紙の本
死に水をとられるならこんな葬儀社に・・・
2009/05/28 08:38
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨年アカデミー賞を受賞した映画『おくりびと』は死体を棺に納めるまでの支度をする納棺士を描いたニューマンドラマ。そして今ドラマでも現実でも話題になっているのが婚活。冠婚総裁とひとくくりにされてしまうこの正反対の人生における二つの一大イベントだが、ブームになりもてはやされるのは結婚だけである。それはそうだ、婚活しろとは言えても葬活・・・死ねとは言えない。(そんなことを言ったら自殺をしろ、安楽死をしろといっているようなもんだ。)
出来ることなら死にたくないのが人情、だからどうしても葬儀屋に死を感じてしまうし、霊柩車か黒鴉を見るような目を向けてしまう。
ホテルさながらの綺麗な建物を構えセレモニーと名を変えようとも、彼ら葬儀社には笑いも華やかさも許されることは無いし、終始笑顔のブライダルとは逆に無表情かつ沈黙を守ってひたすら式を進行するだけが許される。
混乱している遺族には下手をすれば強欲同業社や悲しみに漬け込む詐欺が舞い込むし、遺産相続や生前の諍い等があれば目を覆いたくなるような場面にも遭遇する、それでも葬儀者はひたすら式を、時間を推し進めなければならない。
小さいながらも地元密着で良心的な葬儀を執り行う葬儀社『セレモニー黒真珠』で働く若手3人も、そんな苦労を潜り抜けるスタッフだ。
家庭に恵まれず本気で愛した不倫相手との結婚も成就せず、ある目的のために派遣社員として入社した薄幸女21歳・妹尾。
幼少から葬儀屋に憧れた変わり者、念願かなって入社するも「見えてしまう」体質のため苦労が絶えないメガネ男子26歳・木崎。
恋愛より仕事を選んだために男に捨られ未練を残しつつ結婚コーディネータから葬儀社へ180度転職して幾年月。老け顔30歳のベテラン女・笹島。
「どうして、よりによってそんな職に?」
人の死を扱う仕事はけして良い顔をされないけれど、この3人は三者三様、全く違う角度の動機を持っている。(もちろん現実の葬儀社スタッフだって人間らしい様々な事情を抱えているに違いない)
妹尾は不倫相手の死に水を取るという極めて個人的な目的のためだし、木崎は単純に葬儀フェチ。笹島だって男に捨てられた反動みたいなもんだ。それでも彼らは一つ一つの死と旅立ちに真摯に向かい合っている。
彼らが「お客様」と出会うのはいつだってまずは死ありき。しかも婚活のように「これから頑張っていきましょう」でも「式の日取りとドレスは・・・」なんて気の長い話でもない、せいぜい3.4日のうちにすべての段取りが済んでしまうお別れと旅立ちonlyの出会いなのだ。だからなのだろう、彼らが一生懸命なのは。
私もいつか誰かに看取られ誰かの手で葬られるのだろう・・・その時は彼らのような素敵なスタッフの手で、素敵な葬儀を挙げて欲しい。
結婚式のように愛する人たちの中で。
そして、お経は生きている人、残された人のためにあげるのだと聞いたことがある。きっと葬式もまた同じなのだ。
遠い先かもしれない私の死が、残された愛する人々の一歩になることを、願いたい。
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この話のイラストがとても好きなイラストレーターさんのもの。
書いているのは花宵道中も書いた宮木さんということで、ダ・ヴィンチ掲載されているときからちょっと気になっていた。
葬儀屋さんのお話だけど、あまり重くもならずさらっと読めた。
花宵ほどズドンとくることもなく、あっさりめ。
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艶っぽい作品が多い作家さんですが、
こういう作品も書けるのかと感心致しました。
葬儀屋で働く男女3人のお話。
艶っぽい話は全くと言っていいほどありませんが
面白くて一気に読めちゃいました。
この作品、漫画にしてもいいかと思います。
その描写が浮かんできたくらいですからw
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2009.04
雑誌連載の時から好きだった。たんたんとした日常が、このまま続いて行く様子をみたいなぁ。
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「笑って泣ける!」というキャッチでしたが、本当でした。
ラブコメ、ということで救いのあるお話だったのが良かったです。
切ない叶わない物語も良いですが、こういうカラリとしたものも良いと思います。
