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わたしを離さないで みんなのレビュー
- カズオ・イシグロ (著), 土屋 政雄 (訳)
- 税込価格:1,078円(9pt)
- 出版社:早川書房
- 発売日:2008/08/01
- 発送可能日:購入できません
文庫 アレックス賞 受賞作品
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高い評価の役に立ったレビュー
62人中、59人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2008/10/22 03:33
へこたれていたあの時にこそ
投稿者:田川ミメイ - この投稿者のレビュー一覧を見る
2006年に出版されたとき、大きな話題を呼んだこの本。そのほとんどが賛辞だったけれど、書評やネットで物語の概要を知るにつれ、あたしはなんだかすっかり怖じ気づいてしまった。ちょうど心身共にへこたれていた頃で、こういう重い内容の本はもっと元気な時に読むべきだろう、と、勝手に決めつけ、それでもこの著者には何かしら惹かれるものがあったので、先に「女たちの遠い夏」を読んでみたりした(この作品もとてもよかった)。が、この夏「わたしを離さないで」が文庫化されたと知り、それを機にようやくこの本を読んだのだった。
物語は、キャシーという31歳の「介護人」の回想から始まっていく。子ども時代を過ごした「へールシャム」での思い出。そう、この小説のほとんどは、イギリスのヘールシャムの私立学校時代のことに費やされており、キャシー、ルース、トミーという、二人の少女と一人の少年の共に過ごした日々がゆっくりと丁寧に描かれている。
ごく親しい友人でありながら(だからこそ)、つまらない言い争いをしてみたり、それを修復しようとして相手の機嫌をとったり、自分だけはあなたの味方だということを誇示してみたり。他の人には言えない悩みをひそかに打ち明けたり、胸の中にしまっていた不安をぶちまけてみたり。三人の関係も交わされる感情も、誰にも覚えがあるようなもので、特別驚くようなものではない。小さなエピソードを積み重ねるようにして語られるその部分だけとってみれば、青春小説にも思えるし、宿舎付きの学校という閉鎖的な世界の中で繰り広げられる学園小説のようでもある。
が、もちろん、それが全てではない。
冒頭の語りの中に出てくる、「介護人」や「提供者」という言葉。それを読んだときに感じた違和感や疑問に対する答えを、語り手であるキャシーはなかなか明かそうとしない。そのせいで読んでいる間中、隠されている何かの存在を強く感じる。キャシー達の子どもらしい姿に懐かしい痛みを感じ、共感すればするほど、そこに忍びよる大きな影を気にせずにはいられない。
その影が正体を露わにするのは、物語も終盤になってからだ。とは言え、その遙か前からおおよその察しはついてしまう。彼女たちが生まれながらに背負っているその影は、現実的に考えれば「そんなことがあって良いのか」と憤りを覚えるようなもので、普通なら自暴自棄になってもおかしくない。それなのに当の子どもたちは、意外にもすんなりとその運命を受け入れてしまっている。不思議なのは、読み手であるこちらも、たしかにそういうものかもしれない、と思ってしまうことだ。
人は親や環境を選んで生まれてくるわけではない。極端なことをいえば、森の中に放りだされた少女が狼を親として育つこともあるように、子どもというのは、生まれたときに置かれた環境を受け入れて育っていく。そこが閉ざされた世界の中であるならよけいに、そこでの常識に従うしかない。自分の身を守るためにも。
