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子供の嘘から生まれた罪は、引き裂かれた恋人たちを引き裂くことなく、代わりに家族のつながりが失われることにつながるのですが、大人になってから真実が見え、罪を償おうとするという展開です。ちょっとしんどい話です。
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赦しを乞うたのは過去の過ちと、苦しみ続けた自分自身。
姉への愛、ロビーへの愛故に二人の愛は確固たるものとなり
真実を明らかにしようとする試みはいつの間にか
そうあって欲しかった自らの望む過去へと摩り替わっていく。
それすら一つの贖罪。
許されることのない答えの一つは「アラベラの試練」
へ立ち返ること。
できることなら、あの時に。
最終盤に2度「えっ!?」と言葉を失った。
もう一度読み直さなければならなくなる。
事件の真実や真の犯人ではなく
本当の物語のために。
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上巻から引き続き、我慢して読みました。
でも、最後まで読んで良かった。
主人公の「贖罪」の意味を考えさせられる…
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上巻はたった2日間だけの物語だが、この下巻では大きな時間が流れる。この文学的雰囲気!
ブライオニー、セシーリア、ロビーの三者三様の人生の傷は、少女のささやかな嘘が引き起こした傷と言うよりも、戦争が導いた傷だ。その傷を丹念に驚くほどの緻密さで描いている。すばらしい。
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少女時代の罪のつぐないは、小説を書くことによってなされるのかどうか?
1999年にすべての謎は明らかになる、と文庫本のあらすじにあるけど、決してすべては明らかになってない気がするのは私の気のせいですか?
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「待っています、戻ってきて」―主人公と共に願う読者の思い。しかし、フィクションとリアリズムの葛藤に悩まされた作者あるいは主人公が用意した結末に、この作品の本当の残酷さがあります。
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「つぐない」という映画の原作で、イギリスでは2001年の発表、日本では2003年発行。
13歳の少女の誤解から姉と幼馴染みの恋が無惨に壊されてしまう。
空想的で感性はあるが思いこみの激しい少女と、周りの人間の抱えている性格的な弱さや置かれた立場による苦しみがどう作用したか。
真実に迫ろうとする筆致は迫力に満ちています。
一生をかけた償いという意味は次第にわかってきます。
作者は76年作家デビュー、98年の作品「アムステルダム」でブッカー賞を受賞してます。
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胃袋の中に重い石を飲み込んだような気持ちになった。ずっしりとして私の現実さえ飲み込んでしまった。それでも、次、次、次、と止まらなくて、下巻が始まると終わってしまうのが惜しくてちょびちょびと読んだ。読みたい気持ちを抑えて。
ざっくりとどんな話なのか言うと、時は1935年、場所はイギリス、13歳の少女が偽りの証言をしたことで彼女の姉が愛する人を破滅と導いてしまうという話(+下巻はほぼ戦争の描写)。しかし、その虚偽証言という出来事がもちろん贖罪なんだけれども、それはあらゆる人間の贖罪のメタファーとして在り、物語を通して感じ得るものは計り知れず深く重い。『アムステルダム』同様、非常に内面的な作品である。
上巻においてはしばしば自己庇護な登場人物にイラッとするが、素晴しい作品だと思う。
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「アムステルダム (新潮文庫)」や「愛の続き (新潮文庫)」のイアン・マキューアンが、描く<世界文学の新たな古典>
13歳の少女は歳の離れた兄の帰還を待ち、彼を迎えるために劇の用意をする。小説家になることを夢見る彼女には、歳の離れた姉もいる。
キーラ・ナイトレイ主演の「つぐない」原作です。
「贖罪」で「つぐない」なので、まぁ、なんとなく筋はわかろうってもんで…。
が、イアン・マキューアンなので、一筋縄ではいかないのです。
上巻の一向に話が進まないジレンマも、ふっとびました。
