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紙の本
ああ、武士道!この、熱さ、ひたむきさに、にんまりし、ワクワクし、心躍る。
2008/09/04 00:04
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うっちー - この投稿者のレビュー一覧を見る
北京オリンピック、柔道惨敗! しかも、「柔道はスポーツだとは思っていない。闘いだ」と言う石井慧が100kg超級で金メダルをとってしまった。柔道は、スポーツではないというのは同感。でも、本当は、「闘い」ではなくて「武道」なのだ!
そもそも「武道」の勝ち負けを判定するのは、至難の業なのである。この本の前作である「武士道シックスティーン」の中にも「あれは審判がヘボなんだよ。見てもないくせに、音と声だけで(旗を)上げやがって」というせりふがある。
武道における攻撃は、速ければいいのではなく、ましてや、倒せばいい、当たればいいものでもなく、文中にあるように「『気剣体』が一致したものでなければならない」のだ。柔道の「指導」や「効果」なんて、わけわからん。当然、「一本」じゃないと、意味ないでしょ。
そうそう、本の話である。この物語は、剣道に魅せられた二人の少女が主人公。武蔵を尊敬し、兵法者としての道を究めたいと願う磯山香織。愛読書は「五輪書」。一方、基本に忠実、「不動心」を窮めようとする中段の達人、西荻早苗。性格も、攻撃的で負けず嫌いな磯山と、おっとりと勝負にこだわらない西荻とは、対照的。そんな二人が高校の剣道部でお互いを強烈に意識しながらしのぎを削る。
章ごとに、二人が交互に語る形式なので、さらに性格や考え方の違いが際立っておもしろい。栞ひもも、赤と白と2本ついていて、剣道の試合で背中に付ける紅白のひもを連想させる。
この「セブンティーン」では、別々の学校に行くことになったふたりがそれぞれに悩みながら剣道に精進する姿が描かれる。剣道のあり方は、そのまま生き方の表れでもあり、「剣道ばか」である周りの大人たちの生き方もしっかり描かれていて、思わず共感、うなずく場面も多い。
剣道とは、武道とは、武士道とは?!「勝つ」ことの意味は何なのか。磯山の極端さには笑えるし、まっすぐに悩む姿には泣ける。家族の愛情、ふたりの友情も麗しく、青春物としての感動もたっぷり。何より、少女が「武士道」に邁進する物語だもの、高校生時代に武道場の「剣は心なり。心正しからずば、剣、また正しからずや」と書いてある板を3年間見てけいこに励んだ、武道好きの私には、堪えられないおもしろさなのである。
紙の本
なぜ、剣道をするのか?
2009/10/26 17:20
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第3作「エイティーン」も刊行、映画公開も控えた人気シリーズの第2作。剣道にその高校生活をかける少女2人の物語・高校2年生篇である。「3作目を読んでから書評を」とも思ったものの、1作目だろうが、2作目だろうが面白く、筆をとった次第。
「少女に袴」はお似合いなのだろう、ドラマ版『鹿男あをによし』でも、鋭い胴を決める主人公に、上段の構えの主将、と印象的な剣道少女像を作り出した。剣道をする少女の物語は、さほど珍しくないかもしれない。しかし、そんな甘い思いで本書を手にとっては痛い目にあう。何せ主人公の一人香織は、中学校の全国大会2位だっただけではなく、「武士道」を極めるために剣道をしているのだから。愛読書は「五輪の書」。その「気合い」、いや「気魄」は、第1作「シックスティーン」で存分に描かれている。
もう一人の主人公は、もともと日本舞踊をしていたのが中学生から剣道の道に入った早苗。この「剛」と「柔」との出会いと葛藤とは第1作で描かれている。第2作は、思わぬ形で別々に剣の道をあゆむことになった2人を描く。実は作者は続刊を予定していなかったらしく、第1作の結末で用意した「別々の道」を、第2作では引き継がざるを得なかったらしい。なんとも苦し紛れな気もするが、仲良くなった2人が別々の場で活動して行くのは、物語に新たな緊張感をつけくわえてくれる。香織と早苗が交互に語るという章構成スタイルともあいまって、かつて同じものを見ていた2人が、それぞれの場所で何を見て何を感じて、そしてどう成長していくのか、が読んでいて楽しみになる。作者の力技であると同時に、作者の作った人物たち自身のエネルギーによるものという気もする。
