紙の本
読み方注意
2008/07/02 12:37
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中乃造 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミルハウザーは幻想小説という括りで自分は理解していて、この短編集もそうでありつつ、怪奇により近い怖さが際だっていたように思います。けっこう毒になる。
収録作品の中では「パラダイス・パーク」がとても印象に残っていますが、しくじったなという反省もあり。長めのこの作品、途中パラダイス・パークがどう発展していったかという件が比較的単調に感じられ、読むペースを上げてしまったんですよねえ。でも最後まで行き着いて、がびーんとショックを受けました。じっくり噛み締めながら読んでいたら、このラストをもっともっと楽しめたはずだと。これがオイオイってくらい私好みのラストだったので、非常に悔しかったです。なのでこれから読もうという方には、是非是非じっくり腰を据えて取り組んでねとオススメしたいです。
「新自動人形劇場」は、もう異常に愛します。自動人形ネタであることからして当然だし、どのへんが「新」なのかって部分が本当になんというかなんともいえない。同じく自動人形師を描いた「アウグスト・エッシュンブルク」(『イン・ザ・ペニー・アーケード」収録)と同時期の作品だということですが、「新自動人形劇場」のほうが凄味があって、私は好きだな。
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パラダイス・パークに行ってみたい
2020/03/15 15:55
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本の翻訳者である柴田元幸氏はミルハウザーの小説には「きわめて職人的な芸術家が登場し、その芸をみるみる高めていって世間にもてはやさるが、やがて芸があまりに高度になっていって、大衆から見放されるものの、芸の道はいっそう究められ、もはや自壊するしかないところまで上りつめていく」主人公たちがよく登場するという。確かに、この作品集にもナイフ投げ師、百貨店経営者、遊園地経営者、人形師といったその類の人たちが登場する。コニーアイランドについて知識のないない私はサラビーという男が造ったという遊園地「パラダイス・パーク」が実在していたと思い込み、この話はサラビーについての伝記だと思い込んでいた。もちろんそんな遊園地は存在せず、自壊してしまった天才職人のお話だったわけですが
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一つの物事に対する物語方が、とても緻密でまるでムービーを観ているようです。それは決して回りくどくなく嫌味でもありません。頭の中にひろがる、地下迷路や遊戯施設などの疑似体験ができます。最初はストーリーが無限に広がっていくのを楽しんで、次は、リアルな比喩の言葉の美しさを存分に味わってみてください。
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奇名・珍名ファンにとっては一度は行きたい場所(女湯ではないよ)が、オランダ・ハーグ北西のスヘヴェニンゲン(通称スケベニンゲン)が本書には出てくる。この事実一つをとっても、話題性に事欠かない本書である。
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2008/5/8
街の書店にてハードカバー買い。
合わせて14の短編からなる。
「夜の姉妹団」「空飛ぶ絨毯」「カスパー・ハウザーは語る」
「私たちの町の地下室の下」など、好きな作品は多々あるが、
中でも「ナイフ投げ師」には衝撃を受けた。
全編ほぼ会話文なしにも関わらず、そこから伝わってくる
緊迫感やスピード感、
背筋がすーっとなる戦慄や背徳感が独特な味わい。
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魅入られる、あの暗がりへ、まどろみの昼下がりへ。
未知の、不可思議な、しかしこの、懐かしさ。
うつくしくてかわいいんだあおはなしぜんぶvv
ゆめみる柴田 元幸さん(かってに 訳出だもんなあさすが〜
風変わりな色とりどりの外国のお菓子。てかんじ。。
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なにゆえこの短編集は人のこころをこんなにもざわつかせるのか。未知のもの、幻のように儚いもの、手の届かないもの、極地へ至ったものを読者にその細部まで想像させるような語り口調で書いています。