「へールシャム」の「先生」達は、ここが特別な「閉ざされた世界」であること、「外の世界」はこことは少し違うということを、少しずつ、それとなく子ども達に伝えていく。さりげなく行なわれるその「教育」のおかげで、生徒達はいつのまにか自分が特異な存在であることを自覚するようになる。まるで知らない単語をひとつ覚えるのと同じように、自然に受け入れていく。小説には、その部分が緻密に根気よく描かれている。そのせいで、当然感じるはずの憤りがうやむやになってく。子ども達と共に馴され、憤るよりもその先に待つものばかりが気になって、やがては、彼女達の人生を「見届けたい」とさえ思うようになる。
もしかしたら、これは実話を元に書かれた小説なのだろうか。読みながら何度かそう思った。そんな訳はないし、そんなことがあってはならないと思うのだが、でもここに描かれているのは、今の時代、そしてこれから先、きっと人類が直面するであろう問題でもある。が、著者はそんな警告ばかりを訴えているわけではない。この本は、ある定めの元に生まれた子どもたちの人生を、キャシーという女性の目を通して描いた静かな小説である。何を思い、何を感じとるかは、ひとえに読み手に委ねられている。
生まれたときから、最終地点を決められている人生。だからといってキャシーは、全てを諦めて放りだしたりはしない。どんな人生であっても、そこには友がいて愛があり歓びもある。自分なりの自分らしい人生を生きていける。読み終えたとき、胸の中に浮かんでいたのは、背筋をまっすぐに伸ばして歩いていくキャシーの後ろ姿だった。この小説を、元気な時じゃないと読めそうにない、と、脇にどけてしまったことを残念に思う。へこたれていたあの時にこそ、静かで強いキャシーに出会うべきだったのかもしれない。
OfficialWebsite mi:media
http://mimei.info/
低い評価の役に立ったレビュー
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2017/06/19 16:54
3流のSFにも及ばず, 2016/7/13
投稿者:Amazon カスタマー - この投稿者のレビュー一覧を見る
注意深い読者ならば、最初の2ページ読んだあたりでこの本の背景を楽に予想できると思います。なので、その予想が如何に裏切られるか?という期待を持って読み通しましたが、何とその(特に目新しくもない)ネタをそのまま最終のオチに持ってきてて、ある意味「ビックリ」です。キャラクターは、ただその背景に流されているだけの主体性のない役割ロボットそのもので、全く感情移入できません。これが純文学仕様というのでしょうか?一見重要そうに掲げているメインテーマについても、正面から語ることは避けていますし、娯楽性から言っても今時のライトノベルや、半世紀も前のSFに劣ってます。こんなものが最高到達点だとすれば、そちらの世界はたいしたことないですね。
紙の本
絶望のその先に
2016/03/05 13:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ポカリちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
キャシーの淡々とした語り口に、はじめは違和感がありました。
悲しみ、苦しみ、様々な欲が希薄なように感じました。
最後まで読み終えても、どこか遠い世界の別の種類の人間の関係ない話、と思いました。
まるで「外の人間」でした。
しかし二度目に読むと、キャシーは最後の時を迎える時、語りつくせない絶望を乗り越えて、強く逞しく命を全うしようという心境に至っていることに気付きます。
そんな心境で自身の半生を振り返っているのです。
そこには人間誰しもが持つ、虚栄心があって当たり前なのです。
彼らも心を持つ人間なのだから…
大きな壁にぶつかったとき、何のために生きているかわからなくなることがあると思います。
どうせ死ぬんだ、がんばって何の意味がある…と。
「使命」を持つ彼らは生まれながらにして「大きな生きる意義」を持っています。
そのことが少しうらやましく思えるのは私だけでしょうか?
恐怖、苦痛、抑圧への想像力が足りないのでしょうか?
