紙の本
定年になったから小説でも書こう、っていう発想はやめて、定年後の楽しみの一つとして文章を書く、そのくらいのスタンスでいれば自費出版専門業者にだまされることもないと思います。さすが清水、安易な出版の勧めはしていません
2008/03/24 20:24
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜか安っぽい、という印象の装幀です。特に背のデザイン、これは最低の部類でしょ。よく、この手のビジネス書を見ますが、知恵がありません。棚に並んだ時見える部分に情報を詰め込もうとする、結果として文字だらけ。サブタイトルを省くだけでどんなにすっきりすることか。だって、カバーの正面は、それなりにいいんですよ。そんなカバーデザインは、森裕昌。
書き下ろし作品で、ターゲットというのはおかしいけれど想定される読者は、定年を迎えた団塊の世代です。仕事から離れて、一つ小説でも書いてみようか、と思っている人はかなりいます。つい先日も、自費出版大手の会社が潰れたようですが、それほどに需要は多い。ただし、ビジネスになるのは出版社サイドだけであって、書き手にお金が入るということは殆ど稀なようです。
清水もそこらの認識ははっきりしていて、職業的な小説家になることについては、その難しさを繰り返し書いています。そういう意味ではむしろ「小説家になる方法」ではなくて「文筆を楽しむ方法 僕はいかにして小説家となったか」のほうが内容にあっているでしょう。プロへの道は厳しいんです。
清水は今までにも何冊か文章読本を書いています。『はじめてわかる国語』『大人のための文章教室』『わが子に教える作文教室』『スラスラ書ける!ビジネス文書』、他にもあるかもしれませんが私が読んだのは、今回の本を入れて五冊。確かに、小説について書いたのは初めてかもしれませんが、半村良との関係や、ともかく一篇、100頁以上のものを書き上げる、というのは今あげた本にも出ています。
ただし、半村先生との師弟関係がここまで書かれたのは初めてかも知れません。文壇が確固としていた時代への、ある意味オマージュのような部分もあります。でも感心するのは、清水の粘り強さです。認められなくても、せっせと小説を書く。中途半端に書き散らしたのではなく、きちっと書き上げる。しかも、それを何年にも渡って。
この本で清水があげているソノラマ文庫の作品、もう紙が変色していますが我が家に五冊くらいあります。読んだ記憶も、うっすらあります。でも宇宙の暗黒物を書いていた作家が、パスティーシュという予想外の手法で登場したときは、なにより「SFじゃないの?」と驚いたものです。その方向転換も鮮やかでしたが、その後もベストセラーこそないものの、毎年確実に作品を書きつづける、やっぱり偉いです。
正直、60歳を過ぎた団塊の世代に、これだけの粘りがあるか、疑問ではあります。でも、サラリーマンを30年以上やってきたら、文章だって書きなれているはず、というのは正しいでしょう。でも、小説を読んでいる人がどれだけいるか。読むのはスポーツ新聞と日経、そしてビジネス書という老人では、「作者は読者のなれの果て」という条件を満たさないことだけは確かです。
ま、あまり聞いたことの無い出版社からの自費出版の勧めには乗らずに、PCで出力した原稿を自分で製本したり、有名ではなくとも自分の趣味とあった投稿サイトを見つけて参加したり、手頃な文学賞に応募してみる、そうして文章を書くこと自体を楽しむのがベスト、とは当然の結論です。
以下は目次のコピペ
はじめに
第一部 いかにして私は小説家になったのか
第一章 読者であることから始まる
■作者は読者のなれの果て
■小説をろくに読んだこともない人は、この先読まなくていい
■どんなバカな理由でも、小説を読むことはためになる など
第二章 そして自然に書き始める
■すべての学習は「模倣」から始まる
■他人に読まれたいという願望が大切
■教師にはならないと自分に言い聞かせた「理由」 など
第三章 うまく書くためのトレーニング
■ワープロでも横組みでも、自分の好きなやり方で
■たくさん書くこと、最後まで書きあげること
■「新人賞」への応募をお勧めする など
第四章 修業時代はまだ続く
■とりあえずの上京と、半村良先生
■望みを持ち続けられる人が、なれる人
■落選続きの新人賞と「カスリの清水くん」 など
第五章 ついに自分の書きたいものを見つける
■書きたい小説がわからない
■書きながら、自分でゲラゲラ笑う
■書きたいことを見極めるには、まず自分を知れ など
第二部 小説のノウハウについての私見
A・書くための方策
1 人生体験について
2 取材と資料について
3 アイデアについて
4 キャラクターについて
5 記述について
6 リアリティーについて
7 書き出しについて
8 クライマックスについて
9 終わり方について
10 描写について
B・小説家になる具体策
1 新人賞に応募する
2 同人雑誌に参加する
3 原稿を送りつける
4 力ある人の紹介を受ける
5 自費出版する
6 作家の弟子になる
7 ブログ、携帯サイトに発表する
C・小説家の日々の暮らし
1 生活時間
