紙の本
ノブくん、がんばれー!
2011/07/04 21:02
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のちもち - この投稿者のレビュー一覧を見る
全盲で生まれたピアニスト、辻井伸行さんの、生まれてからピアノに興味を持って、ステージに立つまで、その間の「母親」の心情を語った内容です。なんらかの原因により一度も「見る」ことができない伸行さん、自分のお子様がそのような状態で世に出てきたことに対する母親の苦悩、葛藤、努力...自ら、そして自分の周りに障害がある方がいない自分には、その苦悩を追体験することはできません。間違いなく、自分の環境から想像する世界を超えたものがあるから...もちろんわが子への愛情は変わらないにしても、相当の苦悩をされたことは間違いないでしょう。
そんな中で、伸行さんはピアノ、音に対する興味を示します。著者であるいつ子さんは、そこに可能性を見出します。母親のその「思い」によって、音楽家への道を歩み始めた伸行さんの周りに、素敵な人が集まってきます。音楽の才能を見出し、それを昇華させるのに、周りの第一線で活躍する「先生」たちが彼の後押しをするように。これは偶然ではけしてない。いつ子さんの「愛」「思い」これらが引き寄せたのでしょう。そしてその人たちと共に、なによりも伸行さんとともに、「成長」していく母親がそこにいます。バイオリンを共に習い始める姿、伸行さんの演奏に合わせて子供向けの「朗読」を始めた元アナウンサーであるいつ子さん。
深い「愛」を感じずにはいられません。もちろん、伸行さん本人は、(本の中ではあまり書かれていませんが)持って生まれた才能だけではなく、相当な努力を継続しているはず。単に練習時間だけではなくて、集中力や、感性を高める努力など。そして、それを支える母親がいること、これが伸行さん自身の大きな「中心」になっているはずです。あまり本書には登場していませんが、医者である父親の支えもあるのでしょう。特に医者という職業に従事している中で、障害を持つお子様を受け入れて成長を見守る、というのは、それも「想像を超えて」いると思うのです。
伸行さんの演奏について、「全盲の」という紹介文がついているうちはまだ未完成、という旨をご両親が話しておられます。この言葉を発することができるのは、ご両親が立派な心をお持ちであることの表れでしょう。そしてその「愛」を全身に受け入れ、ピアニストとしてもっともっとスケールの大きな、オリジナルの「表現」をなし得る「プロフェッショナル」になっていくことだと信じます。
この内容から何かを得るのは直接的には難しい。「全盲の人だって頑張っているんだから...」というのは間違っている気がします。全盲だろうが晴眼であろうが、がんばる人はがんばる。「人として」どうか、というのは、障害とはまた違うポイントですからね。ですが、この家族の「つながり」「子を思う気持ち」「親を思う気持ち」、これは素直に自分の中に入ってきました。それで十分かもしれませんね。
ピアノ、聞いてみたい。本心からそう思ってます。その世界に触れてみたい。
【ことば】『今日の風、何色?』は伸行が言った言葉...大好きな食べ物に色というものがあるなら、同じく大好きな風に色があっても不思議はありません
これほど素敵な言葉はないですね。伸行さんの感性がこの質問に凝縮されているようです。こういう感性、もちろん単純に真似できるものではないけれども、忘れていた何かを思い出させてくれるような気がします。
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全盲のピアニスト、辻井伸行氏の母が2000年に書いた本。当時伸行氏は小学生。本人の才能もさることながら、お母さんのひたむきさに感心。
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者について
辻井いつ子(つじい・いつこ)
1960年(昭和35年)、東京に生まれる。
東京女学館短大卒業後、フリーのアナウンサーとして活躍。86年、産婦人科医の辻井孝と結婚。88年に生まれた長男・伸行が生後まもなく全盲とわかり、絶望と不安のなか、手探りで子育てをスタート。持ち前の積極性と行動力で伸行の可能性を引き出した。
伸行は8歳にしてモスクワ音楽学院大ホールで演奏、10歳で音楽界への登竜門といわれるピティナ・ピアノコンペティションのD級で金賞を受賞。また、アメリカ(カーネギーホール)、チェコ、台湾(国家音楽庁)などでも演奏し、絶賛される。
2000年9月(12歳)サントリーホールで初リサイタル、2002年3月(13歳)フランスで佐渡裕指揮のラムルー管弦楽団と共演、同年10月(14歳)東京オペラシティ・コンサートホールで東京交響楽団と共演、2003年5月(15歳)やまと郡山城大ホールでピアノリサイタル、2004年10月(16歳)東京交響楽団の定期演奏会のソリストに抜擢、2005年(17歳)ポーランド・ワルシャワで行われた第15回ショパン国際ピアノコンクールに最年少で出場し、「ポーランド批評家賞」を受賞するなど、世界へ羽ばたくピアニストとなる。