カズオ・イシグロはそんな私のような無気力な現代人に「目を覚ませ!」というメッセージを送っているのだと思いました。
「死」に向かって生きていても、夢や希望を持って人生を充実させ、与えられた自らの命を「自分のために」全うしなければならないと強く感じさせてくれる作品でした。
紙の本
読んでから見る
2016/03/01 05:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:minorinori - この投稿者のレビュー一覧を見る
すでにドラマを見ている方には申し訳ないが、この本については先に読むことをお勧めしたい。
おそらくはかなり最初の段階で、作者も明らかに意図的に悪い予言でもするかのように、何気なくキーワードをひそませてくる。それに読者も気付く。しかし、その悪い予感を信じたくない思いの方が強く、物語を読み進める。
作者はこれでもかというくらいに、絶妙のタイミングで悪い予兆を投げかける。それもわずかなばかりのヒントを。
最後にすべてが明らかになる。読者の予想通りだ。絶望的なまでのストーリーのはずであるのに、どこかに安心感が漂う。いかにも英国文学。
最後まで一人称の独白で450ページを読ませる作者の力量に感嘆する。翻訳もうまい。
紙の本
暗く切ない物語
2016/02/27 17:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yujiyuji - この投稿者のレビュー一覧を見る
衝撃的な内容で、出版当時に読んではいましたが、ドラマが始まると知り、読みなおしました。やはり素晴らしい作品はどんな時代・年齢になって読んでも素晴らしいです。この本の世界観をドラマで表現するには、よほど丁寧に撮影していかないと難しいですね。個人的には原作の方が100倍よかったです。
紙の本
運命
2016/02/19 01:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:プリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み始めはあまりよく分からず読んでいました。読み進めるにつれて作品の中に引き込まれていきました。読み終えたあとの気持ちはどのように表現したらいいか分かりませんが、読みごたえのある作品でした。
紙の本
切なさをこえてこそ
2015/09/04 16:35
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しろくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者はこの小説で何を言いたいのか。ひとことで言い表すことは難しいですが、読書中も読後はさらに頭を抱えてしまいました。丁寧な心理描写や極めて慎重に物語を展開している点など、なぜこういう書き方をしたのか。
なるほど作者自身はあらゆる可能性に触手を伸ばし、物語を紡いだのでしょう。あるいは読者に考えるきっかけを与えたかったのかもしれません(その意味でわたしもしっかり作者のフックにひっかかってしまっていますが…)。しかし、そうであれば、ああいう小説の書き方をすることに戸惑いを感じてしまいます。切ないという気持ちより、何か居心地の悪さ、気持ち悪さを抱えてしまいました。爽やかにすぎる。作品の読み方も含めて、読者に多くの宿題を与えてくれる作品、労作であることに違いはありません。
紙の本
さすが世界のイシグロ
2011/08/19 07:12
6人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:renogoo - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画化されたと聞いたので、原作もよんでみた。
良くも悪くもイシグロカズオだった。
もりあがりにかけるといえば、かけるんだけど、これがイシグロ文学といわれれば、はあぁそうですかってかんじ。
淡々とした語りが、さすがブッカー賞作家と言われれば、まあそうですねって納得するしかない。
臓器ファームがテーマとなっているんだから、いくらでも泣きを取れるだろうに、淡々としすぎて、あっけなく終わってしまった。
凡人の私は、泣き所がほしかった。
さすが世界のイシグロ。
ということでこれは映画でみてください。
紙の本
人が生きていくということは、
2023/03/26 15:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:びずん - この投稿者のレビュー一覧を見る
一体どういうことなのだろう。肉体的に健康であれば生きているのか。心はどこにどんな形で残されていくのか。美しいと感じること、嫉妬など心の痛み、身体的な苦しさ、肌で感じる温度。そんなものの全てが一人ひとりにあって、全然違う。違うことがわかるのは、私とあなたが存在しているからなのに。そういう奇跡を多くの人が奇跡と感じていないこの時代のことを表している小説なんだと思った。
紙の本
不思議な小説
2022/10/31 14:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yomogi - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初は読み進みにくい内容だけど読んでいくうちにそういうこと?!と少しずつ理解されていく感じ。とても不思議な小説。
