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みんなのレビュー8件

みんなの評価4.0

評価内訳

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紙の本

むうう……。「びみょー」だ。今年評価が高かった翻訳小説のようだけれども。「ここを歩いてください」と言われて平均台を歩き出しますね。途中、体が右に傾くと面白く感じるけれども、左に傾くと、とてつもない面白さというわけでもなかろう、という感じ。

2008/12/20 12:38

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 物語ではなく、一風変わった形式の小説だ。
 86の断章で成り立っていて、さまざまな文学者およびその周辺の人たちが書かれている。「文学史的小説」という紹介がされているようだが、「文学事典的小説」と言った方が妥当な気もする。作者が1つの概念を立て、それに該当するものをコレクションしているのである。
 語り手は設定されている。一番最初に自己紹介があるが、身体の外見が変わっていることを辛いと思いながら、世間的には「哀れな独身男」として事務所で働いている男性、しかし、日記を書くことで幸福感は抱いている人である。
 その日記というのが、彼が名づけた「バートルビー族」のメモであり、コレクションなのだ。バートルビーは『白鯨』を書いたメルヴィルが造形した人物で、まるでこの世に生きた痕跡を残すまいとして生活する男性である。代書人としてニューヨークの事務所で働いているものの、私生活もその場所で営んでいる。バートルビーは頼まれる仕事を断り、自分について話すことを断り、人と関係することを断る。
 この小説の語り手は、そのバートルビーの「否定」に注目し、それを切り口に、書く行為から離れることにより文学を否定してしまった作家たちをコレクションしながら、書くという行為の意味や不可能性、文学的創造の何たるかについて考察してみようというのである。

 ここまで筋をまとめてみたところで、もう、面白いのか面白くないのか、「びみょー」な印象を受けやしないだろうか。
 86もの断章で、書くことをやめてしまった作家がいろいろ紹介されていくなら面白そうだ、さらに「書く行為」「文学的創造性」について哲学的考察がなされるなら面白そうだ――と受け止める人は、海外小説をそこそこ読んでいて、「私は結構読んでいる方だから」という矜持や自覚を持つ人だ。程度の差こそあれ、「あの人は文学通ね」などと言われることにくすぐられる。無論、文学畑で実入りがある人については言わすもがな。
 そして、実際、そういう人のツボにくるように、文学史上押さえておいてよい作家たちが紹介され、「あの作家にはそういう経歴があったのか」「この作家は、そういうことをもくろんでいたのであったか」というように腑に落ちるエピソードや文学通なら既に大半は知っているエピソードが紹介されるものだから、それらを追いながら、こういうコレクションを形にした作者の意図に大いに感じ入ってしまうのである。
 しかしながら、さほど文学志向ではなく、何か面白い本はないかとたまたま手に取ってみた人にすれば、元となるバートルビーについても今回初めて知って、そういう面白そうな物語があるのか、そして、ここに出てくる作家たちは実在の人物たちなのか、変わっていて面白い――というように受け止めるだろう。小説には、こういうコレクションのスタイルもあるのかということにも面白味を感じるかもしれない。
 自分を振り返れば、「バートルビー」は読んでいて、ここに登場する作家たちや作品は知っているものもあれば知らないものも結構あるという程度、せいぜいが半可通なのである。そこで、見出しにも書いたように、コレクションという形を提示されて、きょうはこのような平均台の上を歩いて行くようにと指示を受けたものだから、文学通的興味が通じる部分には面白さを感じるけれども、「一般の本好きが読んだとして、どうなの、これって……」ということも感じ、体が右に傾くの左に傾くの、という話になるのである。

 例えば、「ウリポ」という実験的なグループがあり、その影響下に筒井康隆氏が文字を1字ずつ消していく小説を見事に書き切った。『残像に口紅を』である。そのウリポが「ポテンシャル文学工房(ウヴロワール・ド・リテラチュール・ポタンシェル)の略だということを今回初めて知って、勉強になるなあ……と思ったわけであるが(生活の役にはまったく立たないけどね)、このウリポの作家たちが行った言語活動への挑戦・言語活動の解体・言語活動の否定といったことを、パロディ化したようなマルセル・マニエールという作家がいるらしく、それは面白そうだとは思った。けれども、このような脈略を、果たしてどういう人がどのような観点や感覚で楽しめるかには大いなる疑問が残る。
 ピアニストの中村紘子さんがピアニストの変人ぶりを書いた本や、数学者でありながら国家の品格にまでついて書いた藤原正彦氏が数学者の変人ぶりを書いた本もあるので、そういうものの一変種だと捉え、作家という変人を楽しむという手もあろう。
 ちなみに「バートルビー族」に認定されているなかには、詩人のランボー、哲学者のソクラテス、意味深なタイトルの芸術作品で知られるマルセル・デュシャン、カフカ、サリンジャー(このエピソードは分かり易く面白かった)、モーパッサンなどがいる。有名どころはそういった面々である。

 この本は、ガルシア・マルケスやバルガス・リョサなどの南米文学の翻訳で知られる木村榮一氏が訳した。そのきっかけはカルヴィーノやウンベルト・エーコの翻訳で知られる和田忠彦氏の情報だという。和田氏がイタリア文学の大家タブッキから「面白いよ」と紹介されたというのだ。
 こういうそうそうたる出版経緯や、海外文学を意欲的に出している新潮社から出た本だということ、さらに、文学史的内容ということで、この本には、文学畑にいる人にはリスペクトしておいて損はないという考えが働くのだろう。文学上の価値を確認しておく必要もあるという責任感も手伝って、盛んに紹介されたのかもしれない。業界の人ならば見過ごせない本ということになる。
 かように、本は紹介者の政治的とも言うべき意図があって話題になることがあるが(笑)、提示された形がどのようなものであれ、何をどう面白いと受け止めるのかは、読み手次第。ちょっとそういう余計なことも考えさせられる話題の1冊で、本物のバートルビーであれば見向きもしないだろうということを考えると、さらに愉快にもなる。

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紙の本

寂しがり屋のバートルビー

2017/05/01 09:00

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る

他者とのコミュニケーションをいっさい拒絶する男をタイトルにしたところは面白い。書くことの苦しみの果てに、創作の喜びがあるの神

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2008/07/27 00:31

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2009/06/13 13:57

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2009/05/23 19:21

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2012/02/01 18:28

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2014/05/02 22:47

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2018/10/06 23:43

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