紙の本
経営者のみなさん、がんばって
2009/01/15 18:47
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「百年に一度の経済危機」といわれる中、昨年(2007年)下半期から大手企業の業績予想が相次いで下方修正されてきた。
それと歩調を合わさるかのように、新規採用者の内定取消し、非正規雇用者の解雇、大型投資案件の中止と、企業経営者のあわてぶりは目を覆いたくなる。
自らが自身の足元の土をすくい、立てない状況を生み出しているように見える。
むしろ、こういう時代だからこそ、自分たちの立ち居地をもう一度固める必要があるだろうし、自分たちの企業とは何だったのかを再考すべきだろう。
社史研究者である村橋勝子さんによるこの本は、「社史が語る仰天創業記」という副題にあるように、今では日本の名だたる企業に成長した21社の創業エピソードが、それぞれの社史をもとに読み解かれていく。
それは単に企業の美辞麗句でないし、創業時のお涙頂戴物語でもない。
「経営トップはどういう経営戦略を採り、環境変化にどう対応したか、社員たちはどうしたかという、その会社の具体的な企業行動」(5頁)としてまとめられている。
面白いのは、最近しばしば語られる世界恐慌(1929年)の際の企業の行動が、これらの社史の中でいくつか描かれている点だ。
例えば、総合電機メーカーの日立は「そんな不況時代に、(中略)日立に大規模な工場を作り」(228頁)、なおかつ東京に作らなかったのは、関東大震災の教訓から「国是からいっても、工場はなるべく各地に分散するのがよい」(同頁)と、まことに心意気がいい。
またタイヤメーカーブリジストンでは、「(石橋)正二郎は、厳しい不況を逆手にとり」(131頁)、事業を拡大していく。
本書で紹介されている企業は、経済や社会の仕組みがまったく違う時代ゆえの大らかさがあったとはいえ、その優秀性、卓越性ゆえに世界規模の企業体に成長したことは間違いない。
しかし、少なくとも本書で紹介されている多くの創業者や経営者を支えていたものが、単に一企業の浮沈だけの問題ではなかったことは、これらの社史から読み取れる。
先ほどの日立の例だけでなく、多くの企業はこの国の行く末を真剣に考えていた。だから、一時の業績の低迷であわてることもなく、自分の信念を貫けたのだろう。
ぜひ、経営者の皆さんには創業の精神を忘れることなく、この難局を乗り切ってもらいたい。
◆この書評のこぼれ話はblog「ほん☆たす」で。
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こういう本を捜してました!
今、大手企業と呼ばれる会社も創業当初はベンチャー企業。
そんな大手企業の創業時の様子を描いた社史部分を解説。
一つ一つのエピソードは超浅い。
けど、トヨタ・積水ハウス・味の素、、、
かなり盛りだくさんの内容。
個人的にはカゴメの創業話。
ベンチャー企業や工業系企業の創業話はよく聞くけど、
改めて考えてみるとカゴメのビジネスは不思議。
何故トマト?!
キュウリでも梅でも果物でもなく何故トマト??
そんな内容で様々な会社を知れる面白い一冊。
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21社の社史を取り上げ、創業時のエピソードなどを紹介。筆者が元経団連職員、出版元が日経だから、内容がヨイショなのは当然か。
ただ、ビジネスマンがこの本で取り上げられた相手先企業で話のきっかけをつくるには最適かも。
トヨタ、ホンダが工場やテストコースを作る時に農地を避けた、という点は参考になった。
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今は大会社になった各社、立ち上がり時にはさまざまな状況が書かれていてとても面白い。
今の会社も10年ごとに新しい分野に挑戦して、変わってきた。
自分もドラマを作りたい
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創業者達の個性的なこと。その個性が創られた当初の会社に色濃く反映されていて面白い。その個性も大会社になるにつれてだんだん消えていってしまうのだけれど。
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どの会社も創業期というのは面白いですね。
創業者は個性がある。
それに、会社を判断するときの基準になるというか、会社の性格を決めるように思います。スルガ銀行がこんなとは知らんかった。次はこっちに口座を作ろう。
起業家というのは功罪半ばするタイプの人ではあるけど、その部分も含めて、著者には掘り下げてほしくはあったな。「カリスマ」のような凄みはない。
ワコールなんかつっこみどころ満載だと思うけど・・・ ちょっと提灯っぽくなってしまっているのは残念。
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読書録「カイシャ意外史」4
著者 村橋勝子
出版 日本経済新聞社
p226より引用
“このように『日立製作所史』には「主なる
製品と失敗の体験」という一節があり、創業
直後の主な失敗が六つ挙げてある。「カッコ
いい自慢話ばかりで、失敗の歴史が書いてな
い」といわれる社史の世界ではめずらしい
ケースだ。”
目次から抜粋引用
“不遇ニモ負ケズ
トップの個性もさまざま
今も昔も眼のつけどころ
こんな創業、あんな起業
失敗と苦労の連続”
社史研究家である著者による、誰もが知る
有名企業の社史を紹介する一冊。
味の素からトヨタまで、日本以外でも知ら
れているであろう企業の歴史の、面白い部分
が記されています。
上記の引用は、日立製作所の社史を紹介す
る項での一節。成功したことよりも、失敗し
たことをしっかり覚えておくことで、より一
層損失を無くすことが出来るのかもしれませ
ん。
企業が出来るのは、その時節によるものも
大きいのでしょうが、やはり人の強い意志が
あって動き出すものなのですね。
大学を出て良い企業に就職するのも大事です
が、大学を卒業する実力があるのであれば、
自分で起業して欲しいと思います。
ーーーーー
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文字通り意外なエピソードに「へぇ〜」という、これ自体は肩のこらない読み物であるが、それよりも著者は、社史というものの面白さを知ってほしいという訴えが真意なのだろう。確かに、産業史・文化史のみならず、その表情や文体・まとめ方など、なるほどさまざまな側面で、研究材料として大変面白そうである。「もっと社史を読んでみませんか?」という著者の熱心な呼びかけに賛同して、これから機会があったら手に取ってみるとするか。
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とても身近なあの会社の歴史、へえ知らなかったと思うことばかり。
コーポレートスローガンを考えるのに参考になりました。
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ブリヂストンは足袋→ゴム靴→タイヤと主力製品を変化、日立製作所は予算に工場費をこっそり紛れ込ませたことが始まり、カゴメは主婦の個人株主が多い。
特にびっくりしたのはイムラ封筒。売上高220億の8割が封筒事業。1日5000万円も封筒売ってんの??となった。
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大手日本企業21社の社史から、主に創業時を抜き出し、その苦労や仰天エピソードなどを紹介する。
紹介されている企業の多くが、当時海外製品しか日本市場になかった所へ国産品として参入したのが発祥になっている。見よう見まねで必死に食らいついたり、創業者の尋常でないバイタリティーに支えられて成功を掴んでいる。
本書は2008年に書かれており、紹介された企業の中には何社か、その後業績不振から外資の傘下になったり、不祥事で世を騒がせてしまった企業もある。図らずも歴史のある企業の栄枯盛衰が伺えた。