にしても、イアン・マキューアンってどういう小説家なんだろう。
安楽死を扱った「アムステルダム」にしろ、ストーカーの話である「愛の続き」にしろ、人のはかなさを描いているように思う。が、ただ儚いだけではない。その儚さによりそうようになる邪悪さや、歪みまで、無垢に描いている。
そう、ポイントは無垢なのだ。
「贖罪」の主人公は、13歳の少女ブライオニーだ。彼女の感受性や無垢に裏打ちされた奔放さは、水面に反射する光のように眩しく一時もじっとしてはいない。
が、その水面の下には、暗い水がある。
ふいに、それを気付かされ、たじろいでしまうのだ。
うん、マキューアンを読んでいてこの「たじろぐ」感じって共通しているなと思う。
上手く説明できないけど、多分、マキューアンのいいのは、この説明できないもどかしい感じなんだと思う。
おすすめです。
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人間は思い上がった自責の念ゆえに必要以上の罪を背負いこむこともある。
~(下巻p127より)
自分が作りあげたもののどこがブライオニーを興奮させたかといえば、それは作品のもつ純粋な幾何学美と本質的な不確定性であって、彼女の考えでは、そうしたものこそが現代的感性の反映なのだった。明快な解答の時代は終わったのだ。人物と筋書の時代も。
~(下巻p154より)
下巻p184でブライオニーに手当てを受けている兵隊が「糞ったれ!」と叫んで、ドラモンド主任看護婦が怒るところは泣けた。
早い話が、物語という背骨が必要なのです。
~(下巻p209 『ホライズン』編集長シリル・コノリー
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上巻には☆4を付けたが、それは文学的素養のない私にとって前半部の情景描写の冗長さが退屈だったためであるが、通して読んでみるとその退屈と思われた部分も含めた作品全体が大変良く思えた。
あまり適切な言葉を持ち合わせているとは思えないが、特にこの下巻はたったワンフレーズでガラリと読んでる自分の心情を一変させる箇所がいくつかあり、その度に数秒程読み止まってしまった。
論評できる程の引き出しが無いのが悔やまれるが、一読後の不思議さというかなんとも言えないこの感じは、質のよいSF物を読んだ後に近い感じもするが同じではなく、それは極めて実存的なものであるように思える。
上巻で投げないでよかった。
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愛は物語にはもってこいの主題で古くからある。そりゃもう伝統といえるくらいに。しかし、愛が手垢にまみれているからこそ、愛の持つ重要な本質性は確保しながらいかに巧妙な環境、人的配置をするかが勝負になっているんじゃないの?もはや我々は純粋なラブストーリーに満足できない人間だと言いたい。そしてタイタニックやムーラン・ルージュなどの「悲劇」の恋愛が消費対象の物語になった。悲劇性が持つこの魔力とは何なのか。この本も素晴らしいのだが、どうも僕にはその延長の感覚で読んでしまった。もちろん愛以外に深い主題はあったのだけれども。
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隠れた真実。生涯にわたる贖罪。戦争の描写がなまなましく、突き刺さる。映像では、吐き気がしそうなシーンは、このように選び抜かれた言葉で知るのが良いのだと、頑張って耐え、読み進めながら思った。
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最後の最後で、ああそうだったのかと思い。あー、なんかもう一回読めばもっとあれかも。と、思ってしまったので★5つ。鏡の中の鏡というか、迷宮というか、藪の中式ですね。真実は人の数だけ在ってどれが正しいかはわからない。人の気持ちはわからない。最初の方の戦争の描写にいったん読み進めなくなったものの、まあそれもクリアして。当初の物語が読みたいという欲求は十二分に満たされたのでした。今は早速、『アムステルダム』を読み始め。。。
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素晴らしいの一言。幼い子供のちょっとした誤解が、愛しあうカップルを引き裂く。その子供が成長し、贖罪の為に人生を捧げる。しかし、小説家の大家となり、アルツハイマーに侵された状態で描いたその自叙伝的作品が結局どこまで真実なのかわからず。戦争部分が異常に長くて、ちょっと辟易する部分もあるが、それも子供の勘違いが産み出したものがいかに悲惨さを示す手立てとなっており、納得。ひとりひとりの細かな心理描写に引きこまれました。