紙の本
すごく良い本だが、当事者の思うままに任せていてはけないということを再確認した。自分が更正したのに他人は更正できないと思う、その根拠は何だ?と言って小一時間以上問いつめてみたい。サイテーな著者だ。だが本は最高だ。
2011/02/28 23:44
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちひ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は、かつて二人を殺害し、現在は無期懲役で服役中。なぜ殺し、裁判はどのように行われ、自分の犯した罪について以前はどのように思っていて、今はどのように思っているか。前半ではそういったことが著者の半生記とともに語られる。
後半は、刑務所の中から周囲を観察し、自分と同じ「殺人」で服役中の他者から「検察調べ」と揶揄されながらも話を聞き、彼らがどのように自分の罪と向かい合っているか・向かい合っていないか、これからどうしていきたいと考えているかなどを、特殊な立場と観点から取材し、まとめてくれている。
著者は大変な読書家で、頭脳も著しく明晰、分析力や表現力にも優れているので、読んでいて興味深く面白い。以前は自身の無謬性を疑っていなかった著者も、裁判でのある事柄がまず一つめの、そして服役中に刑務官から指摘された内容が二つ目の直接的な転機となってはたらいて、自身の罪と向かい合うようになり、つまりは現在のところ「更正」の道を着実に歩んでいる(ようにわたしには見える)。
後半の、他の服役者を観察・分析し、意見を述べている箇所も大部分は首肯できるのだが、絶対に変わるはずのなかった著者自身が更正の道を歩んでいる(ようにわたしには見える)にも拘わらず、他の服役者の更正が非常に困難である、いや無理である、的に書いているのはどうなのか。
『歎異抄』に紹介される親鸞聖人の言葉に「さるべき業縁のもよおさば、いかなる振る舞いもすべし」がある。環境と状況と縁のはたらきで人はどんな振る舞いもするものだ、というのが原意であり、これは多くの場合「わたしだって罪を犯すかも知れない」という方向で解釈される。
しかしこれは、逆に言えば、絶対に変わらないように思えていたわたし自身が(他者もだが)、環境と状況、いろいろな縁がはたらけば変わっていけるということでもある。
だから、著者が他者を観察して更正が不可能だと論じるのを見て、少し寂しい気分になる。
刑務所に服役している当事者の立場からは「犯罪行為の報告・討議・研究をするためのたまり場となっている刑務所の環境を一刻も早く改善しなければならない。現状では教育も更正も教誨も十分に機能しているとは言い難い。」と提言することは、恐らく「おこがましい」から難しいのかもしれない。であるならば、美達大和という得難き当事者の意見も参考にしながら、わたしたち、さしあたって今は刑務所のソトにいるにんげんは、「人は変われる。一緒なら。」に則り、更正の道を貪欲に探っていくべきだと思う。
本書の半年後に出た、河合幹雄『日本の殺人』(ちくま新書)の第三章が「ひとを殺すとはどういうことか」であり、本全体も、この本への回答を目指しているように感じられる。
紙の本
考えさせられる
2009/02/02 03:13
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:由美 - この投稿者のレビュー一覧を見る
殺人犯から見た殺人犯の模様を細かく書いています。読んでいるうちに引き込まれ、人間の欲望や衝動、モラルや理性についても自然と改めて考えている自分が居ました。
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立ち読み。現役受刑者による自己の犯罪や性格の分析、また同囚たちの行動についての手記。明晰で論理性の高い文章は心をゆさぶる。
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人を殺すとはどういうことかに関しては、著者の考えがわかるが、それ以上に刑務所の中での殺人者がどのような心境でいるのかというのに驚いた。反省する人ばかりでないのはわかっていたが、ここまで反省していないとは。この人達がまた一般社会に出ることを考えると怖い。
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本文中で著者が述べているように,かなり偏ったサンプル・見方かもしれないし,著者本人にもかなりの偏りを感じるところはある。それでも,実際の殺人者から見た,殺人犯の分析というのもなかなか面白い。
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現在自らも服役中の身である著者ならではの、受刑者たちの生の声。
被害者が望む「罪の償い方」と、加害者が認識しているそれとのズレが甚だしい。
これでは何の為の刑務所なのか、何の為に刑に処しているのか・・・読んでいてむなしくなった。
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人を殺してしまう心理に興味があって読んだ。
気質とヤクザなど立場の違いはあるが、長期囚の実際の姿を知ることができるという点では
とても参考になった。
殺人犯への矯正の在り方についても考えさせられる。
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著者は2つの殺人を犯し、無期懲役刑に服している。
