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紙の本
ネットの本格ミステリ愛好家たちへの挑戦状
2009/11/19 14:07
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
島田荘司がペンネームの名付け親、
という気になる新人作家。
たしかに島田荘司が好きそうな、密室あり、
サイコパスあり、シリアルキラーに発展する本格ミステリ。
ネットの本格ミステリファンサイト<猟犬クラブ>に
書き込みされた通りに、女子大生が殺されます。
10名しかいない会員制サイトなので、
容疑者は絞られるのですが、
果たしてメンバーに殺人犯がいるのかどうか。
語り手の中心となるのはメリヴェールというハンドルネームの
英文科学生・深町麟。
殺されたのは同級生の樋口佐和子で、
彼女は、社会人を経て入学してきた美人の高市美保子に興味を持ち、
彼女にそっくりな女性まで見つけてきて
なにやら探ろうとしていた様子でした。
語り手が<猟犬クラブ>10人プラスアルファで、
しかも現実とネットでの姿と両方から語っていきます。
(せめて一人称か、三人称かどちらかにしてほしい)
これもまた読者を混乱させる意図があるのでしょうけれど。
このもつれた紐を最後に安楽椅子探偵の小波涼が
解きほぐしていくのですが、
シリーズものの途中のように書かれていて
彼の正体がいまいちはっきりしない。
新人らしい勝手さや、設定の甘さがそこここに見えるのですが
それを凌駕して、ミステリは考え抜かれています。
それぞれの人間ドラマはありきたりなのですが、
それが連続して起こった場合、どんなふうに世間は混乱するのか。
さまざまなミステリを読んできた著者だからこそ
やってみたいと思ったのかもしれません。
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