実は正直なことをいうと、タイトルに「武士道」が掲げられていることもあり、手にするのをためらっていた。武士道とか、サムライとか、とやたらに付けてしまう最近の風潮になじめなかったからだ。所詮、それは戦の論理ではないのか、と。だいたい、日本人の圧倒的多数の祖先は農山漁民でなかったか、と。しかし、本書の登場人物自身も、その武士道に試行錯誤する。そして、そのうえで示される清々しい解釈には教えられるところ大であった。それが何かは、ぜひ本書で確かめられたい。
紙の本
ふっきれて軽やかに
2012/01/06 12:38
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『武士道シックスティーン』の続編。この後さらに『エイティーン』がある。
前巻との最大の違いは、二人の剣士のうち早苗が九州に引っ越して別の剣道名門校に入ったこと。部としてのスタイルに戸惑いながら、剣道のあり方、武士道とは何か、というメインテーマが追求される。しかしここでの最大の魅力は、元気を取り戻し、一回り成長した香織の闊達さだろう。角が取れて楽しい。全体に重さや劇性が減って、軽く流していった感じがあり、そのせいかより早く、ほとんど一気に読めると思う。
紙の本
武士道の先に2人の少女が行き着いた境地とは
2010/04/15 17:42
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ジーナフウガ - この投稿者のレビュー一覧を見る
香織と早苗の2人が、それぞれの武士道探しをした1年を描いた前作【武士道シックスティーン】を引き継ぎ、
今作で2人は17才、高校2年生に進級した。冒頭、父親の仕事の都合で九州に引っ越す事になった早苗に、
『転校したら何処で剣道を続けるのか?』そう問い掛けて来る香織に
『転居先では剣道するのは止めて元々していた日本舞踊の教室でも探そうかな…』
なんて心にもない嘘をついてしまう。この部分には、香織と早苗の関係が単なる親友ではなくて、
剣を交えながら互いに互いを認め合った後、戦友で剣友になったという経緯が関係していると思うのだが
2人らしくて、とても良いエピソードだと感じた。そんな早苗だが九州の強豪校・福岡南高校に編入後は、
慣れない稽古内容に戸惑いつつ、なんとか自分の武士道を見付けようと模索する。
ところが!青天の霹靂とでもいうべきか、福岡南高で早苗の親友になったレナは、超のつく程合理的思考の持ち主。
武士道ではなく剣道を理論的に高め、それを究めた後、実践して行こうという女性剣士だったのだ。
福岡の剣士達に負けず劣らず、自分剣道、否、武士道に大きな変化があったのが香織だ。
宮本“新免”武蔵を心の師として仰ぎ、入学当初、周りは全て敵として捉え、
信ずる物は己が武士道のみだった彼女も、おおらかで、マイペースな早苗の剣や、周囲の先輩、
中等部の後輩とのやり取りを経て、知らず知らずの内に、自分の武士道を一回りも二回りも、
大きく成長させつつ2年生としての日々を送っている。早苗の不在を埋める様な、
無邪気な後輩田原さんの存在や、情けないけど何処か憎めない所のある、
清水くんなどの面倒を口では嫌がりながらも、何だかんだで相手のペースに乗せられてしまう
若干お人好しな部分が顔を覗かせるのにも好感が持てる。香織にせよ、早苗にせよ、
関わる人や環境などで変わって行くものなんだなぁ、と思春期ならではの戸惑いも含めた展開に大いに惹かれた。
試合面=武士道でも、『勝負に勝って試合に負けた』と感じられるように変化しているのも、
彼女の中に幅と広がりが出来て来ているように感じた。対照的に、
どちらかと言うと東松にいた時は香織の強烈な個性の中和剤的な面が強調されていた早苗に、
強豪校ならではの清濁併せ呑んだ様々な出来事が襲ってくるのだから、
本当に世の中どう転ぶか分かったもんじゃないのだ。2人の再会にしても、
それまでには互いに紆余曲折を経験せずにはいけなくなっている辺りに、
このシリーズの底知れない面白さの秘密があるように感じた。そして秘密の先にはもう1つ、
隠された因縁の対決も待ち構えているのだから、この作者誉田哲也さんの、
筆力には思わず兜を脱いでしまった程だ!。これ以上内容に触れると、
せっかくの伏線のネタバレになってしまいそうなのでこれ以上書きはしないが、
無心になって読みハマる、バツグンの面白さなのは保証致します。是非ともご一読下さいませ。