「一番以外は無、約束は最後まで貫徹」とする強烈な個性の父親の元での育成は、天才的な知能と冷徹さのゆがんだ価値観を持つ人格となり、命を奪っても約束をまもれなかったのだから・・と罪の意識はない。
しかし、公判中に(それまで彼は有能で常に孤高のトップであり、対等にコミュニケーションするということを体験していなかったのだが・・)被害者の母親の心情を思いやる心が突然芽生え弁護士らとの交流から人間らしい反省や心遣いが生まれる・・といった前半が自分自身の話。まるで任侠ものの映画の中の話のようだ。
成金の贅沢な暮らし、母の家出で家族崩壊、小学生で自分の給食費を捻出するほどに生活力旺盛というか知能優秀・・。金儲けも上手いが冷徹・・。
後半は殺人犯ばかりの刑務所で見た受刑囚たちの観察記。
ほとんどの受刑者は罪の意識などない反省や更生も無理と思える人が多いが、中には畏敬の念を覚えるヤクザもいる。
本当に人間とはさまざまな諸相を帯びた生き物であるし、その成育歴や環境が人を作っていることがわかり、肌寒い思いになる。これから社会はますます悪人ランドの気配が濃厚になりそうだ。
タイトルの「人を殺すとはどういうことか」ということより、「人を殺した人はどんな人たちなのか」ではなかろうか。
社会で豪奢な生活をしてきた人が、堀の中でつかのまに感じる幸福感は、支給される小さなケーキのおいしさとか、とてもシンプルなものだというところにはホッとしたが、強烈な書であることは間違いない。
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実際に2件の殺人事件をおこして服役中の人間が獄中から殺人犯の心境を書いてます。
作者は自分でも言うように知能が高くてクールで論理的な人間やと思いますがこれを読むとやっぱり常人とは違うと感じます。
いろんな殺人者が出てきますがこれを読む限りにおいては日本の刑務所は犯罪者が更正する施設としては機能してないようです。
なんと言っていいかよくわかりませんが良い悪い関係なしで興味深く読めました。
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知能も高く地位も収入もありながら、自分勝手な理由だけで人を殺して無期懲役に服する著者に、尊敬も同情もできないけれど、真摯に語られる言葉の数々は傾聴に値すると思う。
著者と同様の刑に服する囚人達の歪んだ人間性と反省の無さを知るにつれ、やはり死刑は必要だと思わざるをえない。少なくとも著者が提案する「執行猶予付きの死刑」は有効ではないだろうか。
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装幀:新潮社装幀室
刑務所に入っている人=罪を犯したことを反省している、ではないことだということが分かった。
信じたくはないのだけれど、これが現実。
ふっと『Lifers』という映画を思い出した。
アメリカにおける犯罪者の更正プログラム。
日本の刑期を決めてその間刑務所に閉じ込める、だけではなくもう一歩踏み込んだ「何か」が必要な時期に来ているのかもしれない。
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・二件の殺人を犯したと言う無期懲役囚が刑務所内で執筆したという本。
・著者は確かに頭脳明晰で、垣間見える知識なんかも本で覚えた俄知識のレベルをはるかに超えてる。こう言う人間が疑い無く殺人を犯したって事そのものが興味深い。
・人を殺すと言うのがどう言うことが か、と言うよりも、人を殺してしまったらその後人間はどうなるのか、と言う内容に近い。本人がどう反省や後悔を深めていったのかと、刑務所内の他の殺人者がどう感じているかについて書かれてる。
・人を殺すような人間には何かが欠けてたり異なったりするだろう、と言うのが一般のイメージだけど、それをはるかに超えた殺人者達の姿には驚くばかり。
・刑務所の矯正機関としてのシステムに不安を感じる内容でもあった。
(八王子図書館にて借る)
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著者は、2件の殺人事件を起こし、現在LB刑務所(LはLong、Bは犯罪の重さの分類記号)で現在も服役中である。
著者の犯行までの経緯、犯行前後の心境、刑務所の生活などが書かれている。
また、LB刑務所の服役している人を堅気8人、ヤクザ4人、計12人紹介している。著者の評価を信じれば、ヤクザの方がよほどまとものように感じる。
内容が内容なので、具体的には書けないが、読む価値はあると思う。
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話が通用する、比較的反省のある人に偏ってしまったと著者が綴っているがそれでも十分今の刑務所の状況とかどういう風に罪の意識を感じているのかが細かく書かれており興味深かった。
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そこらへんの小説家よりもモノを知り、頭が良いんだなと思える殺人者が2件の殺人、獄中の様子、心情を書いたノンフィクション作品ですが、これは賛否両論あるでしょう。被害者の気持ちを考えるととても読めるものじゃないですし、一般的な生活をしているような人にはわからない殺人を犯した加害者の心情を読むなんて。読み終えても悶々とするし、そこで形に残るような理解はないけれど、殺人は何も生まないし、死刑はあってもいいんじゃないかと考えた。まだまだ浅いので今後熟慮したい。