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紙の本
秀吉に死を賜った利休。
2008/12/13 11:26
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る
秀吉に死を賜った利休。
物語は、その切腹の直前から始まります。
「美」に対して、どこまでも貪欲だった利休。それに対して、物事のすべてに貪欲だった秀吉。対照的でもある二人には、内側に秘めた燃えるような思いという共通点がありました。
利休の「美」に対する探究心の源は?
それが本書のメインテーマです。
物語は切腹直前から始まり、秀吉との交流、周りの人たちとのかかわりをそれぞれの観点から少しずつ時代をさかのぼって描いていきます。
さかのぼった先は、利休が19際のころ出会った、美しい高麗の女性。この女性との悲恋が、利休の美への探究の原点となっているのです。
本書の中で、驚くべきは茶の湯を経験したことのない人にでも、そのわびさびなど美しさが文書から読み取れるということ。
全編400ページ超のボリュームの本にもかかわらず、すっきり読めます。読者に「美」というのもを強烈に意識させる妙があります。
歴史小説という分野からは完全にはみ出した小説です。
龍.
http://ameblo.jp/12484/
紙の本
確かに侘び寂びにつややかさは必要
2010/05/01 12:22
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
侘び寂びの茶の湯の完成――。
それが利休の一般的な評価です。
しかし、遺された所業、水指に、いわゆる「艶」を感じさせる。
そんな解釈を、時系列をさかのぼりながら
追っていきます。
すでに利休についても、秀吉についても
たくさんの書物が書かれ
本書のような断片的な物語でも、
時代背景も出来事もわかってしまうが故の大技プロットです。
利休、その妻、秀吉、家康、三成、忠興、
利休の弟子や恩師。
彼らが語る利休の姿は、茶の湯に取りつかれた数寄者であり
誰も及ばない、今でいえば名演出家、名プロデューサーでした。
しかも、ひとつひとつの章はセリフうあ
モノローグが中心です。
流れるようなやり取りと語りの中に
戦国時代の緊迫感を秘め、
しかしそこに茶の湯が果たした使命を際立たせています。
秀吉に死を賜った理由も
すでにいろいろなところで書かれていますが
本書では緑釉の香合が引き金となっています。
その香合の由来、利休の想いを探りながら
読者は利休の新鮮な若き姿を読み解くことになります。
第140回(2008年)直木賞受賞作で
同時受賞作の『悼む人』(天童荒太)の話題に隠れてしまいましたが
本作は傑作です。
紙の本
利休の死、そして、美意識の本質に迫る意欲作!!!
2009/01/17 00:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JC - この投稿者のレビュー一覧を見る
『利休の死』については、これまで多くの作品で取り上げられ、
さまざまな解釈が示された結果
芸術家と権力者との対立という基本構造は、周知のものになったものの
反面、何を書いても新鮮さには欠けてしまう―という状況にあります。
本作では、そうした難しい題材に
利休が生涯愛用した香炉と、想い続けた女性を登場させることで
新たな息吹を吹き込むと同時に
朝鮮半島に由来する-とされる利休の美意識の根源に迫る意欲作です。
連作短編集という構成をとっているので、
ある程度の予備知識がある方であれば、
途中の章から読むのもよいかと。
特に『へうげもの』を読んでいる方であれば
古田織部の視座から語られる『ひょうげもの也』は、とても読みはじめやすいと思います。
紙の本
利休にたずねよ
2020/12/21 22:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雨読 - この投稿者のレビュー一覧を見る
山本兼一氏の代表作である。時間をさかのぼる形で書き上げています。
何故利休は死ななければならなかったのか死より大切なものを残したのか考えさせられました。