紙の本
自由と進歩の関係を解き明かす本書は、知的好奇心を掻き立てくれます!
2017/11/20 10:03
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ノーベル賞に輝いた思想家ハイエクの自由の概念について徹底的に検討した渾身の書です。「自由とは何か」から始まり、西洋社会における「自由」の思想の変遷を俯瞰しながら、自由と進歩との関係を考察していきます。少し難しいですが、読者の知的好奇心を掻き立てくれることは間違いなしです。
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第3部「福祉国家における自由」の
第21章「貨幣制度」の
第4節「インフレーションと福祉国家」と
第6節「貨幣政策の目標」
が、おもしろかった。
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自由の条件の第3巻。国家や政府と自由との対立軸がはっきりと現れる社会保障や税、教育について書かれており、参考になることが多かった。
「自由にとっての最大の危険は、熱心で悪意はないが分別のない人々による狡猾な侵害のうちに潜んでいる(ブランディーズ)」p3
「(社会主義が信頼を失った理由)1つ目は生産の社会主義的組織が私企業よりも生産的でないどころか、はるかに劣るという認識が進んだこと。2つ目はより大きな社会的正義に導くと考えられていたものをもたらすどころか、社会主義的組織は新しい専断と以前よりもまぬがれがたい階層秩序を意味するという認識が一段と明白になったこと、3つ目は約束されたより大きな自由の代わりに、新たな独裁政治を意味するであろうという実感である」p5
「(自由社会を保持する原則)全員に等しく適用できる一般的、抽象的な規則の実施をのぞいて、いっさいの強制を厳格に防止すること」p44
「インフレーションは避けがたい自然災害では決してない。それはかならず貨幣政策を引き受けている人々の弱さや無知の結果である」p58
「老齢者全員に対して最低限度ばかりではなく、ある「適当な」給付を保障しようとするとき、問題はたちまち深刻な様相を呈する。第一には、その保護が払い込みを通じて保護の請求権を得た者ばかりでなく、まだ払い込みをする時間を持たなかった者にも与えられるということ、第二には、年金が満期に達するとき、それはその目的のために蓄積された追加資本を生み出したもの、すなわち受益者の努力に帰する追加所得から支給されるのではなくて、現に生産に従事している人々の労働の果実の一部分の移転にほかならないということである」p59
「制度全体が政治の一手段、つまり票漁りをする煽動的政治家にとってのやりとりの球になってしまう経過は容易にわかる」p59
「インフレーションによって荒廃していない豊かな社会では、退職者の大部分はなお現に働いている人より快適に暮らせるのが正常であるということを意味している」
「(愚かな要求)実際に援助を必要とする人に劣等感を抱かせないために、すべての者が必要とかかわりなく援助を受けるべきだというのである。その結果として、必要を感じる者を助けると同時に、彼らが得るものは努力もしくはメリットの成果であると感じさせるような状況がつくられたのである」p69
「(年金制度)この制度のもとでは、各世代がその先行世代の必要とする支払いによって、後続世代の援助に対して同様の請求権を持つのである。このような制度は一度取り入れられてしまうと、永久に存続し続けねばならないか、あるいは完全に崩壊にまかされることになるかのどちらかであろう」p70
「我々は、インフレーション、課税、労働組合、ますます増大する政府支配の教育、そして広大な恣意的権力を持つ社会事業官僚制から、危険が襲ってくるとき、将来それとの闘いにおいて事態をいっそう悪化させるかもしれない」p71
「通貨を下落させることほど、社会の現存の基盤をくつがえすうえで、巧妙で、確実な方法はない。その過程は経済法則のかくれたすべての力を破壊の側に引き入れていく。そしてそれは百万人のうちの��れひとりとして診断のすることのできない方法で進行する」p97
「都市生活に伴う費用とある種の快適さはともに非常に高くつくので、人並みの生活を可能にする最低所得は田舎におけるよりもはるかに高い」p118
「農業からの自発的移動は、農業所得が都市の職業における所得とくらべて減少する場合のみ引き起こされるであろう」p142
「(ジョン・スチュワート・ミル「自由論」)本書に展開されているいかなる議論も直接的に合致する偉大にして主要な原則は、人間がもっとも豊かな多様性において発展することが絶対的かつ本質的に重要だということである」p189