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紙の本
多分、クリスティー作品の中でトップクラスの作品ではないのかもしれません。でも、この面白さと結末の意外性は立派、黄金時代にはこんな作品が沢山あるんでしょう
2008/09/26 19:19
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
『予告殺人』の評でも書きましたが、私がクリスティーの作品を好んで読むようになったのは晩年で、初期から中期の作品は『ABC殺人事件』と『アクロイド殺人事件』くらいしか読んでいません。ただし、読むようにと旧版ですがハヤカワの文庫で多分全巻積読状態になっています。このままでは死んでも読めないかも、なんて思い始めてチャンスをうかがっていると読みやすい新版がでました。
DEATH IN THE CLOUDS、PB版でもよく見かける1935年発表の有名な作品です。「飛行機のなかで人が蜂に刺される」ということだけは知っているんですが、それ以外の知識皆無。新鮮な気持ちで読むことができるのは大変ありがたい。そしてやっぱり驚いてしまうわけです。そういう捻りなんだって。
装幀:ハヤカワ・デザイン、カバー写真:Alamy/PPS通信社で、デザインについては既に書いていることと変りありません。行間がもうすこし広くてルビについても総ルビではなく、例えば見開き頁内なら同じ読み方の場合、ルビは最初だけにすれば、読みやすくて教育的だろうなあ、ミルキイ・イソベのデザインを学びなさい!とだけ言っておきましょう。
編集部H・K誌による巻末の解説ですが、当時の航空機事情が書かれていて、短いながらも70年以上前の様子が良くわかるのは助かります。ついでに飛行機の断面をカットしたようなイラスト(座席の図は載っていますが)がついていれば、男の子なんかは嬉しいだろうなあ、なんて思いもします。内容についてのカバーの案内は
フランスからイギリスへ飛ぶ旅客
機で、奇妙な事件が起きた。眠っ
ていると思われた乗客の女性が、
じつは死んでいたのだ。その首筋
には、針で刺されたような傷がの
こり、すぐに吹き矢の針が機内で
発見される。針にはおそるべき毒
ヘビの毒が塗られていた。大空を
飛ぶ飛行機は、完全な密室だ。
だから犯人は、必ずこの機の乗客、
乗員のなかにいる。問題の機に乗
りあわせていた名探偵エルキュー
ル・ポアロの推理がはじまった。
です。巻頭にプロメテウス号の後部客席見取り図と乗客名簿があるので、じっくり見てください。すぐに疑問がわくはずです。でも、それは本文に
乗客の数は二十一人――前部客席十人と、後部に十一人が乗っている。パイロットが二名、そして男性の客室乗務員が二名。
とあるので氷解します。事件が起きた後部座席の11人と2名の客室乗務員などを簡単に紹介すれば
・ジェイン・グレイ:イギリスの美貌の美容師。競馬で百ポンドの賞金を獲得し、一週間をフランスのル・ピネで過ごすことにする。賭博上で見知らぬ青年からチップを貰う。主人公といっていい。
・ノーマン・ゲイル:イケメンの歯科医。賭博上でジェインにチップを渡した青年で、飛行機でたまたま席が近くなる。
・シスリー:ホーバリー:玉の輿に乗った伯爵夫人。金遣いも荒く、とかく噂が絶えない。夫から愛想をつかされている。
・スティーヴン:シスリーの夫。伯爵らしい人格者だが、結婚に関しては失敗したと感じている。
・ヴェニーシャ・カー:貴族。スティーヴンの幼馴染みで、本当は自分こそ妻になるはずだったと思っている。
・ロジャー・ジェイムズ・ブライアント:耳鼻咽喉科の医師。飛行機にフルートを持ち込む。
・アルマン・デュポン:フランス人考古学者。飛行機にクルド族のパイプを持ち込む。
・ジャン・デュポン:アルマンの息子。
・ダニエル・クランシー:探偵小説作家。死因が吹き矢によるもので、南アメリカのインディオの毒矢が使われたと言う。
・ジェイムズ・ライダー:資金難で苦しむ会社社長
・マダム・ジゼル(マリー・モリソー):金貸しの老女で飛行機で殺される。
・アン・モリソー:マダム・ジゼルの娘。
・ヘンリー・ミッチェル:年上の乗務員。マダム・ジゼルが死んでいるのを発見する。
・アルバート・デイビス:年下の乗務員。
となります。私は犯人が仕掛ける機械的なトリックは評価しませんが、作者が読者に用意するトリックは高く評価します。そしてこのお話にもそれがあります。冷静に考えると、いかにもクリスティーらしい技で、ほかでも類似の捻りをやっているはずですが、そこまでは理解していても、そうか、と肯いてしまいます。これが1935年発表?やっぱりエライ、と再認識しました。
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