2007年10月(19歳)エイベックス・クラシックスよりデビュー・アルバムを発売。
これまでの活動は99年より、テレビ朝日系『報道ステーション』などでたびたび紹介されている。
著書に『のぶカンタービレ!』(アスコム刊)がある。
辻井伸行公式サイト http://www.nobupiano1988.com/
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有名になったピアニスト辻井伸行さんのお母さん、いつこさんが書いている。
伸行を障害者として育てるのではなく、
伸行らしく育てたいといつこさんが本の中で言っていた。
また、伸行くんの才能にも改めて感心した。
1歳5カ月でピアニストのいい演奏を1時間膝の上で聞かせてもらうようなレッスンも始めたらしい。
一度聞いた曲は、だいたいピアノで弾けてしまうというのも、すごいなあと思う。
この本を読み終えて、改めて人の成長というのは、その人のもつリズム、テンポというものがあるということを感じた。
そのことが分かるまで、一人目の子育てで、あせったり不安になる気持ちも、私も自分の子育ての経験があるためか、とても理解できる気がした。特に伸行くんが小さいときに泣く理由が分からなかったけれど、後になって、音が理由だったと分かったというところで思った。
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盲目のピアニスト辻井伸行(当時12歳)のお母さんの育児奮闘記。古い内容ですが、伸行さんの純真さとお母さんの誠実な愛を知ることができます。
いつ子さんの育児日記を明かしながら進めていく構成は、初めての子育てに奮闘する母親のリアルな姿がよくわかり、とてもいいです。お母さんになるってものすごい精神的負担なんだなと改めて思いました。
旦那の孝さんが産後のいつ子さんの自殺を真っ先に心配したというのが鬼気迫っていて、そういうことなんだなーと思った。男の私には申し訳ないけれど想像を絶する。
● 私は仕事柄、障がい者のことにかかわったりするんだけど、彼らの将来はどうしても不安である。
伸行さんは人より秀でた才能と教育熱心な親がそろっていたから、未来に豊かな可能性が見えている。けれど、そうでない子のほうが圧倒的に多い。社会福祉政策で就職とかは斡旋されているけれど、実際日陰な感じです。大人になった障がい者ってみんなあんま知らないんだろうなーと思う。
伸行さんが活躍することで障がい者の活動に日が当たることになると思う。けれど、彼らが活躍する場が増えるかなー?活躍する場を増やすより、彼らの才能を伸ばす教育の機会を増やせるようにしてほしいなと思います。
● いつ子さんは伸行さんを、伸行さんらしく育てたいと書いてあった。それが一番難しいんだよな。そもそも個性なんて見つけられるものじゃないし。個性は身に着けるものだと思う。いつ子さんは伸行さんにピアノという個性を身につけさせてあげられた。そこが素晴らしい。
よく子供の個性について話題になるけれど、この人たちのドキュメンタリーはその答えの一つだ。個性を伸ばすということは、その子が誇れるものを持たせること、そしてそれを向上させることである。決して放っておくことじゃない。そのことに気づきました。
● この本の最後の方で、いつ子さんは伸行君が障がい者ではなく、一人の音楽家として取り上げてほしいみたいに書いているところがあった。マスコミは商売柄、障がい者という部分を大々的に取り上げたくなるんだろうけど、それは全く本質をとらえられてない。その結果がサムラ何某につながったんだろう。
あとがきか何かで、孝さんがこれからの伸行さんの課題は、障がい者ピアニストとして客を集めるのではなく、音楽家としてお客さんを満足させられるようになるかだと書いていました。
今では達成できていると思う。素晴らしいです。どっかの佐村河内とはちがうね!!時代の先見性を感じます。
● タイトルの「今日の風、なに色?」は素敵ですね。ロマンチックです。これから、自分が自然に触れ合うとき、その時の空気は何色か感じてみようと思います。
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テレビを通じてもその人を惹きつける力は充分伝わってくる、伸行君とお母さんのいつ子さん。我が子が生まれながらの全盲であるとわかった時の絶望、育てにくい子どもと四六時中向き合う苦しさ、どうやら才能があるらしい音楽の道にこのまま進んでいっていいものかというためらい、どれもどれも胸が痛くなるほどに切実だ。また、強く感じたのは音楽の天分というものはとてもはっきりしているんだなということ。それほど長時間練習しないということも意外だった。
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社会適応を目指そうとするよりも
個性を尊重する生き方
…と言って理想を掲げてみても
なかなか実行できないですよね…
実行できるような行動力を身に着けたい!
