で「日本語に即した、借り物でない文法」を提唱する。
[ 目次 ]
第1章 日本語と英語の発想の違い
第2章 日本語と英語の「主語」
第3章 日本語と英語の空間/人間
第4章 「ある」日本語と「する」英語
第5章 日本語と英語の受身/使役
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
投稿元:
レビューを見る
本郷さんの書籍はダイナミックな話が多い。この書籍も例にもれず、中世史における朝廷・幕府の研究史の説明をしつつ、自説を随所にちりばめ説明している。彼の書籍は研究書に馴れている人には読みやすいだろう(逆にいえば一般には向かない)と思う。彼の所説は検討の価値はあろうが理解しやすく、学校の授業などにもテーマ学習として取り上げやすいだろう。
投稿元:
レビューを見る
これは思った以上にまとまった本だ。とくに中世史を王権の確立、そこから日本という国のまとまりが出てくるまで、ダイナミックに描いている。妙な制度や役職を覚えたり、現代人の勝手な妄想で出来上がった人物史とは一味もふた味も違う。
投稿元:
レビューを見る
やや文章がカタいと感じた。日経の連載とか、最近の著者の文章になじんでいると、読みづらいなぁと思いつつ進める。書いてある内容は、とても興味深かった。天皇、武士、幕府。日本の統治体制はどうして、こういう変遷をたどったのか。宗教も含めて、古文書の文献を交えつつ、丁寧に教えてくれる。新鮮に感じて面白かった。本郷氏の本は、まだそれほど読んでいないので、最近の本はもう少しこなれた文章、手慣れた進みでこういう話をわかりやすく解説してくれるのかな、なんて期待してしまうね。
投稿元:
レビューを見る
葛西三郎清重という源頼朝に仕え平泉征服後「奥州惣奉行」に任じられた者がまだ二十歳頃の治承四年、その現の東京葛飾区の住居に戦帰りの源頼朝が一宿し、歓待したうちに一人の美女がはべこり「近所に住まうものです、今宵のお相手に‥」と勧めた。吾妻鏡/実は彼の妻だったが一夜で懐妊した場合、識者に意見を求めると一致して「我が子以上に愛育し男子であれば兄がいても家を継がせただろう」という。