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短篇ベストコレクション 現代の小説 2008 みんなのレビュー
- 日本文藝家協会 (編), 石田 衣良 (ほか著)
- 税込価格:964円(8pt)
- 出版社:徳間書店
- 発行年月:2008.6
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文庫
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紙の本
短篇小説の魅力がつまっている21の作品集
2008/07/21 18:34
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サムシングブルー - この投稿者のレビュー一覧を見る
石田衣良氏の短篇集を読んで、もっと彼の作品を読みたくなりました。検索したら徳間文庫『短篇ベストコレクション現代の小説2008』に辿り着きました。この本は2007年1月から12月までの読物雑誌の中から、別個にアンソロジーが組まれる歴史・時代小説を除いて、現代を代表すると目される21の短篇小説を選び出した本です。
最初の小説『絹婚式』(小説現代)は石田衣良氏の作品でした。読む前からどきどきです。しかし、期待が大きかったせいか読後の気分はいまひとつ。そこで私は興味を惹いた作品から読んでいこうと思いました。
諸田玲子著『黒豆』(小説新潮)
この作品は題名どおり自慢の黒豆を近所に配るのを恒例にしている母、大晦日だけ家中の窓ガラスを拭く父、帰省した27歳の主人公と弟、4人家族の大晦日から元旦にかけての物語です。約30年前の師走の風景が描かれていていい感じです。
桐生典子著『雪の降る夜は』(小説宝石)
この作品は夕暮れどきに橋の上で会った29歳の史絵とあと三ヶ月で定年を迎える堀田さんとの物語です。まるで映画を見ているように会話文が素敵です。『ペチカ』の歌詞がさらに情感を深くします。
雪のふる夜はたのしいペチカ
ペチカ燃えろよ お話しましょ
中場利一著『笑わないロボット』(小説宝石)
この作品は最後に読みました。題名にまったく興味がなかったので最後になってしまいました。物語は自分が大好きでフェラーリに乗っているお坊さんが主人公(オレ)。彼には子どもがいない。幼な友達のマーくんの息子、小学生のヨウイチを預かることになった。ヨウイチは教師の一言がきっかけでいじめにあっていた。笑わないロボットはヨウイチだったのです。いじめにあっているヨウイチ、ヨウイチをわかろうとするオレと妻のカヨ。最後に素晴らしい作品に出合えました。本の題名は大事ですが、それがすべてではなかった。その意外性に読書の醍醐味があるのだと思いました。特に短篇小説には躍動感があり、心を揺さぶられます。そして読み終わったとき、心に余韻が残ります。その余韻を楽しめるのが至福のときです。
紙の本
ベストコレクションだったら、現代小説だって過去の名作と互角、そんな今の力を見せてくれる作品集。作品本位で選ぶからベテラン、中堅が健闘しているのも編者の見識。ご立派。
2008/11/25 19:38
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私の中ではアンソロジーというのは、オリジナル本に比べると階層的に低いんです。初出の雑誌、というのも大して有り難いとは思わない。昔の初版本信仰がまだ抜けていないんでしょう、ベストコレクション、なんて銘打たれても結局は各作家の短編集のほうを優先的に読むことになります。
ですから、本当に思いついたときにしか手にしようと思わないんです、編著って。ですから、この本を手にしたのも事故みたいなもので、来年も読むか、っていうと首を傾げざるをえません。ケチのついてしまったベスト・ミステリなんて避けて通るくらいなんですから。
でも、内容的に不満があるかといえば、皆無といっていい。だって、その道のプロが選りすぐったものばかりなんです。しかもベスト・ミステリが若手偏重の気味があるのに比べ、こちらは実に年代のバランスが取れています。日本文藝家協会と推理作家協会の価値観が違うんでしょうが、私のとっては此方に軍配。
カバー後の案内ですが
時代を鮮やかに切り取る、短篇小説アンソ
ロジーの登場です。二〇〇七年に小説誌に発
表された短篇の中から、最優秀作品を厳選。
ベテランから新人まで、今を代表する実力派