2 その他の雑務
3 一冊の本が出来るまで
4 趣味、お楽しみのこと
おわりに
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第一部 いかにして私は小説家になったのか
第一章 読者であることから始まる
・作者は読者のなれの果て
・小説をろくに読んだこともない人は、この先読まなくていい
・幼くして本と出会う
・全集の読破で「読む力」がついた
・私が読んできた小説たち
・どんなバカな理由でも、小説を読むことはためになる
・好きな作家の小説は全作品読め
・他人の小説を読み込むことは、自分磨きになっている
・年配の人は新しい小説を読め
第二章 そして自然に書き始める
・きっかけは『次郎物語』だった
・作文は下手だったが、小説を書き始めた
・すべての学習は『模倣』から始まる
・他人に読まれたいという願望が大切
・創作仲間との運命的な出会い
・トレーニングの場だった同人雑誌活動
・受験を放り投げ、小説遊びにのめりこむ日々
・ついに長編小説に取り組んでしまった
・大学に入っても創作三昧
・教師にはならないと自分に言い聞かせた「理由」
第三章 うまく書くためのトレーニング
・才能のことは考えるな
・好きな小説をお手本にして書け
・ワープロでも横組みでも、自分の好きなやり方で
・たくさん書くこと、最後まで書きあげること
・現代人には同人雑誌活動は無理かもしれない
・小説サイトは遊びの場と考えよう
・「新人賞」への応募をお勧めする
・長いものを書きあげると、腕が上達する
第四章 修行時代はまだ続く
・「これでプロ作家」と有頂天の日々
・出版社を受験し、全敗
・とりあえずの上京と、半村良先生
・地道に継続していた活動によって開けた道
・作家の弟子になれたプラスとマイナス
・望みを持ち続けられる人が、なれる人
・落選続きの新人賞と「カスリの清水くん」
・ついに自分の書いたものが本になる
第五章 ついに自分の書きたいものを見つける
・なぜか達成感が持てない
・「こういうのでいいのかな」という思い違い
・書きたい小説がわからない
・本格的デビュー作が出たものの、原稿依頼は来ず
・絶好のチャンスをボツって、やけくそになる
・書きながら、自分でゲラゲラ笑う
・そうか、パスティーシュだったんだ!
・書きたいことを見極めるには、まず自分を知れ
第二部 小説のノウハウについて私見
A.書くための方策
1人生体験について<小説を書くためには人生体験が豊かなほうがいいのか?>小説が書ける人は有能な観察者
2取材と資料について<取材する、資料を調べる、というのは必要か?>資料収集の際の「六つの鉄則」
3アイデアについて<小説はアイデアで書けるものか、アイデアはどう生み出すか?>思いつきにすぎないものを、物語に昇華させる作業
4キャラクターについて<キャラクターを決めて書くべきか、どういうキャラク���ーにするか?>書きたくなるキャラを設定すれば、うまく書ける
5記述について<記述に向く書き方はあるのか、どういう記述が書きやすいか?>あなたにお勧めする「三人称視点決まり法」
6リアリティーについて<リアリティーとは何か、どうすれば小説にリアリティーが出せるか?>リアリティーは現実性ではなく、真実味と考えろ
7書き出しについて<どんな点を心掛ければいいのか?>初心者が気をつけたい、三つの「書き出しのコツ」
8クライマックスについて<クライマックスを大いに盛り上げるためのコツ>前もってメモを作っておくといい
9終わり方について<うまい終わり方のコツは何か、どこでどのように終わるのがベストか?>余計なことまで語らず「余韻」を残そう
10描写について<うまい描写とは何か、うまく描写するためのコツとは?>常日頃から「比喩」のトレーニングをしよう
B.小説家になる具体策
C.小説家の日日の暮らし
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自分自身について、日常生活の模様や思考を細かく披露されているので、ファンにはこたえられない。そして、一途に誠実に願い、遂げることの素晴らしさをしっかりと伝えていただいた。
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まず、好きな小説を真似して書く。
ワープロだと漢字が増えやすいので注意する。
たくさん書くこと、最後まで書くこと。エンディングまで書かないと鍛えられない。修練すれば鍛えられる。
ショートショートなら50作、250枚以上の長編小説。
小説を発表するサイトは遊びと考える。自己顕示欲が満たされてしまう。人に読まれることの試練がない。
新人賞へ応募する。一度は長編を書く。250枚以上、500~1000枚程度。
作家に原稿を送るのは間違い。送るなら出版社。
人生経験だけを書くわけではないが、何も知らなければ書けない。有能な観察者であることが必要。
観察力と記憶力と創造力をフルに働かせる。
人に取材できなくても、現地調査ならできる。
人の小説は資料にしてはいけない。図書館で本を借りる。
資料の分を丸写しにしない。
トラブルを避けるためには参考文献をいれたほうがいい。
