投稿元:
レビューを見る
2012/01/24
映画化もされているイギリスを代表する作家イアン・マキューアンの代表作とも言える著書。
原題"atonement"。他者とひとつ(at one)なることや、和解を意味する。
キリスト教でいうatonementは、キリストが磔刑に処せられることで人間が神から赦されたことを指すらしい。
傷ついた恋人たちの邂逅に恍惚とさせられます。
投稿元:
レビューを見る
夕闇に「彼女」を襲った男は誰だったのか。時は過ぎ、男はダンケルクへの泥沼の撤退戦を戦っている。見習い看護婦のブライオニーは作家への夢を紡いでいる。恋人たちは引き裂かれ、再会を夢見ている。彼らの運命は?真の犯人は?1999年、すべての謎は明らかになるが―。
投稿元:
レビューを見る
久しぶりに「やられたー!」と言いたくなる小説。
純愛小説という殻を被った小説論であり作家論。その構造がだんだんと明らかになっていく過程に痺れる。まさか上巻の冒頭部分を「読みにくいなー」と思いながら読んでいた(いや、読まされていた)、あれすら仕掛けだったとは…。
投稿元:
レビューを見る
傑作ですな、これは。あまりに周到過ぎて謝るしかない。色んな読み方を赦す力も傑作の傑作たる所以。
一人の女性の時々の妄想が共鳴し、究極のエゴが剥き出しになっている。作家はそれを冷徹に抉り出しながらも、そこに小説が成せる価値を見い出しているよう。第3部の締めはそれこそ衝撃的事件かと。とにかく読まれたし。
投稿元:
レビューを見る
最初は、今時こんな古めかしい小説と思って読み始めたら、いつのまにか、現実と小説の虚構にはまり込む。ラストの数ページは、久々の衝撃。本読みには、たまらない小説。
投稿元:
レビューを見る
映画を先に観ていたので、
この小説の複層性は理解していたのだが、
それでもなお、
驚嘆と深い切なさをもって読みきった。
これは文学だからこそ成し遂げられる、
内面性の可視化であり、
想像力が持ちうる可能性と限界の同時発生的証明であり、
小説家の罪深さと豊かさの体現であって、
また、どこまでも主観的な物語なのであった。
ひとは誰しもが、
大小の差はあれども、
己の物語の文脈でしか理解できないという、
人間性の本質を掴んで離さない作品である。
過剰にも映るレトリックの複雑さと豊かさは、
この作品には必要悪のようにも感じる。
実に素晴らしい。
投稿元:
レビューを見る
くー、楽しみに読んでいたのにふとみたブログに普通に結末が書かれていて、うっかりそれを読んでしまい激しくテンションが下がった。普通にさらっと書いとくなよなーくそー。見る自分が悪いのだけど。これから読む人は、何の前情報もいれずに読んで頂きたい。
投稿元:
レビューを見る
13歳の少女が、姉の恋人に無実の罪を着せてしまい、成長した少女がその罪をどう償うのか―という物語である。
精緻な描写と衝撃のどんでん返しが高く評価されているという。
その点に関しては、確かにその通りだと思う。
けれど、上巻の裏表紙には「世界中の読者の感動を呼」んだ「究極のラブストーリー」とあるが、個人的にはそうは思えなかった。
まず、前半の冗長さに挫折してしまい、大分読み飛ばしてしまった;
もちろん描写が精緻で綿密に練られたゆえの長さであり、この部分によって主人公のブライオニーをはじめ登場人物が生きてくるわけだし、退屈とも思えるほどのゆったりした時間の中で恋人たちの愛が描かれ、それゆえに「事件」が起きてからの悲劇性が一層際立つ訳だが。
それにしても長すぎる…!
