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ウィトゲンシュタインの建築 新版 みんなのレビュー
- バーナード・レイトナー (編), 磯崎 新 (訳)
- 税込価格:2,420円(22pt)
- 出版社:青土社
- 発行年月:2008.7
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紙の本
ウィトゲンシュタインの設計した住宅から何を読み取れるだろうか・・・。
2009/07/26 08:50
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:反形而上学者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
およそ180ページ弱の薄い本である。たぶんウィトゲンシュタインの研究者か、建築の設計を専門としいる一部の学者肌の人にしか本書は読まれないように思うのだが、なぜか、今回で四度目の新装版となる。
日本でこの本が最初に出たのは、80年代に、西武美術館から出ていた「アール・ビヴァン」という雑誌の特集として単独で出ていたと記憶している。それから、ハードカバーの本になったのだが、本書はウィトゲンシュタインが姉のために設計することになった個人住宅について(1928年完成)、1972年にこの住宅の写真記録をまとめることになたのが、本書成立の発端である。
しかしながら、わざわざ写真撮影を行ったと思えないほどに、本書に掲載されている住宅の写真は、貧相である。建物の外観はともかくとして、室内空間はもっとはっきりした写真と、できればモノクロではなくカラー写真にして欲しかったし、モノクロであっても戦前の写真のようにコントラストが強すぎて細部がつぶれてしまい、全く空間の様子がわからない。ここは、しっかりとしたケアを行って欲しかった。きっと、残された大もとの写真やフィルムは、ちゃんとしたものであるはずだからだ。
本書の建物についての説明と写真は実際に見ていただくのが一番いいと思うので、特に説明はしないが、装飾の全く無い、細部と寸法の厳密さに拘った非常にモダンで厳格な住宅とだけいっておこう。ちなみにこの住宅に住んだウィトゲンシュタインの姉たちは、「住みにくい住宅」という感想を残している。
最後の「解説」では、哲学者の黒崎宏と、批評家の多木浩二がこの住宅について説明しているが、残念ながら、有益な情報はあまりない。ただ、この住宅が今はブルガリア大使館の所有物として使われており、現存もしていることは確かなので、それにはホッとするところだ。
有名な学者や思想家が家を設計した例はいくつかある。例えば有名なのは分析心理学者のユングであろう。ユングはスイスのボーリンゲンの湖畔に煉瓦造りの住宅を何年にも渡って自分で作り、幾度と無く増改築も自分自身で行い、彼の思想形成に大きな役割を与えることとなった。同様に、ウィトゲンシュタインもこの住宅を設計することになった時は、神経症が悪化し、精神状態は最悪な時であったので、彼の精神状態を癒す、なにがしかの助けになったことは間違いない。しかし、後の彼の哲学思想にどれだけの影響を与えたのかは、記録も残っていないし、推測できるような論文も定かではない。
しかし、ウィトゲンシュタインは2年間も住宅の設計に費やしているので、彼にとってはやりがいのあることであり、楽しんで設計をしていたことについてはうかがわれる。鋭敏な感性と、明晰な頭脳の持ち主であるから、尚更のこと写真をもっとちゃんとしたものに変えて欲しかったというのが私の希望であり、せっかく本まで出したことが悔やまれる。
空間というものは、写真が充実していないと絶対に分からないからだ。もちん、可能ならば実物の中に入ってみるのが一番早いのだが・・・。
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