説明的で冗長という印象もなくはありませんが、人の「怖いもの見たさ」を誘うようなものとそれらを取り巻く人々のこころの動きの書き方が巧みでした。実際にこういた出来事があったら、自分や周りの人達、マスコミはどんな風に考え、行動するだろうか、と想像しながら読んでしまいます。
ほんの10〜50ページの短編で事件の盛衰、感情の浮き沈みをまるごと体験できます。私としては「夜の姉妹団」「新自動人形劇場」「パラダイス・パーク」が好みでした。
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最初はつっこまざるを得ないような展開も、くどくどと語られるうちにいつのまにか納得してるような不思議さ、夢と現実のさかいめが希薄。
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芸術家、少年、夜への憧憬などを丹念に描いた短編集。ミルハウザーを知らない方は、この本を読めば「こういう物を書く人か」と分かっていただけるのではないでしょうか。読後は、どんな物でも芸術になり得るのだと思いました。私たちの周りにある携帯電話でも、メガネでも、ボールペンや名刺入れ、さらには電車やオフィスや本屋だって、それに芸術をつぎ込む人がいれば芸術作品になる。そうやって物を見ていくと楽しくなりそうです。
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周囲の評価が高かったので読んでみました。緻密な描写はそのまま精巧なテーマパークに取り込まれてしまったかのような気分になります。表題作の冷ややかでどこか甘美なところが好き。(2008.12.19読了)
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読みにくくて苦手なのだけど、何かミルハウザーはいい。文章も、展開も、考察も練られていて一筋縄でいかない。
ものすごく精巧で、アーティスティックな職人を感じさせる。
「空飛ぶ絨毯」の文章は、最初から最後まで、全く気が抜かれてない。
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1998年の短編集、2008年翻訳発行。
ナイフ投げ師ヘンシュが町にやってくると知り、とかくの噂をぼんやり思い出しつつも見に行く人々。
そこで起きたことは…?
「ある訪問」9年の間連絡が途絶えていたアルバートから妻を貰ったので来るようにという短い手紙が。
想像以上の田舎町で、テーブルについているのは何と…?
異なる生き物との間の空気に生まれている神秘な調和。不思議な余韻を残す。
矛盾する証言相次ぐ「夜の少女団」
「新児童人形劇場」は自動人形を愛する伝統のある町で。スムーズに動く15センチほどのからくり人形。恋をしてしまうほどリアルで魅力的な人形を作ったハインリヒ・グラウム。10年の沈黙の後に作ったのは…?
「パラダイス・パーク」1912年から1924年までニューヨークに存在したという設定の途方もない遊園地の話。全身の遊園地は実在するが、サラビーという男が古典的な遊園地を完成して人気を博し、なぜなのか内的必然によって次々に斬新だが暗い方向へと発展させていく。
イメージの奔流がすごい。文章はわかりくくはないけれど、この濃さはすごい。
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訳者あとがきの言葉がすごくしっくりきた。
(きわめて職人的な芸術家がその芸をみるみる高めていって、世間にもてはやされるが、やがて芸があまりに高度になっていって、大衆から見放されるものの、芸の道はいっそう究められ、もはや自壊するしかないところまで上りつめていく!)
群衆と、スペシャリストの狂気。
少しずつ世界から外れていく感覚。
気持ち良くフィクションの世界に、浸る。
訳が秀逸!
とても自然で読みやすい。
さすが柴田さんです。
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濃密な魔法の匂いでいっぱいの短編集。きらきらだけじゃなく、怪しい退廃の香りも匂わせつつ進む物語たちに魅了されます。「夜の姉妹団」と「パラダイス・パーク」と「私たちの街の地下室の下」と「月の光」が特にだいすき。
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自動人形館、百貨店、遊園地、地下通路、熟しきって自己崩壊していく芸術たち
相変わらずのモチーフだけれども、詳細な描写を読んでいると自分も入り込んでいってしまいそう
物語の筋運びというより、描き込みの作家だなあと思う
ミルハウザー、好きだなぁ