自分にも当てはめてみて
考えなおしてみたいです。
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これも授業で扱う内容なので、図書館で借りて読んでみた。
泣ける(:_;)
自分の産んだ子が全盲だったら・・・
いつ子さんのように前を向いて生きられるのは素晴らしい。
でも、前を向けるまでに様々な葛藤があったこと、つらい日々があったこと、包み隠さず書かれていて本当に胸にひびいた。
伸くんのピアノを聴いてみたい。
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なんとも眩しい親子関係。
素晴らしすぎます。
こんな風に子供を育てられる人がいったいどのくらいいるだろうか?
私には無理な気がする。
でも、この姿勢を見習いたいものだと思う。
子育てに限らずありとあらゆることに関して。
いつ子さんの行動力は本当にすごい。
この強さは何だろう。
いつ子さんと伸行さんの歩みは前進というより登頂のイメージ。
登った先には想像以上に大きな世界が広がっていた。
でも二人はまだまだ登っている途中なのだ。
その先の道も輝きに満ちていることは確実だろうと思われる。
この続きも読むつもり。
自分の生き方と比較してどうとかそういうことを考えても仕方ないなと思う。
真似できることでもないなと思う。
いつ子さんの「伸行らしく」の願いが、全てなのではないかと思う。
「らしさ」というのがどう形成されるのかという問題もあるけれど、全ての人にとって大切なのはそこではないかと。
まとまらないし、うまく言葉に出来ないけれど。
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ピアニスト辻井伸行君の母親の子育て記。
我が家の上の娘と同い年、小さい時から佐渡裕のコンサート等に出演していたりして、何となく親近感がある。(勝手にだが)
言い尽くせないものが多くあるのだろうとは感じるが、感性というものの不思議を考えさせられる。
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障がいを持って生まれれば、それを補うために他の能力に磨きがかかることは予想できることだが、音感の素質があったとしか思えないし、それを母親が素直に受け止め、早い段階からうまく導いていったことが功を奏したのだろう。
著者は、障がいを持って生まれた息子の将来を考えた時、社会の枠にはめ込むことに疑問を持ち、本人の個性を伸ばす教育があるはずだと思っていた。本人らしく成長して欲しいと望んだ。ロシアで出会った先生も、練習させたり頑張ったりさせず、遊ばせるようにアドバイスした。その言葉を後ろ盾にして、平日は1時間~1時間半、休日も2時間半しか練習しなかったという。無論、それは障がい者でなくても同じである。教育とは?生きるとは?といった問いが次々に付きつきられる思いだった。
今日借りてきて、一気読み。
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色んな方の手記が掲載されていて、多方面から物語を読むことが出来た。
好きなフレーズピックアップ
幼い子供が1人で自分の道を見つけられる可能性はほとんどありません。これは子供が好きそう合いそうだと思ったら親が道筋をつけてあげるべきです。ときには強引でもいい。子供が大きくなってからこれをやりたいと思っても間に合わないこともあるからです。才能がないかもしれないとためらう事はありません。一芸に秀でるために必要なのは才能より本人の努力です。他の人の3倍練習すれば3倍上達するのです。by三枝先生
何か1つこの子がこの子らしく生きていけるものが欲しい何か1つその子が自信を持てるものを身に付けてほしいそして生まれてきて良かったと思えるような人生をこの子が歩んでいかれますように。
あ〜、やっぱり前向きに生きていれば道を開けるのかもしれない。
けれど人間とつくづくあくなき欲望を持った存在だと思います。
生きがいや充実感あるいは生きている使命感や実感といったものはもっと別にあるはずだと私は思うのです。by辻井いつ子
好きな言葉の1つにヘルマンヘッセのこんなフレーズがあります人は成熟すると若くなっていく辻井さん親子を見ていて思うのは伸介くんの成長していくプロセスをそのまま母親のいつ子さんにとって母自身が世界を少しずつ広げていく成長や開花の歩みであると言う事実です
人は生活年齢を積み重ねることに生活の中で新しいものにチャレンジすることがうっとうしくなりますまじで自分自身を変えたり思考パターンや行動パターンを変えることには臆病になりがちですその結果人は死ぬまでに脳の数%しか使えないと言われています。けれど日々新しい事象にチャレンジしていくと言う事は過去の自分を見直し新しい自分をイメージし脳の新しい領域を刺激していくことにつながります。その結果ヘッセの言うように人は成熟と同時に若々しさも獲得していくのです。
自分自身が成長する子育て by神山