紙の本
詩心をもって山を歩くこと
2023/04/17 12:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ポラーノの広場 - この投稿者のレビュー一覧を見る
山口耀久さんの代表作です。山を愛する著者は八ヶ岳、それも北八ヶ岳がことの外お好きだといいます。「南八ヶ岳を動的な山だとすれば、北八ヶ岳は静的な山である。前者を情熱的な山だといえば、後者は瞑想的な山だといえよう」と山口さんは書いておられます。それは詩情に通じる雰囲気があるとも。本書を読めば誰もが北八ッに行きたくなります。けれども、そうして皆が北八ッに押しかければ、山口さんが本書で書かれた北八ッは失われてしまいます。静かな山を愛し、静かな山を大切にするにはどうしたら良いのか、本書の読者一人ひとりが考えなければならないと思いました。
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本書を入手すべく、古書店に足を運んだ方も多いだろう。旧本の絶版から20年たち、装いを新たに世に送り出された「伝説の書」である。10代の頃から登山を始め、山の文芸誌「アルプ」の編集に参加し、串田孫一らと300号の終刊まで委員を務めた著者。長い山登り歴の中で、一番打ち込んできた八ヶ岳に関する随想を、珠玉の1冊にまとめた。
「『にゅう』の頂で静かな山域を展望したときから、北八ッは私にとって『こころの山』と呼ぶにふさわしい山となった。そうして、北八ッによせる私の憧れのまんなかに、いつも雨池がひかっていた」。随想八ヶ岳として書き出された本書は、北八ヶ岳に関するものが大きい比重を占める結果となり、その題名に決まった。著者は自身の「こころの山」北八ヶ岳を、動的(ダイナミック)で情熱的な南八ヶ岳とは対照的な、静的(スタティック)で瞑想的な山と語っている。
「北八ッといえば、だれでもすぐ思い出すのはあの苔の匂いであろう。朽ちた倒木や、古い岩石や、湿っぽい土のそれとまじった、なつかしい森の匂いである…」。読んでいるうちに、自分が実際歩いて、山の香気を五感で受けている気持ちになる。
いざないの言葉は、読者それぞれの「山の想い」へと優しくゆだねられていく。
「さまよい。そんな言葉がいちばんぴったりするのが、北八ヶ岳だ」。(S)
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存在が気にはなっていたのですが、ちょっとお高いので図書館で借りてきました。
読んで、ガツンと来ました。
こんな素敵な山の本が存在するとは。
感動した本に出会ったときほど、
いろいろ感想を書きたいのに、
書いては削除し書いては削除し、
を繰り返し、
結局カタチにならないのはいつものこと。
だから今回も、あまり多くは書かずに、
思いついたこと心に残ったことをメモ。
ちなみに、私は文句なしの☆5つですが、
山歩きをしない人、自然にあまり興味がない人は
読みづらいかもしれません。
八ヶ岳を愛する著者の、山へ自然への想いが伝わってくる作品です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
P76
松林の落葉の様を描いた部分。
衝撃でした。
著者がもう何十年も前に感動した場所に、私も立っていました。
P121
山の斜面をながめていて、遠くに気になる一画がある。
「あそこに行こう!」となる。
地図を広げて「峠から見おろす地表の細部をそれと照合しながら、・・・・」目標の場所をめざす。
P179
森の中でであった小さな沢、ふだんは水が流れていない源流の水路などをたどって歩いてみる。
こんな歩き方もあるのか。
P198
人工の光に描き出された夜の森。
P208
シラビソの身を裂かれている様。
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八ヶ岳の本では
もっとも知られてるとおもいます。
いつか読まなくっちゃ!
と思っていて図書館で見つけました。
けっこうよかった。
にゅう(山の名前)とかも出てきました。
最初にちゃんと登った山。
やく30年まえ。
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八ヶ岳縦走のお供に持参、テントの中で読む。自然描写ももちろん美しいものがあるが、個人的には、50年以上も前の著書ゆえ、現在の山行スタイルとの比較が面白かった。荷物40kg!、夜の21時まで行動し、深夜まで酒盛り、朝は遅くまで寝てるし、あちこちで焚き火をして、不要なものはガソリンで燃やしちゃったりとか、現在の登山の『常識』では考えられない蛮行の数々…。でも、昔はそれが許されたんだろうなぁ。そういう自由さ、いい加減さがなんだかうらやましくもあった。今の登山は『安全第一』や『環境保全』のためにルールが増えすぎ、とても不自由になってしまったという気がした。
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こんなに素直に心の動きを描写してあるなんて。自然への眼差し、友に対する心情、何もかもが優しく愛情に満ち溢れている。よほど純粋な方なのだろう。山への想いが限りない。素敵な本。