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変愛小説集 みんなのレビュー

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みんなのレビュー42件

みんなの評価4.1

評価内訳

42 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

純粋で切実で、そしてとびきり「変」な恋愛小説集

2008/06/02 12:03

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:佐吉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

柴田元幸の最新エッセイ集『それは私です』に、『自動翻訳のあけぼの』と題した文章がある。翻訳ソフトが長足の進歩を遂げ、ついにはさまざまな翻訳者のスタイルを再現できるソフトが登場するというSF掌編風の文章である。そのなかに思わず吹きだしそうになる一節がある。

文中で、その画期的なソフトはユーザーから熱烈に歓迎され、驚異的な売り上げを記録する。しかしやがて、ある思いもよらない事件を引き起こす。

『昨年の夏、ディケンズの『オリヴァー・トゥイスト』の岸本佐知子訳を「新・訳太郎 Ver 4」で作成し、そのプリントアウトをホテルのプールサイドでのんびり読んでいた四十三歳の男性が、突然、無数の機関車が走っている幻覚に襲われたのである。(中略)男性は病院に収容され、一時は生命すら危ぶまれたが、どうにか回復すると、「岸本訳ディケンズを読んでいるうちに胸が苦しくなって幻覚が見えた」と、翻訳と症状のつながりを異様に強調した』

翻訳文学ファンにとっては楽屋落ち的な笑いを誘われる一節だろう。しかしこれは、決して岸本の訳が奇妙奇天烈だということではない。この一節に妙なリアリティがあるのは、この人気翻訳家の訳書には、「小説とはこういうもの」という既成概念を覆すような、破天荒な作品ばかりが並んでいるからである。

本書は、その岸本佐知子が選んだ、恋愛にまつわる現代英米文学のアンソロジーである。だが(もちろん)ただの恋愛小説集ではない。狂おしいまでの恋心を描いていながら、その対象は近所の家の庭の木だったり、妹のバービー人形だったり。不倫相手の男を丸呑みにし、体内で飼いならす人妻の話があるかと思えば、皮膚が次第に宇宙服に変わってゆき、最後には宇宙に飛び立ってしまうという奇病に冒された夫婦の話があったり。さらには自分の母親を「攻略」するためのハウツーものに、飛行船に連れ去られた妻をどこまでも追い続ける男の冒険譚。本書はまさに、岸本ならではの奇想天外な「変愛」小説がぎっしり詰まった一冊なのである。

評者は普段あまり恋愛小説を読まない。だがその貧しい読書経験を根拠に云えば、いわゆる恋愛小説においては、たとえそれがどのような愛の形を描いていようと、恋愛そのものについては大抵、美しいもの、強いもの、尊いものといった、絶対的な肯定が前提にあるように思う。たとえば禁断の愛や背徳の愛を描いていても、愛そのものは紛うかたなく美しい。少なくとも評者は、恋愛小説というものにどこかそんなイメージを抱いているところがある。

然るに本書においては、そうした前提がまったくと云っていいほど成り立たない。なにしろ木に想いを寄せたり、人形にときめいたり、思いあまって相手を丸呑みにしたりする話なのである。これが「恋愛」とよべるのだろうか、と戸惑う読者がいても不思議ではない。

けれど、そうして先入観から自由になれる所為か、これらの作品を読むと、恋愛小説の苦手な評者にも、登場人物たちの純粋で切実な思いが、不思議と生々しく伝わってくるのである。どれもがとびきり常軌を逸した設定なのに、なぜか心の奥深いところを揺らしてゆく。過剰に美化された恋愛があふれる世の中にあって、これらの奇妙な作品たちは、読者に恋愛という感情とニュートラルに向き合うことを可能にしてくれているのではないか、そんな気がする。

本書で取り上げられた作家には、日本ではあまり馴染みのない名前が多い。邦訳がまだ一冊も刊行されていない作家も何人かいる。本書に収められたそれぞれの作品を読むと、いきおい彼らの他の作品も読んでみたくなる。もちろん辞書を片手に原書と格闘するという手もあるのだが、ここはやはりまた岸本訳で読んでみたい。そう思うのはきっと評者一人ではないだろう。仮にそうしたときに、目の前に無数の機関車の幻影が現れるのなら、いいだろう、望むところだ。

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紙の本

風変わりで奇抜、変てこな短篇小説が並ぶアンソロジー

2009/02/02 19:02

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:東の風 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ひどく変わった味がする海外短篇小説のアンソロジー。グロテスクな愛、型破りの愛、一方的な愛、奇想天外な愛などなど、普通の「恋愛」小説とはひと味もふた味も違う「変愛」小説がずらり、並んでいます。

 アリ・スミスの「五月」を冒頭に、レイ・ヴクサヴィッチの「僕らが天王星に着くころ」「セーター」、ジュリア・スラヴィン「まる呑み」、ジェームズ・ソルター「最後の夜」、イアン・フレイジャー「お母さん攻略法」、A・M・ホームズ「リアル・ドール」、モーリーン・F・マクヒュー「獣」、スコット・スナイダー「ブルー・ヨーデル」、ニコルソン・ベイカー「柿右衛門の器」、ジュディ・バドニッツ「母たちの島」を収録。「僕らが天王星に着くころ」を除いて、すべて、『群像』誌上に初出・掲載された短篇小説。

