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なぜ君は絶望と闘えたのか 本村洋の3300日 みんなのレビュー

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みんなのレビュー91件

みんなの評価4.5

評価内訳

91 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

絶望のなかでも奇跡は起きる。

2008/07/21 13:13

37人中、37人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Y.T.Niigata - この投稿者のレビュー一覧を見る

 昨年の暮れ、父が末期癌の告知を受けた。骨と皮になった老人の手を引き、医師の前で水を入れた風船のように膨らんだ下肢をみせられたとき、不覚にも涙がこぼれそうになった。一緒に暮らしながら、私は父の変化に気づかなかった。下肢の浮腫は、娘の無関心さに対する、父の身体から発せられた怒りにとれた。正月休みを返上して治療にあたってくれた医師は言った。「最善の努力をします」。手術後、余命が家族に告げられた。
 それからの半年間、暗闇の中で一本の糸をたぐり寄せ、希望の灯を見い出すような日々が続いた。そんな頃に本書を読んだ。名画を観たあとで席を立つことができなくなるように、名作を読んだあとで言葉を失うように、読み終えたあとで、何もすることができなくなった。そして、改めて考えた。罪とは何か。罰とは何か。法とは何か。死刑とは何か。絶望とは何か。希望とは何か。成長とは何か。生きるとは何か。愛するとは何か。人は何のために生きるのか。人間とは……?
 読み始めた当初、20人の弁護団が語った荒唐無稽な「母胎回忌ストーリー」を思い出し、被害者遺族・本村洋さんの成長と相反する未熟な犯人像を想像した。そして思った。この作品は「司法に挑み、司法と闘い、司法を変えた」青年・本村洋の心の軌跡と成長を描き、「司法に失望してはいけない」「正義をあきらめてはいけない」と鋭く説く作品ではないか、と。しかし、後半になるにつれ、「死」、すなわち「生」を静かに説く作品なのではないかと思い始めた。「生きる」ということは、死ぬほど(本村さんが自殺を考えたほど)苦しむことであり、絶望の淵から立ち上がることであり、逃げないことであり、希望を持ち、使命(仕事)を成し遂げる勇気と信念を持つことであり、命を愛することであり、さらに命を「許す」ことである──。
 命は滑稽で再三、茶番を繰り返す。運命を翻弄する神もまた悪戯を繰り返す……。しかし、被害者遺族・本村洋さんと被害者・弥生さんの母は「死(刑)をもって生きよ」と犯人に問い、その命を許そうとしたのではないか。最終章で筆者は「罪と向き合い、死(生)と真剣に対峙した」犯人を神のように許し、人として初めて認めたのではないか。
「生涯、田舎教師」を口癖にしていた父は、幼くして実父を亡くし、自力で教員免許を取ったせいか、天性の明るさをもつ母とは異なり、何事にも悲観的なところがあった。3年前、義弟を肺癌で失ってからは「医者など信じない」とあからさまに口にし、病の予兆はあっても病院の扉を叩こうとしなかった。
 その父が変わった。「最善の努力をします」と語った医師の加療を素直に受け、医師と看護士の治療に心から頭をさげ、見舞客や食事のあとには「ありがとう」を繰り返し、人が「いい」と勧めることを疑うことなく聞き入れた。父は何かに憑かれたように、自分のなかにある希望の灯を見つめ続けていた。
 癌告知の前から「美しく死ぬことを考えろ」と、ことあるごとに私を諭してきた父。死を考えることは、生を考えること。末期癌と闘う父の姿を目にするにつけ、家族を愛し、愛されることに感謝し、支え、支えられ、暗闇の中でも光を見い出そうとすることこそが生なのだと思わずにはいられない。
 この7月、父は再手術に挑戦し、「根治は絶望的」と一時は見放された現代の医療で甦ることができた。自らの生と併走してくれた医師の治療を100%信頼し、絶望の淵に立たされてもなお、人生に光を見い出そうとした父。その姿に、本村洋さんの姿が重なった。医師や看護士の真摯な姿に、本村さんを支えた弥生さんの母・由利子さん、本村さんのご両親、上司である日高さん、刑事、検察官、裁判官……など、美しい日本人の心をみた。
 生(死)と真摯に向き合えば、絶望のなかでも奇跡は起きる。父は今、医師が示す次の治療を希望の灯として生きている。