紙の本
子供達の話なのに、暗い。。。
2020/11/30 23:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:chieeee - この投稿者のレビュー一覧を見る
少し前に「約束のネバーランド」の劇場予告版を見て、この小説を思い出し、読みたくなり再読。子供達ばかりを収容した学校のような孤児院のようなところが舞台で、子供の話ながら終始暗い雰囲気が漂う物語。あまり救いがないお話ではあるものの、海外翻訳作としてはかなり読みやすいです。外国物で陥りがちな名前こんがらがりも少なめ。これはいつの時代設定なのでしょうか。昔のような今のような、未来のような…。ネタバレなしで感想を書くのが難しい物語。
紙の本
設定に無理がありすぎて…
2016/02/03 12:21
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Otto - この投稿者のレビュー一覧を見る
日系米国作家カズオ・イシグロ氏の代表作で大変評判の良い
作品だそうですが、あまりにも設定に無理があって、作品世界
に入れませんでした。
臓器移植のためのクローン人間を公に育成することがまかり
通る世界観にはあまりにも無理があります。しかもクローン
人間には生殖能力がない、というご都合主義の非科学的な
設定まであります。
時代設定も遠い未来ならまだしも音楽媒体にカセットテープが
使われているような近未来とも現在ともつかぬ時制の中での
物語ですから余計現実味がありません。
このようなノイズが気になってしまったので、作品が本当に訴え
たかったであろうことまでは辿り着けませんでした。
紙の本
ネタバレ読みたくなかった…
2018/10/05 22:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わらび - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタバレを読み惹かれて読んだのですが、読みはじめてすぐに「ネタバレされとうなかった…!」と呻く羽目になりました。ネタバレしないで読んだら印象また違ったんだろうなー。
ストーリーは、合わない…うーん、合わない…!!
翻訳文はめっちゃ好きです。描写も緻密でヤベエってなります。
でもなー!!三角関係が「なにそれベッタベタのやつじゃん…!」
てなってしまってとても嫌。とても嫌。
いっそ女子二人で百合展開した上での三つ巴になってほしかった。
あとセックス描写も苦手…。
ただ、感情はめちゃくちゃかき乱されて「なにこれヤベエ」ってなります。
でも苦手ー!!だからこそ苦手ーーー!!
知恵袋に「好き嫌いが別れる」とあったけれど、自分は本当に「合わなかった」かもしれないです。
もう一作読んでみて、合う合わない判断してみようかなと思います。
紙の本
テレビドラマを見逃して読み始めるが・・・
2016/11/18 11:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:maki - この投稿者のレビュー一覧を見る
『ネタバレ!』
読み始め、さっぱり話についてけなかったけど。。
臓器移植のためだけのクローン人間のお話でしたか!?
難しい問題だけど、クローンが、感情をもてば、当然な世界。
最後まで読むのが切なくなった。
紙の本
あくまでも個人的感想
2016/02/12 18:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:papanpa - この投稿者のレビュー一覧を見る
だから怒らないでね。
重いとか、哀しいとかいう以前に、文章がつまらなすぎて・・・。
何とか頑張って 1/3 は読んだけどギブアップ。
私には合わなかった。ごめんなさい。あとは、あなたが読んで判断してね。
紙の本
3流のSFにも及ばず, 2016/7/13
2017/06/19 16:54
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Amazon カスタマー - この投稿者のレビュー一覧を見る
注意深い読者ならば、最初の2ページ読んだあたりでこの本の背景を楽に予想できると思います。なので、その予想が如何に裏切られるか?という期待を持って読み通しましたが、何とその(特に目新しくもない)ネタをそのまま最終のオチに持ってきてて、ある意味「ビックリ」です。キャラクターは、ただその背景に流されているだけの主体性のない役割ロボットそのもので、全く感情移入できません。これが純文学仕様というのでしょうか?一見重要そうに掲げているメインテーマについても、正面から語ることは避けていますし、娯楽性から言っても今時のライトノベルや、半世紀も前のSFに劣ってます。こんなものが最高到達点だとすれば、そちらの世界はたいしたことないですね。
紙の本
カズオ・イシグロ
2019/04/19 16:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カツサンド - この投稿者のレビュー一覧を見る
っぽい作品だと思いました。
トミーとキャシーは両想いだと、はっきりとは書かれてないですが、そうですよね?
トミー、とっとと「好きだ。」と言えばいいのに・・・