 なかでもバツグンに風変わりで、変てこな話の奇妙な味に引き込まれたのが、「五月」「リアル・ドール」「母たちの島」の三篇。木に恋した人と、その人を気遣う人と。ふたりの無償の愛が美しく描かれた「五月」。妹のバービー人形とつきあってる僕の変態性活を、生き生きと、コミカルに綴っていく「リアル・ドール」。父親たちのいない島で育てられた女の子たち。未知なる男どもへの不安と期待が高まっていくなかで、話が急展開し、とんでもない所に着地する「母たちの島」。

 こんな面白くて、読みごたえのある海外短篇のアンソロジーを読んだのは、小野寺 健・編訳の『20世紀イギリス短篇選(上・下)』(岩波文庫)以来。強烈な読後感は、どこか異国の料理店で、知られざる特別料理を堪能した気分に似ているかも。

 岸本さんの融通無碍、達意の訳文が素晴らしかったです。

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紙の本

世にあるどんな小説にも何らかについての愛が書かれていない小説などない。それが「変」かどうかは、誰にも決められはしないのだ。

2014/11/25 15:07

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:abraxas - この投稿者のレビュー一覧を見る

最近、日本版が刊行されたばかりの『変愛小説集』。オリジナルの方は翻訳家である岸本佐知子が自分の好きな海外短篇を毎月一篇、選んで訳し『群像』に連載したものを単行本にしたもの。翻訳家が訳すべき作品を自分で選べるというのは、多分楽しいことなんだろう。そういう意味では翻訳家の好みがよくわかるアンソロジーになっている。

単行本化に当たってつけたのであろうタイトルは、つい「恋愛」と読んでしまいそうになるまちがいを誘う気の利いた趣向だが、中身は特に「変(な)愛」が主題とも思えない作品も多い。要は翻訳家の琴線に触れた作家、作品が選ばれたにすぎない。少し考えてみれば分かるが、世にあるどんな小説にも何らかについての愛が書かれていない小説などない。それが「変」かどうかは、誰にも決められはしないのだ。

木に恋する性別不詳の「わたし」と、そのやはり性別不詳の相手と木の奇妙な三角関係を描いたアリ・スミスの「五月」が、中ではいちばん「変愛」の名に相応しい。人にとっての恋の対象は、たとえ「木」でなくとも、第三者にはどこがいいのか分からないものだろう。ただ、本人にとってのそれはかけがえのないもの。それがよく伝わってくる。

SF的な発想のものや恐怖小説風の作品も多いのは、編者の好みもあろうが、掲載するアメリカの雑誌や読者に受けがいいのかもしれない。軽さと辛らつさがうまくミックスされ、それなりに楽しめるが、個人的にはわざわざ読みたいとも思わなかった。都甲氏の最新書評を読んで期待したジェームズ・ソルターの「最後の夜」も、今ひとつだった。書評を読んで想像していたソルターの方がずっと読んでみたい。邦訳作品がどこかにないものだろうか。

まだ若い作者らしいがスコット・スナイダーという人の「ブルー・ヨーデル」が、中では最も好みの作品だ。蝋人形館だとか、飛行船、T型フォードという道具立てがまず好みだし、何故か自分を捨てて去った恋人をアメリカ中オンボロ車に乗って追いかける主人公の思いが他の作品にないピュアなものを感じさせる。表題は、ナイアガラの滝が凍るとき、氷のなかに閉じこめられた魚たちを指していう言葉だとか。印象に残る映像を言語表象化することのできる力を持った作家である。他の作品も読んでみたいと思った。

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紙の本

変愛と純愛の微妙な関係

2008/12/19 23:26

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る

 編訳者があとがきにも言うとおり、これは「変愛小説」というよりも、意外に「ピュアでストレートな純愛小説」なのかもしれない。

 冒頭の木を愛してしまう話にしても、登場人物は、たしかにどうかしてはいるのだが、その純粋さが際だっている。あんなにも木を愛することなど、なかなかできるものではない。

 そういう目で見れば、ちまたにあふれるラブソングやラブストーリーの方がむしろ安物っぽい感じがしてくるから不思議だ。ラブストーリーに食傷気味の方には、愛の形をもう一度再認識する手がかりになるかもしれない。いや、そこまで言うと、少しほめすぎだろうか。

 そうはいっても、そのへんにある恋愛小説とはまるで違うので、SF的場面設定にも動じないくらいの器量を読者は要求される。
 例えば、体が足から徐々に宇宙服に変化していく話がある。やがて全身が宇宙服になったとき、宇宙空間に向けて飛び立ってしまう。奇想天外そのものだ。そして、先に宇宙服に変わっていく妻をなんとか引き留めて、同じタイミングで宇宙に旅立とうとする夫の企てなど、相当に読者の遊び心を刺激する。

 ただし、なかにはグロテスクな印象の変愛小説もあるので、通勤・通学の電車の中で読むには、周囲の目に気をつける必要がある。11編の小説のすべてを読む必要はないので、気に入ったものを味わいながら読むのでちょうどよい感じだ。

 海外のあちらこちらで発表された作品たちを巧みにセレクトし、一編の小説集に仕立て上げてしまった編訳者の力に敬服する。そのセンスが、本書をきわものから快作へと押し上げている。正確には”怪作”かもしれないのだが・・・。好みが分かれる本ではある。

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2008/06/11 23:30

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2008/07/17 00:33

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2008/09/28 00:27

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2008/06/08 00:00

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2008/12/31 15:57

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2009/01/05 20:19

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2009/01/29 06:29

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2012/03/11 16:51

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2010/10/04 10:09

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2010/12/09 20:19

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2010/12/11 11:43

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