作家二十一名が贈る作品の数々は、ジャンル
を問わずどれも極上の味わい。小説を読む喜
びがじんわりと心にしみてきます。笑いと涙
のあとにくる深い余韻をお楽しみください。
(傑作短篇アンソロジー)
となっていて、黒を基調にしたオーソドックスなカバーデザインは、瀬川卓司です。各話については、巻末の解説で長谷部史親が、実の要領よく紹介していますが、それを横目にオリジナルな紹介をしましょう。字数も半分以下です。ただし、ここまで文字数を絞ると意味不明かも・・・
・絹婚式 石田衣良(小説現代 一月号):結婚して十年、まだ一度も交わったことがないという夫婦は・・・
・“旅人”を待ちながら 宮部みゆき(小説すばる 一月号):魔法を学ぶ少女が思うのは要領よく進級試験をパスすること・・・
・黒豆 諸田玲子(小説新潮 一月号):母親が年末になると必ず作り始める黒豆、それは親戚やご近所に配られ・・・
・匂い梅 泡坂妻夫(問題小説 二月号):十年経っても引き取り手が現れない反物、久しぶりに手にしたそれは・・・
・笑わないロボット 中場利一(小説宝石 二月号):ロボット大会出場を目指す少年は、いじめられっこ・・・
・涙腺転換 山田詠美(オール讀物 二月号):男子たるもの決して涙を見せてはなりません、母親の言いつけを守った息子は・・・
・秋の歌 蓮見圭一(小説すばる 三月号):母の死を待つ男が向かったのは、昔自分が描いた絵が飾られていると聞かされた店・・・
・みんな半分ずつ 唯川恵(小説新潮 三月号):二人三脚で順調に仕事をこなしてきた設計事務所、夫に女ができて・・・
・雪の降る夜は 桐生典子(小説宝石 四月号):病院を止めさせられた看護師に声をかけてきた老人は、彼女を知る患者だった・・・
・黄色い冬 藤田宜永(青春と読書 五月号):青年の相手は勤務先のホテルの専務の妻、競馬で知り合った二人は・・・
・図書室のにおい 関口尚(小説すばる 六月号):学校の図書室を舞台に繰り広げられる中学生の淡い想い・・・
・ぶんぶんぶん 大沢在昌(オール讀物 七月号):脅迫されている漫画家が熱を上げるのは、知り合いの占い師・・・
・弁明 恩田陸(小説新潮 七月号):舞台の上で一人謝罪をしつづける学生タイプの女性は・・・
・五月雨 桜庭一樹(オール讀物 七月号):ホテルに缶詰状態の二人の作家、初対面のはずなのにどこか見覚えが・・・
・初鰹 柴田哲孝(小説宝石 七月号):妻の浮気の相手が望むのは故郷・和歌山でとれた鰹の刺身・・・
・その日まで 新津きよみ(問題小説 七月号):時効まであと二十日、十五年逃げつづけた運のいい女性は・・・
・蝸牛の角 森見登美彦(小説新潮 七月号):歯が痛いのに医者のところに行こうとしない学生に阿呆神は・・・
・渦の底で 堀晃(SF Japan 夏号):消息を絶った無人探査機を求める男と結晶回路の頭脳・・・
・蝉とタイムカプセル 飯野文彦(SFマガジン 十月号):小学校高学年のことが全く思い出せない男のところに舞い込んだ招待状・・・
・唇に愛を 小路幸也(小説NON 十月号):興業的にうまくいっていたアイドル歌手とバックバンドの関係が微妙に変化して・・・
・私のたから 高橋克彦(月刊ジェイ・ノベル 十月号):舞い込んだ二時間番組の内容は、昔持っていたけれど今は手放してしまったお宝を紹介するというのだが・・・
解説 長谷部史親
繰り返しますが、年度のベスト作品の名に相応しいものばかりです。ベテランから新人まで、とありますが、私が作品を読んだことのない作家は中場利一、関口尚、柴田哲孝、小路幸也の四人だけで、彼らにしても以前から名前は見知っているので、新人と言えるかどうか。内容も実に手堅いものばかり。大人の選択といってもいいでしょう。
つまらないことですが気になったのは、カバーの著者名の並べ方。そのまま書き写して見ましょう
石田衣良 山田詠美 諸田玲子
宮部みゆき 小路幸也 高橋克彦
唯川恵 柴田哲孝 関口 尚
大沢在昌 藤田宜永 堀 晃
恩田陸 飯野文彦 蓮見圭一
桜庭一樹 桐生典子 新津きよみ
森見登美彦 中場利一 泡坂妻夫
となっています。目次を見ればわかりますが、その順番ではありません。縦横斜めと並べ替えても目次とは一致しない。もちろんあいうえお順ではありませんし、年齢順でもない。字数がきれいに揃うわけでもない。ま、二列目が全部四文字というのはありますが、一列目にも三列目にも四文字作家はいる。頭の文字だけ並べると何か意味のあることばが浮かぶかと思いましたが、気配もない。なんじゃ、こりゃ。