収録作品の紹介文がいいですねぇ。巻末の「編集後記」に、格別の興趣を感じた一冊
2009/11/21 16:00
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東の風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
編者による巻末の「編集後記」に妙味があります。太宰 治の短篇を読んだ後に、その作品について触れた一頁から二頁ほどの文章を読んでいきました。「うんうん、そうなんだよなあ」と共感を覚えたり、「なるほど。そういう読み方もできるか」とハッとさせられたところが随所にあって、本の向こうの編者のおしゃべりを楽しんでいる、そんな気持ちになりました。
「編集後記」の次の件りなどは、格別、森見登美彦のコメントの旨味を感じましたね。太宰の作品のどの辺が魅力的なのか。それをうまく言葉に言いとめて、見事です。
<縁側で「風に吹かれてぱらぱら騒ぐ新聞を片手でしっかり押えつけて読む」という鮮やかな一文を読むなり、文章の中を爽やかな風が吹き抜けていく。そして小川は草原のあいだをゆるゆる流れ、最後に白いパラソルがくるくるっとまわる。まるできれいな絵を見ているようである。> p.436 『満願』評
<もう一つ特徴的なのは、句点を用いずに読点だけで続けて延々と書くところである。太宰の文章が持つ独特のリズムがよく分かる。句点で息継ぎをする余裕を読者に与えず、「これでもか」「これでもか」と駄目人間描写が上乗せされて、異様な説得力とユーモアが生まれる。ついつい読まされてしまう文章の魔力を駆使して、太宰は読者を江戸の駄目人間たちが織りなす世界へ引きずり込んでいく。> p.445 『貧の意地』『破産』『粋人』評
ずうずうしいのを通り越してぞっとするほどイヤな奴を描いた『親友交歓』。森 鴎外の翻訳小説をテーマに、ひねりを加味した華麗な変奏にわくわくさせられる『女の決闘』。予想外の展開に、ジャック・リッチーの『10ドルだって大金だ』の表題作に通じる面白みを感じた『貧の意地』。この三篇が、殊に印象に残りました。
収録作品について語る編者の文章に読みごたえがあり、親しみの持てる案内文になっているってことでは、宮部みゆきの『松本清張傑作短篇コレクション』もいいですよー。おすすめ。
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
「女の決闘」を久しぶりに読み返しました。いつの時代もたくましく情熱的な女性たち、若き日の森さんも刺激を受けたのでしょう。
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
違う視点から太宰治の小説が読めました。この本ではなく、単なる太宰治全集とかから読んでいたら、こんな順番では読んでないと思いますしね。久々に読んだものもあれば、初めて、のものもあって。
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中学校の国語の時間。「走れメロス」の音読テープに耳をふさいだ森見少年は、その後、くっついたり離れたりを繰り返しながらも、太宰の世界に惹かれていった――。←この説明文を見て、てっきり「走れメロス」は入ってないものだと思っていたがしっかり入っていて笑った。そして編集後記を読んで納得。最後まで読むと確かに「太宰治なんて『走れメロス』と『生まれてきてすいません』の人でしょ?」の印象から少し抜け出せた。
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太宰治ブームに間に合って良かった!!
こんな太宰知らなかったよ・・
モリミーが影響されている感じがあって、相当面白かったです。
こんな面白小説書けるなんて、アンタ失格なんかじゃないよ!!!
と、力をこめて言いたひ。
担当権力を利用して、太宰コーナーにそっと積んじゃいました☆
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これはオモチロイ!!
