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プルーストとイカ 読書は脳をどのように変えるのか? みんなのレビュー

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みんなのレビュー78件

みんなの評価3.8

評価内訳

73 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

この本そのものが脳に刺激を与える

2008/12/10 17:50

14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る

刺激的な副題どおり、刺激的な、
読書する脳についてのノンフィクション。
読字・言語研究、小児発達学の教授である著者は
またディスレクシア(読字障碍)をもつ子どもの母親でもあります。

本書は3つの内容に分類されます。
第1部はシュメール人のような楔形文字の時代から
ソクラテスまでの初期の読字学習の歴史。
第2部は幼児から大人になるまでの読字による
脳の発達のサイクル。
第3部はディスレクシアのように
字が読めないことの意味と科学的検証。

「読字」を歴史的にも科学的にもアプローチしているので
興味は尽きないのですが、私は読字が脳に及ぼす影響を
おもしろく読みました。

特に英語だけではなく、中国語、日本語での脳の動き、
働きも研究されていて、その比較がおもしろい。
当然、アルファベットのように音声文字と
漢字や仮名のような表意文字を読む時に使われる脳の部位が違う。

英語脳は、左半球の副側前頭領域、背側前頭領域、
側頭‐頭頂領域、後頭-側頭領域を使います。
中国語脳は、より範囲が広く、右半球にも及びます。
聴覚野、視覚野(左右)、角回と後頭‐側頭領域も広い。

日本語脳は、漢字を読むときは中国語と同じ領域と回路を使い、
仮名を読むときはむしろアルファベットを読むときに近いのですが
全く同じというわけではありません。
しかも前頭前野が全く賦活していない。

前頭前野は音韻を司るのですが、
音韻処理しないというのは、日本語の平明さや効率性によるそうです。
分節を気にせずに仮名の音節をマスターしていると本書は言うのですが
自然に行っているので、ピンときません。
どうやら日本人はかなり複雑な脳の使い方をしているようです。
日本語の流暢な外国人はすごいということがわかってきます。

また第2部での、幼児に本を読み聞かせることの大切さを
科学的に検証している点も、読み応えがあります。
5歳までに好きな人の膝の上で本を読んでもらったことが
その後の読字に大きな影響を及ぼすという。
また幼いうちに、ほかの言語を聞かせることの弊害にも触れています。

またソクラテスによる話し言葉と書き言葉の逸話も興味深い。
彼は本を一冊も残していません。
それは「文字」を忌避し「会話」を尊重したためですが
脳の発達に読字が与える影響は大きく
それにより脳の回路は発達しました。

これは現代、ネットの文字によって、読字が変わりつつある
現代にも通じる、古くて新しい命題といえるでしょう。
本に書かれた文字を読む脳と
パソコン上の文字を読む脳はどのように違うのでしょう。
ソクラテスが恐れたように、コミュニケーション手段によって
(対話と読字という違い)脳の発達、
思考の回路が変わってくるでしょう。





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紙の本

なぜ「イカ」なのか。

2009/01/12 22:38

13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る

この本を開く前から気になっていたことは、
この本のタイトルがなぜ『プルーストとイカ』なのかということだった。

表紙のイラストも、雲からそびえる古代文字の石碑に座る女性の背景が
夜空と虹というところまではロマンチックなのに、
三匹のイカが、一気にこのイラストを不思議にしているのだ。

こうまでしてイカが出てくるのだから、彼らは重要参考人にちがいない。

ちなみに原題は、"PROUST and the SQUID : The STORY and SCIENCE of the READING BRAIN"である。

副題を『文字を読む脳の物語と科学』ではなく、
『読書は脳をどのように変えるのか?』にしたのは、正解であったと思う。

副題でも十分なのになぜ主題が必要だったのか。

「プルーストとイカ」は、象徴として、また実際の素材としてなど、二重、三重の意味を持っている。

「プルースト」は、読書を象徴する語として、
「イカ」は、著者の専門である認知神経科学を象徴する語として使われている。

50年代の認知神経科学者達は、イカの長い中枢軸策を使ってニューロンを研究したそうだ。

具体的な素材としては、この本が用いるアプローチの理解のために、
プルーストの著書『読書について』の引用が使われている。

この引用はかなり長く、2ページ以上に及ぶ。(p.21~23.)