翻訳もの独特の読みにくさも強く感じた。
海外作品の独特の言い回しになじめないのか、翻訳が合わないのか、どちらなのかはわからない。
それと、何よりも作中の「事件」が、その顛末も含めて、どうしても受け入れがたかった。
「魂の殺人」とも呼ばれる性犯罪を、ラブストーリーの中の小道具のひとつとしてカタルシスとともに綺麗に流してしまうことは、私にはできない。
奇しくも同じタイトルの湊かなえ氏の『贖罪』に嫌悪感を覚えたのも、この点だ。ただ、湊氏の場合は「イヤミスの女王」と言われるだけあって、あえてそういう題材を作品の中心に据えたのだろうと考えれば(そもそも綺麗な話にする気など毛頭ないのだし)まだマシだ。
けれど、本作の場合は別だ。これを綺麗に描いてしまうあたり、やはり男性の作者だなと思わずにはいられない。
もちろん、すべての題材にケチをつけていたらキリがない。結局のところ受け入れられるかどうかというのは人それぞれ、ということだろう。
それでも☆をつけたのにはいくつか理由がある。
一つは、長すぎて挫折した前半ではあったが、それはこれでもかというほど「ブライオニー」を描いていたからであって、少女独特の未熟さ、それゆえの残酷さが際立っていたこと。
それから、ブライオニーが見習い看護婦として、戦地で負傷した兵士たちと向き合う場面の描写が、とても印象に残ったこと。
そして、最後の「わたし」の述懐。
結局のところ、ラブストーリーとしての部分より、その他の部分が私には印象に残った。
レビュー全文
http://preciousdays20xx.blog19.fc2.com/blog-entry-503.html
投稿元:
レビューを見る
後半戦。前半で冤罪を着せられた彼の従軍光景を描く第2章と、その彼を冤罪に追いやった張本人の贖罪が描かれる第3章。はっきりとした結末まで描かれないまま、それぞれの章が幕を閉じるから、実際のところどうだったのかという真相は明かされないまま。未成年だから許されるものなのか、また成長後、その罪を贖うことは出来るのか。ここに提示される問題は重い。
投稿元:
レビューを見る
上巻で締めくくられた切実さが、次元を変えて、その度を増す。
そして、まさかのセカイ系だったとは。
小説の本質とは、物語を求めてしまう読者の心象とは。
戦争に関する叙述、リアリティは凄まじかった。
・人間関係のせばまりが第一に意味するのは自分のアイデンティティが抜け落ちていくこと。
投稿元:
レビューを見る
52
やっと下巻まで読んだ。
あと2回ぐらい読んでみないと
この作品は心にしみ込んでこない。
海外物は読み慣れてないとだめだね。
ラドラムの作品でも中断しているのがあるし、、。
投稿元:
レビューを見る
あいかわらず,読むのに時間がかかる.小説はとくに.
さて,著者は第二部の終わりを思いついた時は嬉しかっただろうな.豊穣の海の幕切れを思い出す.
投稿元:
レビューを見る
ひとつの罪があった。けれども恋人たちもいた。
原題 ATONEMENT
個人的には「贖罪」より、宗教観のない「償い」とか「罪滅し」のほうがしっくりきます。
かつて小説家が犯した罪は、小説による償いが可能か——
いわゆる作中作なんだけど、絶妙な設定とあまりにもみずみずしい(もしくはなまなましい)文章が小説と現実の境を曖昧にしていて、ブライオニーの告白を聞いてもしばらく判然としない感じ、がいいです。
感性で引き起こされたことは、感性で償おうとするしかない、という試みの小説だと思うけど、やはりというか、償いは為し得ず・・・やるせないなぁ。
投稿元:
レビューを見る
下巻は各章の初めの一文字が特大で印字され、読者に何かの仕掛けがあることを匂わせる。事件から5年、ロビーは刑務所から戦地へ送られていた。セシーリアは家を出、看護婦になった18歳のブライオニーは己の罪を償うかのようにひたすら瀕死の傷病兵の看護に当たる。「決してあなたを宥さない」という姉の怒りに怯えながら。
だが終盤、1995年に話が飛び、作家になった老ブライオニーがもたらすどんでん返しに読者は驚愕させられる。彼女の行動は「償い」と言えるのか。59年にも及ぶ重い罪悪感から逃げた卑怯者ではないのか。読み終わった時には皆しばし茫然とするだろう。イギリスを代表する作家イアン・マキューアンの技巧に富んだ構成は、「これぞ小説の醍醐味」と唸らせる読後感である。
(※改版により現在は全1巻に統合されている。第二部からが下巻に相当。)
なお、これを映画化した「つぐない」も原作の雰囲気を損なわずブライオニーの罪悪感、緊張感に満ちた傑作。ぜひ見て頂きたいと思う。
投稿元:
レビューを見る
ブライオニー(主人公)を全然好きになれなかった。自愛と自己憐憫(作中何回かこの言葉出てくる)しか感じない、ある意味新鮮な主人公。セシーリアとロビーの一時の触れ合いがやけにリアル。感情の描写もリアル。贖罪と言ったってあくまで自己満足。共感を呼びやすそうな作品。