あんまり面白いので、日本酒をおちょこで飲むように、1日1篇ずつちびちびと読み進めました。
各短篇ごとに、森見氏が解説(というよりこの作品への思い入れや感想)を書いているのがまた最高です。
兼ねてから、「電気ブラン」を持ち出したり、ダメ大学生をおどけてかく様子にモリミーが太宰氏からなみなみならぬ影響を受けているのではないかと思っていたのですが、本作をよんで、その想像が誤っていないことが確かめられました。
特に彼のエッセイのような作品が自虐的で読みながらにやにやしてしまうくらい楽しめるということは新たな発見でした。
それから、井伏鱒二全集に寄せる解説まで収められているのですが、その解説中に、井伏氏にまつわる逸話がたくさん掲載されていて、彼の井伏作品への愛に満ちあふれていて、ほんわかとした心持ちになれます。
いつも読み手のことを強烈に意識し、楽しませようと必死な太宰氏は当時の優れたエンターテイメント作家だったのではないでしょうか。
太宰さんは暗いから苦手だけどモリミーは好き!って方には、ぜひとも敬遠せず読んでいただきたいです。
《所持》
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“人間失格”とは別の魅力を見た気がする。
そして教科書以来の“走れメロス”は、ちょっと教訓めいて一つの舞台作品のように勢いと迫力を持って迫ってきた。
森見ワールドの構成要素としての視点でも面白かった。
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太宰治の暗い面が苦手という編者によるアンソロジー.編者は有名な作家らしいが私はしらなかった.この本におさめられている作品は太宰治の一面にすぎないとは思うが,最良の一面である.その意味でも傑作選とよぶにふさわしい.太宰治が初めてという人にはもちろん,ディープなファンでもこのセレクションには新しい発見がある.
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「失敗園」、「カチカチ山」から始まる並びで既に、「編集後記」での森見登美彦氏の意図が十分伝わるのではないかと思う。
だが残念なことに、「森見登美彦氏だから」と手に取った人以外には「太宰治なんて、『走れメロス』と『生まれてきてすいません』の人でしょ?」
のまま本に触れられないままなんじゃないかなぁと思うのです。
太宰嫌いの人に対して「『お伽草子』すら読んでないのに何を言うか」、という批判があったことをどこかで聞いた覚えがあるのですが、
この本の内容を見ると、同じ思いなのではないか?と思われました。
納められている作品のいくつかは青空文庫にも納められている作品があるので、スマートフォンを持ち歩く人は、気にかかったタイトルをダウンロードして読んでみる事をお薦めします。
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太宰治短編集です。念のため。
太宰といえば鬱々とした作品が多いイメージがありますが、意外とコミカルなものを書いています。
ですが、太宰のマイナー系短編集がとにかくぶち込まれています。
これを読むと、森見さんが太宰の何のどこに惚れ込んで影響を受けたのがが手に取るように読み取れるようです。
ちなみに「畜犬伝」は可愛くて癒されます。
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これを読んで太宰治のイメージが変わった。
流石は森見登美彦。
森見さんを透かしての太宰治はイメージと全く違った。
いやあ、もう綺麗サッパリ。塗り替えられた。
太宰治がこんなに「明るい」、「愉快な」作品を作る人だったとは。
『カチカチ山』とか読んでいて本当に笑った。
声を挙げて笑った。
これは一読の価値あり。
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選者・筆者両氏に興味を持って購入。非常に面白かった。特に、擬人化作品が気に入った。『失敗園』の野菜たちの可愛さに始めからやられてしまった。
オモチロイ太宰を堪能できる一冊である。森見ファンにとっては編集後記がまた楽しい。
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これはいけない。最後の「走れメロス」を読んでるそばから、脳裏に「新釈 走れメロス」が浮かんでくる。。
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なかなか暗いイメージのある太宰治の作品から、「ヘンテコであること」「愉快であること」を主眼として森見氏が選んだ、まさに傑作選。
人間失格とメロスだけでは語れない太宰治の魅力。
だいたい日常、でもちょっぴりファンタジック。で少しかあいらしい。
文学云々とか構成云々とか別とした個人的嗜好でいうと、
「ロマネスク」や「黄村先生言行録」なんかはただただ面白かった。
「カチカチ山」「女の決闘」はまた違った意味でオモチロイ。
今改めて読むメロスはなんだかギャグマンガのように思えてきてそれもまたオモチロイ。
本は楽しく在るべき、という個人的観念からすると実に理想的な選集。
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太宰治は内省的で暗い部分・・僕が思うにグダグダな部分が一般には好まれていると思う。森見登美彦さん の編による太宰治は、ちょっと茶化したような内容・・・ちょうど森見登美彦さんの作風とも似ている・・・の物を集めたもの。なかなか面白いものもある。でもやはり太宰治・・くどい。僕は正直、太宰治は全然好きではないが何編も面白いと思える作品があった。