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17 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

「私」だからこそ起こる物語はきっと誰にでもあるはず

2009/12/01 23:11

8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る

魔女といえば、
とんがり帽子をかぶり、ほうきに乗って、お供はしゃべる黒ねこ、
大きな鍋で怪しい料理を作ったり、薬草を煎じたり、魔法の本を持っていたり・・・。

特に、魔女に詳しいわけではなくても、これくらいのイメージはあるだろう。

魔女裁判の時代にまでさかのぼると、
魔女のレッテルを貼られて殺された女性たちが大勢いたという
悲惨な歴史がうかびあがってくるのだが、
この歴史を語っているもの意外は、お話の魔女に悲壮感はないように思う。

童話の残忍な魔女にしてもどこかユーモラスなところがあるのだ。

魔女はいつから今のようなイメージになったのか・・・。

追求するとそれはそれで楽しそうだが、それは詳しい方に譲ることにしよう。

本書は、ひょんなことから、
魔女のほうきと黒ねこを手に入れることになった
10歳の少女・ロージーの夏休みの物語だ。

舞台はイギリスなので、それほど「夏」という感じではないのだが、
夏休みの読書の方が、主人公と同じ時間を生きている感じがして、
気分は盛り上がる、かもしれない。

ところで、女の子とほうきと黒ねこから想起されるのは、『魔女の宅急便』である。

魔女の宅急便のキキは、全6巻の世界の中で、少しずつ少女から大人に成長していくが、
本書はロージーのひと夏の冒険がテーマである。

が、ロージーの日常は冒険の前と後では明らかに変わっているのだ。

本書の特徴としてひとつ挙げられるが、
原書の出版年が1955年と思いの外古いことである。

舞台の設定上、この作品は、この時代でなければならない。

というのは、お金の単位が現在とはもちろん、日本語版翻訳時(旧版の1985年)とは異なり、
1961年に廃止されてしまった当時のお金・ファージング青銅貨(ビクトリア女王が描かれている。)でなければならないのだ。

それが黒ねこカーボネルとロージーと結びつけることになるのだ。

児童文学の世界の主人公に大きく影響するのは、その時代もあるが、
大きいのがその家の経済状況である。

その子がお金持ちのうちの子か貧乏なうちの子かで、
まったく住む世界が変わるし、展開される物語も変わる。

そして、その経済状況の差に子どもたちは敏感で、
生活ばかりではなく性格にも大きく影響している。

冒頭でも、ロージーは、自分と他の子の境遇の差をひしひしと感じている。

夏休みにどこか行く場所がある子どもたちに、どこに行くのかと聞かれたのである。

もちろん、彼女がどこにも行くことがないことを知っていてである。

しかも子ども同士でその行く場所の格差を知っていて、比べあったりするのだ!

だが、この物語はロージーにだからこそ、起こったのだ。

父亡き後、縫い物で生計を支える母を助けるために、
夏休みの間、お掃除の仕事でもしよう、
そのためにはほうきを買わなくては
と思ってフェアファックス市(いち)に出かけるのだから。

そこで、ほうきと黒ねこを売り払い、
堅気になろうとしていた魔女・キャントリップ
(そのときのロージーにはただの変なおばあさんにしか見えない。)から
古いほうきを黒ねこ付きで、買ってしまうことになるのだ。

黒ねこは欲しかったのだが、ほうきはあんまりにぼろい。

がっかりしていると、
「きみは、きみが考えてるより、いい買いものをしたんだよ」と声が聞こえ・・・。

黒ねこは、自らを王子・カーボネルと名乗り、身の上を語るのだった。

キャントリップによってかけられた「音なしの魔法」によって、
黒ねこは、よびよせのおまじないを唱えられると
どこにいても何をしていても、駆けつけなければならない。

ロージーは、カーボネルが自らの国に帰れるように、
ほうきのほかに、大釜、魔女の帽子を手に入れ、
「音なしの魔法」を解明するための冒険をすることになる。

カーボネルは、自らが正当に王位を継ぐものというプライドを持っているため、
やや尊大なものの言い方をするが、基本的にねこである。

のどの下を上手になでてもらえば、ごろごろするし、
ご飯が上等だと大感激する。

そのギャップがかわいらしい。

カーボネルの王国、つまりは、ねこの視点で見た街だが、
実は人間が見えていないだけで、それが、あるのだということが、
後半、視点を変えた描写で浮き上がってくるところもおもしろい。

さて、本書は、ねこ好きの気持ちを大いに喜ばせてくれるのだが、
もうひとつの好きを満たしてくれた。

それは、呪文を見るとわくわくして覚えてたくなってしまう気持ちである。

使う場面は今のところなさそうなのだが、
森は生きているの呪文「ころがれころがれ指輪よ~」が
今も私の記憶の隅で眠っていたりするのである。

翻訳でも転がしやすかったあの呪文は、二通りの訳を持つが、
きちんと唱えることを前提に訳されたものだったのだろう。

残念ながら、本書の呪文は、翻訳調の感が否めないところもあるが、
原文では、韻を踏んでいたりするのではないだろうか。

ちなみに唱えやすかったのは、よびよせのおまじない。

これはリズムがよかった。

  コウモリと茶色のフクロウよ、
  シュロ草とコイナスの根よ、
  そのふしぎな力でよびよせよ!
  小枝のほうきの、黒いどれいを、
  すばやく、音もなく!

「小枝のほうきの、黒いどれい」とは思っていないが、
(ロージーもこのくだりは気に入っていなかった。)
唱えたら黒ねこが来ないかな、と思ってみたりしながら、
また呪文に記憶容量を使ってしまったのだった。

さて、この冒険に続編はない。

それが完全にそれが終わったことを示す、象徴的な出来事が起こるからだ。

彼女自身が行ったこともあれば、意図していなかったのに起こってしまったこともある。

彼女は、冒険の前よりも確かに良くなった「日常」の中を生きていかなくてはならない。

だが、その日常には、冒険の置き土産が確かに残り、それが心を和ませてくれるのだ。

不公平だ、不平等だと思うことは、
たくさんたくさんあるけれど、

自分にはなくて、人にはあるものがうらやましくてしょうがないことだって、
たくさんたくさんあるけれど、

「私」だからこそ起こる物語はきっと誰にでもあるはずだ。

それを味わって生きてみよう。

そうすれば、あなたのところにしかこない魔法に
きっと気づくことができるはずだ。

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