この引用をできるだけ早く読むことで、読むことによって読者の中に何が起こったのかを実体験してもらい、
それを解説すると言う手法をとったのだ。

また、イカが象徴しているものは、ディスレクシア研究でもある。

  「文字を読む脳をテーマにした本なら、読字に適さない脳に
   わざわざページを割くこともなかろうにと言われそうだ。
   
   しかし、素早く泳げないイカは、
   それを埋め合わせる方法の学び方についてたくさんのことを教えてくれる。
   
   確かに、素早く泳げないイカは完璧な例とは言い難い。
   
   イカが泳げるのは遺伝子のおかげだし、
   素早く泳げないイカはまず生き残れないからである。
   
   しかし、もし、泳ぎの下手なイカが死なずに済んだだけでなく、
   イカの個体数の5~10パーセントにのぼる子孫を増やし続けたとしたら、
   ハンディをものともせずにそれをうまくやれたのはいったいなぜかと、
   問いただしたくもなるだろう。
   
   読字は遺伝で受け継がれるものではないし、
   読字を習得できない子どもが生き残れないわけでもない。
   
   それより重大なのは、ディスレクシアに関連した遺伝子は
   しぶとく生き残るということである。」
  
   (p.331-332)

「イカ」は彼女の興味の核となるものを象徴してもいるのだ。

この本は、3つの部分から構成されている。

著者は、Part1で「書字の起源の美しさと多様性と変形能力の素晴らしさ」、
Part2で「文字を読む脳の発達と読字取得に至るまでの多様な経路」、
Part3で、「問題と才能を併せ持っているディスレクシアの脳」について触れ、
最後に「徳に関する難しい問題と前途に待ち受けている危険」について言及している。


ディスレクシアを4つの原理と言語によって異なる障害の表れ方に分け、
過去から現在に至るディスレクシア研究を総括しつつ、分類している点も興味深いが、

それだけでなく、なんのためのディスレクシア研究なのかもきちんと言及している。

  「ディスレクシアの研究が持つ唯一最も重要な意味は、
   将来のレオナルドやエジソンの発達を妨げないようにすることではない。
   
   どの子供の潜在能力も見逃さないようにすることである。
   
   ディスレクシアの子どもたちすべてが非凡な才能に恵まれているわけではないが、

   どの子どももその子ならではの潜在能力を持っている。
   
   ところが、私たちがそれをどうやって引き出してやったらよいかわからずにいるせいで、
   見逃してしまっていることがあまりに多いのだ。」
  
  (p.307)

ディスレクシアを取り上げると障害の部分か
逆にずば抜けた才能の部分かのどちらかが極端に取り上げられ、
すごく大変か天才かのどちらかに見られがちである。

でも、大切なのは、個人差が大きいディスレクシアの子たちの潜在能力を見つけて
伸ばしてあげることであると本書は教えてくれる。

かつて口承文化から文字文化への変遷を迎えたとき、
それによって人は従来の能力を失うのではないかと、ソクラテスは危惧したという。

その危惧がオンライン文化を迎えた今こそ現実化しているのではないかという
著者の問題提起については、
ディスレクシアへの支援にITを活用するという立場をとっている者として、
また情報科学を専門とする者として、意識しておきたいと思った。

「より多く」「より速く」押し寄せてきてしまう情報の中から必要なものを選び出していく能力と
かつての読書が培ってきた文字を読みながらじっくり考えて感じる能力とを共存させていく未来を、
どちらからも恩恵を受けている者としては、そんな未来を望みたい。

一般の読者を対象とした著書は初挑戦だったという著者だが、
本書は、注記と参考文献をたくさんつけて原典にたどりつけるようにする
研究論文由来の流儀と本としての魅力を兼ね備えた本になっている。

また、著者がたいへんな読書家であり、
読書という行為自体をとても愛しているということが伝わってくる本でもある。

かなりいろいろな作品や人の言葉を引用していて、
その引用にはどれも引き込まれたし、
その引用している本が読みたくなってしまうのだ。

たとえば、こんな引用があった。

  「ダニエル…おまえが見ている本の一冊一冊、
   一巻一巻に魂が宿っているんだよ。
   
   本を書いた人の魂と、それを読んで、その本を人生の友とし、
   一緒に夢を見る相手として選んだ人たちの魂だ。
   
   一冊の本が人の手から手へとわたるたび、誰かがページに目を走らせるたびに、

   本の精神は育まれ、強くなっていくんだ。」
  
  (p.213)

これは『風の影』という本からの引用だが、参考文献リストがしっかりしているおかげで、
この本をどうしようもなく読みたくなった私はそこに行きつけるというわけだ。

この本は、これから何度も何度も読み返して噛み砕かなければ、
きっと自分のものになった気がしないだろうと思う。
米国人である著者がスルメを知っているかどうか知らないが、
イカというのは、噛めば噛むほど味が出るということだったのかもしれない。


読んでいる本が好きになれそうな人とはきっと気が合うに違いない。

だから、再読が今から楽しみなのだ。

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