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紙の本

人の命を奪うことの罪を痛烈に問う

2009/02/28 17:03

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:うっちー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「人の人生を奪うことが如何に卑劣で許されない行為か。」…このあたり前に思える言葉も、光市母子殺害事件の被害者の夫である本村さんから発せられるとき、どんなに重い言葉となって胸に迫るか。彼は、この言葉の後をこのように続ける。
「人の命を奪ったものは、その命をもって償うしかない。それが社会正義である。司法は社会正義を実現し、社会の健全化に寄与しなければ存在意義がない。」
 一体、司法の場は、これにどのように応えてきたのか。何の罪もなく殺されていった被害者、そして残された遺族の心情を汲み取り、裁判に生かしてきたのか。
 この本に書かれている光市母子殺害事件では、被害者の夫である本村さんは、はじめ、裁判所に遺影を持って入ることすら認められなかったのだという。持ち込みを阻まれ、裁判長に説明を求めても「その義務はない」とはねつけられたのだ。この本は、そうした被害者に対して無情な裁判制度の壁を、ひとつひとつ崩していった、本村さんと彼を支えた周囲の人たちの、その闘いの軌跡である。そして、何より、人が命を見つめ、死生観を構築していく過程を綴ったものである。
 妻と子を殺害された本村さんは、何度も死のうと思いつめた。そこから、立ち直り、彼を支えたのは何だったのか。どんな思いだったのか。彼が中学生時代に罹った難病の話、妻との出会い、家族とのことが綴られる中で、それが明らかになっていく。
 死と向き合うことで、自分の罪とむきあうことができる。殺人を犯し、「死刑」が宣告されることで、初めて人の命を考え、自らの罪に気づき、贖罪の意識がめばえる加害者の姿は、何を問いかけているのか。何が何でも死刑を免れさせようとする弁護団は、人の命への償いをどう考えるのか。この本は、加害者だけが手厚く遇される司法の場への痛烈な批判だ。
 絶望の中から、毅然と立ち上がり、妻と子どもへの思いと、命への強い祈りの気持ちで、歩み続けた本村さん。その姿からは、人が生きていくことの尊さが伝わる。彼が、司法の場での何かを変えたと信じたい。

 追記:2009年2月18日、江東区の女性殺害事件の被告に、無期懲役が下された。加害者の男は、マンションの二部屋隣の女性を猥褻目的で自室に連れ込み殺害、その後遺体を切断した。しかし、東京地裁は、この冷酷残虐な事件を「死刑を選択すべき事案とまではいえない」とし、無期懲役にした。またしても…、である。裁判所は、量刑において、個別の事情とは関わりのない相場主義が幅を利かせるところなのだ。遺影を掲げ傍聴していたという被害者の遺族の無念は、察して余りある。

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紙の本

光市母子殺害事件を描く「なぜ君は絶望と闘えたのか」が問いかけるもの。

2010/07/14 13:07

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 こういうたぐいの本はあまり読まないのだが、このノンフィクション
は珍しく読んでみたいと思った。テレビで幾度となく見た本村さんの姿
とその言動に心を動かされていたからだ。もう一度、あの事件と裁判の
全貌を知るとともに彼の心の軌跡を追ってみたい、死刑判決が下るまで
の9年間、心の支えとなっていたものはいったい何だったのだろう?

 当たり前のことだが、彼もけっして強い人間ではなかった。事件の後、
会社を辞めようとしているし、なんども自ら死のうと思っている。すべ
てに絶望した男をまさに死の淵から救い出したのは周りの人々だった。
退職しようとした彼に「労働も納税もしない人間が社会に訴えても、そ
れはただの負け犬の遠吠えだ。君は、社会人たりなさい」と諭した上司
とのエピソードが特に印象に残った。彼の闘いはけっして孤独な闘いで
はなかったのだ。 

 犯罪被害者、という立場について書かれている部分も心に残った。犯
人側は保護されているのに被害者は最初から実名で報道される。刑事訴
訟法には被害者の権利は書かれておらず、法廷に遺影さえ持ち込めない。
本村さんは犯人とだけではなく、様々なおかしさを正すために国や司法
やマスコミとも闘わざるを得なかった。そういう理不尽なものへの怒り
が彼を強くしたとも言えるだろう。死刑制度について考える意味でも価
値ある一冊だ。

ブログ「声が聞こえたら、きっと探しに行くから」より

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2008/07/23 20:33

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2008/08/24 17:39

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2008/08/24 20:40

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2008/10/05 23:43

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2008/10/18 14:48

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2008/10/19 20:45

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2008/10/20 08:51

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2008/11/09 10:54

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2008/11/11 19:02

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