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「夜の十一時を過ぎたファミレスはなんとなく夜の海に似てる(中略)意味のない静かなざわめきが暗い潮騒のように思える。」
(2009.6)
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宮木あや子らしくない、軽妙な感じ。
でもこういう話も、悪くない。
葬儀に関わり、死と向き合っていく人々。なのにちっとも湿っぽくないのは、主人公を始めとする個性的な登場人物があってこそ。
しんみりと、深く重い作品ばかりだっただけに、新鮮。
でもやっぱり、私は彼女のガツンとくる時代小説が恋しい。
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舞台が「葬儀屋」であるという異様さと、表紙絵の版画っぽいレトロさと、
手に取った本屋の「イチオシ」という宣伝文句に、衝動買いをする。
宮木あや子作品は、以前【花宵道中】を手に取った事がある。
切なさと爽やかさと官能が繊細に絡み合って、
読み心地を柔らかく優しくしてくれた。
本作を読んで、この作家の文章の心地よさを再認するに至る。
葬儀屋を営むちょっと不思議なヒトたちと、
彼らにまつわる終わりと始まりの幾つかの大切なお話。
切なさと爽やかさとが細やかに描かれるのは相変わらず、
最後に小さくとも希望を灯してくれるのが、
この作家の文章の心地よさの秘密なのかも知れない。
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読み終わった日:2009.08.02
他の作品にくらべて軽いタッチで読みやすい。
葬儀会社で働く主人公たち自身の話。
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「おくりびと」あやかり路線かと思い、手に取るまでに時間がかかった本。読んでみると葬儀社で働く人々のほうに主眼がおかれたストーリーだった。
人物の背景は必ずしも明るくないのだが、印象は意外に明るい。
ワカマツカオリの挿絵が雰囲気を出している。
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宮木さんの新境地?これまでと比べて軽妙な印象のある一冊。
二十代なのに四十代にも見える老成した雰囲気を持つ女、笹島。幼い頃から葬儀にまつわるものが好きという変わった趣味の持ち主、銀縁メガネのクールなモテ男の木崎。両親に恵まれず父親の借金を背負っていた苦労人の21歳、妹尾。
地域密着型の小さな葬儀社セレモニー黒真珠で働く彼らの日々が、一話ごとに視点を替えて語られていく。
登場人物はすごく個性的なんだけど、ちょっと生かしきれてなかったんじゃないかなぁ。それぞれの個性を面白く魅力的に書ききれてないような。
上記の理由で、異なる視点で語られる点も全体的に散漫な印象。
軽いノリでいこうとしたところが中途半端な感じになっちゃったのかも。
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『花宵道中』の物語と描写の濃厚さに
びっくり!したのが
印象深い宮木さんの本、2作目です。
葬儀会社に勤める3人が主人公。
何かしらドラマがあるのですね・・・
でも、今回の本は軽めな感じで読みやすい。
と思ったら、雑誌「ダ・ヴィンチ」で連載してたのを
まとめた本だった模様。
また、宮木さんの本読みたい。
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「誇り高い」とか「気高い」って言葉がよく似合う本だ。
悲しいことを悲劇に酔わず、しかし茶化さずにまっすぐに書く。
他人とのズレや理解されないことを、さりげないエピソードで表すのが抜群にうまい。
真面目な場面でも格好つかないことってあるよねっていう、ユーモアを交えて。
一ページ目から盛大に吹きました。
全編に貫かれる真っ当さが快い。
挿画も綺麗。
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<内容>生きてるうちに、言えればよかったのだけど…。町の葬儀屋「セレモニー黒真珠」を舞台に、アラサー女子・笹島、メガネ男子・木崎、謎の新人女子・妹尾が織り成す、ドラマティック+ハートウォーミングストーリー。
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「セレモニー黒真珠」の社員一人ひとりのエピソードが、葬儀屋という仕事を通じてえがかれている。
いろんな「恋」「愛」の話がたくさんあって、一気に読んでしまった。