インターネットの情報は鵜呑みにしない。本のほうが吟味されているだけ正しい。
アイデアだけで小説ができるわけでゃない。先に言いたいこと、書きたいこと、がある。
キャラクターは決めておく。しかし作家の中にないキャラは書けない。その中で決める。
小説を書きたくなるキャラクターを設定すればうまく書ける。
三人称視点決まり法=主人公の後ろにカメラがある。
三人称多視点=主人公が複数いる。視点の在りか、に注意する。
リアリティーは現実性ではなく真実味。経験したことしか書けないわけではない。現実より面白く、真実らしく書く。
最後は一日30枚くらいかける。
書き出しは、話の真ん中から入る。模写や説明は丁寧に。引っ掛かり、を作る。
クライマックスは一気に盛り上げる。ふさわしい終わり方はスーッと消えていく感じ。余韻を残す。
日ごろから描写力の練習をする。比喩のトレーニング。
新人賞に応募。一作書くごとに上達する。落選は当たり前。同人雑誌に参加。
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▼以下引用
その作家が合う気がしたというところで、すでにあなたの個性は反映されている。他人の小説を読み込むことは、実は自分磨きになっているのである。
今、小説が書きたいのである。なのに、今を見る気はなくて、今と関わりたくないというのでは、読むに値するものが生み出せようもない。ちゃんと時代と呼吸しあってなければいけないのだ。
誤解しないでほしいのだが、...今時の流行を研究してそれに合わせるとか、今日的なふうを装って受け入れてもらおう、ということではない。...せめてひとつは目を通しておけ、である(有力な作家一人につき一作だとよりいい)。そうすれば、いま自分がどんな土壌の上にいるのかを感じ取ることができる...それがわかった上で、あなたの小説を書けばいいということだ。
書いた人に、現在への理解がちゃんとあるのなら、その人の昔話なら聞く意味がある。
狭い日本文学の中だけで学ぶより、質量ともに大きな世界の文学に目を向けたほうが、間口が広くなり、深みもまし
なんでもいいから、面白いものを読みまくれ
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小説をろくに読んだ経験もないのに小説家を志望するという人が世の中にはいるらしい。そういう人にはこの本は役に立ちませんと、冒頭で著者はまず念を押す。
小説が好きでたまらず、自分でたくさん書くこと。とくに長編小説を仕上げること。そういう努力を倦まず弛まず続けていった人の十人に一人くらいは小説家になれるかもしれない。その十人の人々へ向けて本書は書かれたと著者は言う。
文章力は技術としてある程度上達可能だが、作家として欠かせない資質は観察眼と記憶力、そして小説家になりたいという一念を持ち続けること。
半村良の「弟子」になれたのは偶然かもしれないが、その偶然は勝手に転がり込んできたのではなく、それなりの背景があったから。「弟子」といっても、直接何かしら指導してもらったわけではない。
その半村良がこう言ったことがある。
「自分に書ける一番大きな話を、長編で書いてみるといいんだよ。それで、どんなに苦しくても、絶対におしまいまで書ききらなきゃダメなの。ちゃんと書き上げたってことで、そこまでのもんなら、以後苦しまずに書けるって言う実力がつくんだよ」
読みやすい文体でさらりと読めるが、奥は深い。
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清水さんなりの「小説家を志す」対することに対するアドバイスや想いが読み易く綴られていて、私は決してそれを志す人間ではないのだけど、得る所もあり、いい本だった。
清水さんがどのようにして小説家になっていったか、という第一部の話はこれまで氏の作品を読んで来た人には知っている箇所が多いと思うけど、切り口がちょっと違うので楽しめるとは思う。
そもそもこのテーマの本を、書いてもいいかな、と考えが変わるまでの過程が最初に書いてあって、そこが良かった。
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作家・清水義範さんが自身の経験や小説のノウハウに対する私見など、小説家になる方法について書いた本。
小説が好きでなければ小説家になるのは難しいもの。小説家を志すと決心したら、とにかく書く。地道な努力なしに成果は出ません。本書を読むと、そのことがよくわかります。
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琉球大学附属図書館OPAC
http://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA83940324
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とにかく書き続けること。
長編を完成させること。
あああ~と頭を抱えたくなることもあったけど、頑張りたいなあと思った1冊。