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紙の本
気になったところなど
2009/05/01 10:41
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は、ケインジアンから経済右派に転向された。その後の変遷は知らないが、本書の論調はそこに軸足をおいているように思える。政府の肥大化、公共事業に対する強い不信感からそれがうかがえる。「むだなダムや高速道路」(これは、もっともだが)だけではなく、コンパクトシティについても大金を要する土建事業ではないかと警戒心を露わにしている。
小さな政府志向とお見受けするので、つい「新自由主義者」のレッテルを貼りたくなってしまうが、単にそうとも決めつけられない面をもっているお方だ。ただし、そのせいか方向感がつかみにくい本になっているように思える。
たとえば、著者は反ケインズ政策により「市場」「競争」「選択の自由」という言葉が甦ったのだとおっしゃる。
これに関して、第6講の『日本型資本主義は家族の敵である』についてだが、「日本型資本主義」とはなにかという定義が明確になされていないのでわかりにくい。コンビニの普及がそれなのか?と思える箇所があるが、もし、それを「日本型資本主義」といっているとしたら腑に落ちない。
著者は《会計革命が家族の変容をもたらした》というので、これが「家族の敵」のことか?と思ったが、そうすると辻褄があわない。会計革命とは、「グローバル・スタンダードの受容」であって「日本型・・・」ではないから。
「家族の敵」がもたらすものとは、食事・食育が家庭から外部化されていき、外食がふえてどんどん家族での団らんや家事が空洞化していくことを指している。それを憂いている。だが、なんでこれが「日本型・・・」のせいになるのか。
従来、「日本型資本主義」として言挙げされていたのは、「男性は終身雇用と年功序列の企業社会に家庭外労働力としてはめこみ、女性は結婚したあと、もしくは最初から家庭内労働力(専業主婦+一部に、内職かパート)として封じて「再生産」を担当させる仕組み」だったと思う。
著者は、「多忙な生活ではあるが、家族の団らんを問い直そう」とこの講を締めくくる。だが、そうであるなら、家庭での料理や団らんという観点では、「日本型・・・」のほうがまだましだったはずだ。
つまり、家族のになう「労務」を外部化させてそのありかたを変容させた、空洞化うんぬんの主因は、むしろ「市場」「競争」「選択の自由」のほうではないか?
長くなるので「日本型・・・」のよしあしは論じないが、一言だけ。もちろん、これには不平等性があり、そのまま復活させればいいとは思わない。
次に、政府の規模といっても、財政だけではなく行政権力による「規制」の問題もある。
経済右派なら、労働規制の緩和や最低賃金の額を低くおさえこむことを支持するのかと思ったが、著者はそうではないようだ(みんながみんなそうではないのだろう)。
派遣社員制度については、超短期の派遣を原則禁止にする、最低賃金を上げる、派遣元会社の取り分をすくなくする、といった規制をすべきだという。
当然ながら、法律を作ればすむという話ではない。管理・監督に予算と人材を割かねば、いくらでも抜け道はつくれる。
制度改革論として目を引いたのは「累積投票制度」だ。《一生を通じて投票できる回数を、例えば85年分と決め、1年に2年分か3年分の投票権をまとめて行使できる制度》という、若者に配慮したユニークなものだ。
しかし、そうするには、全国民の投票履歴をもらさず管理しなければならない。不人気な住基ネットでも使うのだろうか? いずれにしても政府の仕事はふえることになる。
構造改革を進めるためには、十分なセーフティネットが必要だともいう。しかし、なにをもって「十分」であるのかを示さず、一方で政府は非効率的であるとし、さまざまな「ジレンマ」を並べ立てるのだが、どうも煮えきらなく思える。
こういった著者の主張を実現するには、「政府の適切な活動」が欠かせないはずだが、そこをちきんと明言していないのが煮えきらなく思えたゆえんである。
以上、気になったところを指摘してみた。
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