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紙の本
誰が犯人でもおかしくない
2008/12/19 19:39
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
日暮らし 宮部みゆき 講談社
長かった。ひと月半ぐらいかかって読みました。江戸時代のもの言いとした文章、複雑な登場人物の人間関係を紙に書き落としてみたり、あとからわかったのですが「ぼんくら」同著者の続編という位置付けなどから、理解しながら読み進めることに時間を要しました。いくつかのお話に分かれています。
「おまんま」おでこ(三太郎)は13歳。事件の解決を図っていく。だれかの霊魂がおでこにのり移っている。「三つ目がとおる」手塚治虫著が浮かぶ。おでこ君、君は何者なのだ。
「嫌いの虫」七夕(たなばた)の彦星・織姫のお話みたいです。作者が作者自身を慰めているような作品です。心が落ち着く文章です。なにか諭(さと)されたように静かで穏(おだ)やかになれるリズムをもっています。読み進むにつれて、お恵(けい)さんがかわいそうで悲しくなってくる。
「子盗り鬼」これは現代の事件簿を江戸時代に置き換えたものです。鬼よりも怖いものは「人間」です。この作品はいい。詩の世界です。
「なけなし三昧(ざんまい)」世の中には、瞬間的につじつまのあう嘘をつくことができる人がいるので注意しましょう。
「日暮らし」最後はやっぱり最初の話に戻るわけです。それぞれの人物が生き生きとしています。作者はなぜ江戸時代の設定で作品を制作しようとしたのだろうか。
「日暮らし(承前)」(前の文をうけて続く)と「鬼は外、福は内」のふた項目になりました。本当に入り組んでいるお話です。誰が犯人でもおかしくない。なんとでも経過と理屈をつけられる。
弓之助の推理と判断になってきました。わたしは、以前訪れたことがあるにぎやかな神奈川県川崎大師を思い出しました。料理の場面は、江戸時代の風俗に関する書物を読んでいるようです。男性はお金がたくさん貯まると浮気遊びをすると決まっているわけでもあるまいが、お金がいくらたくさんあってもやさしい気持ちがなければ、家族のだれかは、がまんのあまり気が変になるし、だれかかれかは、血が半分つながりのきょうだいになるし、だれかは嫌気がさして家を出て行ってしまう。
結末に向かってなんだかさみしい話になってきました。(女性を殺害した犯人はだれ?)どんなトリックや心情の披露が用意されているのだろうか。 犯人のめどはつきましたが、動機がわかりません。「うーむ」とうなった、その数ページあとで、弓之助君のかっこよさに惚(ほ)れました。
物語の基礎は「人情」です。今の世の中で、もっとも少なくなったもの、もっともいらないと思われているものです。ラストの10分の1が核で、そこまでの10分の9は何だったのだろう。こういう作品の作り方もあるのか。
紙の本
手慣れた作品です
2011/05/24 12:08
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:初老のファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作者はいくつかのパターンがあり、当たり外れが激しいのですが
この作品は「当たり」でした
人情・日常生活の機微・はいつの時代でも共感を呼び
時代背景というスパイスを利かせればよいものに仕上がります。
・マンガ
・ドラゴンクエストのパクリ
等は作家としての評価を落としています
ぜひともやめていただきたい。
紙の本
宮部みゆき「日暮らし」、時代ミステリーはやっぱりこの人!
2011/03/22 15:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは大好評だった「ぼんくら」の続編。単行本も上下2巻でかなり
分厚いのだけど、文庫は上中下の3巻。ちょっとビビるがおもしろいか
らスラスラ読めちゃう。それにしても、宮部みゆきはうめぇ〜なぁ。
なにがうまいって、まずは人物の造形。本所深川のぼんくら同心・平
四郎、彼の甥で超美形少年の弓之助、記憶力抜群のおでここと三太郎な
ど主役級の人物はもちろんのこと、煮物屋のお徳や植木職人の佐吉など
ワキの重要人物から殺人事件の被害者、犯人に至るまで、本当にキャラ
が立っている。そして、構成の巧みさ。多彩な登場人物をこまやかに書
き分けてドラマを動かす。時には寄り道しながら、時にはぴょんとワー
プまでしてみせて。その手腕は素晴らしい。さらにいえば、人間ドラマ
としての奥深さ。様々な要素が絡み合い、迷宮のような様相を呈しなが
らも、最後は「ここ!」って場所にピタリと着地する。人間の業、生き
るということ、暮らすということ、その核心にぐぐっと迫る。その他に
も描写の的確さ、セリフのおもしろさなど言い出したらきりがない。宮
部みゆき畢竟の時代ミステリー。もちろん「ぼんくら」を先に読む方が
いい。これも文庫で上下2巻、いや、全部読んでもアッという間だから
何の心配もいらない、いらない。
ブログ「声が聞こえたら、きっと探しに行くから」より
紙の本
各話の糸が絡み合いだしてやがて一本の糸になる人間くさく分別くさい時代小説
2009/12/25 18:52
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
「日暮らし」は「ぼんくら」の続編にあたるが、本作だけでも十分に楽しめる内容となっている。
前作で起きた湊屋事件。そして本作品も湊屋に絡んだ内容が中心となっており、前作の事件のあらましも語られている。
しかし、前作「ぼんくら」ではほとんど名前だけしか登場しなかった『葵』が、今作「日暮らし」で重要な位置づけで登場するので、「ぼんくら」「日暮らし」と続けて読んだ方が、より面白い。
「ぼんくら」「日暮らし」に登場する人物たちはこの作品の魅力の一つ。
超美形の弓之助、記憶力がずば抜けている『おでこ』、困っている人がいると面倒を見ずにはいられない『お徳』など、物語の重要な位置づけにあり、これらの人物たちによってホームドラマ的な雰囲気が作られているところなどは、佐藤雅美著の居眠り紋蔵シリーズに通じる暖かさがある。
そんな暖かさを楽しむ一方、平四郎の教訓めいて分別くさい考えに疎ましさを感じ、違和感を覚えた。
物語は、各話に起こる事件がそれぞれバラバラの糸として存在していたものが、話が進むにしたがって徐々に集まりだし、やがて一本のヒモになる、そんな構成になっている。
だから読んでいて面白い。あの話がここにつながるのかと唸ってしまう。
本題『日暮らし』の後半、弓之助が真相の推察を平四郎に伝える場面では、間延びしたような、結論をなかなかださない流れになっているので、少々イライラしてしまう。
この場面は差し迫った状況にあるので、普通なら平四郎は結論を先に聞くのではないか、そしてその後に理由を問うのではないかと感じ、読んでいて結論を先に知りたくて仕方がなかった。
このなかなか進まない場面でクライマックスに駆け上がる勢いが少々落ちてしまった印象を受けた。