サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

「e-hon」キャンペーン 本の購入でe-honポイントが4%もらえる ~7/31

hontoレビュー

ほしい本の一覧を見る

けい子ちゃんのゆかた みんなのレビュー

文庫

予約購入について
  • 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
  • ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
  • ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
  • 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。

みんなのレビュー5件

みんなの評価3.9

評価内訳

  • 星 5 (2件)
  • 星 4 (1件)
  • 星 3 (2件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
5 件中 1 件~ 5 件を表示

紙の本

敢えてユートピアの中へ・・・

2009/11/29 16:57

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:碑文谷 次郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る

「夫には秘めごとがあった。」の一節がある庄野潤三の初期短編『舞踏』は、「同じ課に勤めている十九の少女と恋をしている。役所が退けてから、こっそりと二人で映画を見に行ったり、夕暮れの市外を散歩したりしていた。」と続く。「家庭の危機というものは、台所の天窓にへばりついている守宮(ヤモリ)のようなものだ。」という書き出しの一行の音調が最後まで消えることのない、中年夫婦の哀しい格闘を活写する名編であった。

それから五十年以上経って書かれた本編には、いかなる家庭の危機も不安もなければ、夫婦・家族間の諍い、不信もない。いやそれどころか、この世に生きる幸せで満ち溢れる、美しい家族愛を謳いあげた日記風スケッチとなっている。妻や、長女、長男、次男の家族だけでなく、ご近所の人たち、滞在先ホテルの人たち、庭師や銀行支店長まで縁あって交わる全ての人々に善意と愛情を感じている著者の日々が、重複をいとわずに書きつくされている。その穏やかな眼差しは、庭にやってくる四十雀やメジロ、むく、コゲラにも等しく注がれ、読み進めるうちに甘美な昼寝に誘われてゆくような感じがしてくる。たとえば、「長男は、仕事を中断してテーブルの前の肘かけ椅子に座った私の前で、妻と二人並んで《ハッピーバースデイ》を手を叩いてうたって誕生日のお祝いをしてくれる。ありがとう。」妻と多分50代の息子が二人並んで《ハッピーバースデイ》をうたってくれたら、どんなに平穏な幸せで心が充たされることだろう。

生身の実生活である以上、実際には聞きたくない音や声、見たくもない光景や表情も否応なく侵入して来たに違いない。「守宮」のようにへばりついているものが消えてなくなることは本当はありえないことを、著者が一番よく知りぬいていたのではあるまいか。しかし、それ故に、それらを切り捨て、否定し、捨象したところに敢えて著者は立ち続け、一貫して「平穏な家庭」「美しい家族」を描き続けた。『舞踏』の愛読者からは、そういう家庭や交わりは、時としてどこか現実離れしたユートピアを見る思いがすることは否定できないが、それが著者の強固な信念であり文学観であることに敬意を払わざるをえないであろう。

著者は本年9月21日、家族に囲まれて88歳で逝去された。新聞には「老衰」とある。謹んでご冥福をお祈りしたい。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

2009/10/03 19:33

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2022/02/17 15:48

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2023/02/20 09:59

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2023/06/21 14:27

投稿元:ブクログ

レビューを見る

5 件中 1 件~ 5 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。