紙の本
狐や海坊主を信じていた時代のミステリー
2009/10/03 12:25
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
北村薫と宮部みゆきによる『半七捕物帳』選集2冊目。
『読んで「半七!」』よりもっとおもしろい選集になっています。
これで打ち止めなのは残念です。
『半七』はご存知のように、明治20年代に、
江戸時代の事件を半七親分が昔語りをするのですが
今回は、「狐」「海坊主」「蛇の化身」など
昔の人が信じていた不可解な生き物の話が
多いように感じられました。
不可解な生き物を信じていた日本人がいた時代と
明治のやや科学が発達した時代と、
それがミステリーの古典となった現代。
3つの時代がラインで結ばれています。
狐や蛇の化身の仕業として、不思議なことを不思議にせず、
半七の謎ときは、近代的な論理に基づいています。
人間が必ず関わっていて、悪さをしています。
こうしてすべてのことが明らかにされる時代の
幕開けを感じるのです。
それは日本のミステリーの幕開けでもありました。
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江戸の末期、不思議な難事件あり、岡っ引きの半七が見事な推理で真犯人を暴く。短編11作品の傑作選だ。時代小説なので語り口調など、すんなり入ってこないところは残念ながらある。それはそれとしても、この時代のふいんきは十二分に楽しめる。
あとがきの解説対談に宮部、北村両氏がコメントしていが、全編にわたりお話に艶がある、色っぽいのだ。これはわたしも感じる、言葉一つとって見てもそうだ、「虐待」「拷問」ではなにやら西洋っぽいが「折檻」ならば受ける感じが大分違ってくる。何がしかの手心が加えられる期待も持てるというものだ(笑
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満足した。3、4、5巻と続いて結局全集になっても喜んで買いたい。しかしそれではアンソロジーの意味がなくなってしまうだろう。
それにしても江戸っ子の啖呵は粋だね。東京の言葉はいつからこんなつまらない標準語になってしまったんだろう。がっかり。
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一見さんも常連さんも楽しめる、「半七捕物帳」の傑作選!後篇も名作ぞろいで、解説対談にもますます熱が入ります。宮部みゆきに、こんな悪者を書いてみたいと言わしめた罪人もついに登場。
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森博嗣の小説だったか。
トリックを考えようとする西之園が、トリックを全く考えようとしない警察にどうしてですか?って聞いたら、はははトリックなんて犯人を捕まえてから絞り上げて聞けばすむじゃないですか、なんて話があったけど、そんな感じ。
ま、実際はそうだわな。
トリックどころか事件の流れもよくわからないが怪しい動きをしているやつがいたらとっ捕まえて絞り上げる。そっから情報がでて後はいもづる的な事件がちらほら。
そこらへんもまた捕物帖なんだろうな。
上下と読んで面白かったので全巻読もうかと思う。全6巻だし、すでに2巻分くらい読んでるしね。
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風俗考証の資料としての価値が認められているだけあって、江戸時代の情景描写がすごくいい。セリフや掛け合いも小気味いい。こういういい雰囲気の文章を読んでると、嬉しくなってくる。
巻末の北村薫、宮部みゆきの解説もいいし、現代では知られていないだろう単語に解説が付いてるのもいいので、全集よりこのシリーズから読み始めるとよいのではなかろうか。
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江戸と、近代文明にやっと入ったばかりの明治中期を行ったり来たりする場面転換が絶妙です。又、時々語られるオカルト的な話の持つ世界観が独特でいい味出してますね。本作は傑作選ですが、シリーズを一から揃えたくなります。
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北村薫 宮部みゆき 編
岡本綺堂 「 半七捕物帳 傑作選 2 」
二転三転するような推理小説というよりは、大衆演劇みたいな感じ。半七捕物帳が秀逸なのは、時代再現性にあると思う。
事件の背景は 怪談、迷信、流行病、敵討、道楽、心中など 時代に即しており
風俗や情景の描写は細かく、その時代の罪の軽重の基準や幕末の不穏な空気なども感じることができる
註や解説も充実し、歴史小説初心者としては読みやすい。実際起きた事件もありそう。武江年表と付き合わせてみたい。