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近代的世界像の抜本的な再検討とそれに代わるべき新しい世界観の構築が哲学の課題となってすでに久しい。本書はそれに応えるべく著された、近代的な世界了解の地平の、全面的な超克を目指した壮大な哲学的営為といえよう。まず、カント、マッハ、フッサール、ハイデッガーの哲学的核心部分を鋭く抉り出し、新しい世界観のための構図と枠組を示す。さらに近代科学的自然像がいかなる変貌を遂げてきたかを追認しつつ、相対性理論、量子力学の提起した認識論的=存在論的な問題次元を対自化し、「物的世界像から事的世界観」への推転を基礎づけた廣松哲学の代表的著作。
――2009/12/04
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廣松渉哲学の重要著書らしいが、実はこの本は本題「事的世界観」のあくまでも「前哨」なので、本論の前に準備工作をいろいろやっているような感じだった。
とりわけカント、マッハ、フッサール、ハイデッガーや相対性理論、量子力学を批判的に検討してゆく前半は、著者が最終的にどこを目指しているのかわからないと、当惑する。
後半なかなかおもしろくなってくるのだけれども、やはりこれは「主著」とは言えないだろう。なんとなく、著者の論点へのピントがなかなか合わない感じだった。
同じちくま学芸文庫の『もの・こと・ことば』の方が、廣松渉の「事的世界観」を端的に呈示していてわかりやすかった。
しかし廣松渉哲学の本題をしっかり読むなら、やはり自ら「主著」と称する「存在と意味」全2巻(全3巻予定の途中で絶筆)を読まねばなるまい。・・・岩波ハードカバーで1冊6千円弱だけど・・・。
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第1部 近代哲学の世界了解と陥穽(カントと先験的認識論の遺構;マッハの現相主義と意味形象;フッサールと意味的志向の本諦)
第2部 物的世界像の問題論的構制(物体的自然像の構制要件;物理学的存在概念の変貌;現代物理と物象性の存立)
第3部 時間・歴史・人間への視角(時間論のためのメモランダ;歴史法則論の問題論的構制;人間論へのプロレゴーメナ)
著者:廣松渉(1933-1994、柳川市、哲学者)
解説:野家啓一(1949-、仙台市、哲学)