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スターバト・マーテル みんなのレビュー
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紙の本
表題作、伊集院静が書いてもおかしくないようなお話です。死、を見詰めた正統的恋愛小説。でも、私はもっとゆとりのあるお話が好きかな・・・
2010/08/25 21:28
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんとなく思うんです、最近の篠田の小説って、以前ほど面白くないんじゃないか、って。悪くはないんです。この二年で言えば『ホーラ 死都』『仮想儀礼』『薄暮』と新作を読んできましたし、『秋の花火』の再読もしています。ともかく、好きな作家の一人で、原則、出れば読むことにしています。で、読めばどれも楽しめます。ところがです、どれもそこそこ面白くて★四つは取れるけれど、五つには届かない。
例えば乃南アサを読むと、そういう感を抱かないんです。同じ★四つでも、またか、とは思わない。その理由は、表現の巾にあるんじゃないか、そう思うんです。目先、という点では篠田も変わっています。無論、篠田の小説の根底には「死」という文学の王道ともいえるテーマがどっしりと居座っているのですが、でも表面的には不倫、新興宗教、芸術となっていて、どれにも極めて真面目に取り組んでいます。
でも、どこか余裕がない。っていうか笑いがありません。読んでいてホッとすることがない。そういう意味で、『百年の恋』だけが彼女の小説の中で異色なわけで、あとは全部、150キロ近い直球勝負。その点、乃南には変化球がある。無論、乃南には「死」の気配はあまりありません。そういう意味で狙いが違うことは分かります。でも、篠田にはないユーモアはある。直球の速度はあまり変わらないので、打者は三振しやすいわけです。
これが高村薫となるとまた違います。彼女は篠田と同じ直球派。変化球にあたるユーモアなんて欠片もありません。ただし、直球の速度が違います。高村の場合、全てが160キロ代。ただし、球数は多くありません。篠田が100球投げるとすれば、高村は50球がいいところ。乃南であれば硬軟取り混ぜ120球だって投げてしまう。どうも、そんな感じじゃないでしょうか。で、私はどうも篠田の投げる球に目が慣れてしまった。圧倒されない。で、この作品、篠田の名前を見て飛びつきはしたものの、不安が付きまとう。今回も★四つなのかな・・・
でも、タイトルはいいです。クラシック好きの人であれば、みんな知っている曲、スターバト・マーテル、悲しみの聖母。いえ、エラソーなことはいえないんです。私が聞いた事があるのは、ペルゴレージ、ロッシーニの二人の曲くらいで、その意味や他に、誰が作曲しているか、なんて全く知りません。いい機会なので勉強してしまいましょう。Wikipediaのよれば
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中世の詩の中でも極めて心を打つものの1つであり、わが子イエス・キリストが磔刑となった際、母マリアが受けた悲しみを思う内容となっている。
中世以来、西洋音楽の多くの作曲家がこの詩に曲を付けている。中でもジョヴァンニ・ダ・パレストリーナ、アントニオ・ヴィヴァルディ、ジョヴァンニ・バティスタ・ペルゴレージ、ヨーゼフ・ハイドン、ジョアキーノ・ロッシーニ、アントニン・ドヴォルザーク、カロル・シマノフスキ、フランシス・プーランク、アルヴォ・ペルト、クシシュトフ・ペンデレツキなどのものが著名である。『聖歌四編』に含まれたスターバト・マーテルの旋律はジュゼッペ・ヴェルディの最晩年の作品である。
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とあります。そうか、ヴェルディの『聖歌四編』にもあるんだ、なんて新発見アメリカ大陸。それなら何度か聴いたことがある。となると、その詩と小説の内容がどう絡むのか、なんてことになっていきます。ちなみに、カバーに使われている写真の彫刻は有名なものなのでしょうが、画像提供 Julio Donoso/CORBIS SYGMA/amanaimages と書くだけではなく何の写真で、どこにあるかくらい書いておいても罰はあたらないでしょうに、装幀の高柳雅人さん・・・
で、気になる内容ですが出版社のHPには
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中学生のころ、特別な存在だった彼との再会。
「死」をふと身近に感じた、あの日から
置き去りにした「過去」へと揺れ動いていく――。
癌と診断されながら、ほぼ完治したように見えるなか、
彩子は夫から勧められた会員制プールに通う。
そこで声をかけられたのが、中学校時代の同級生・光洋だった。
当時は早熟で独特の雰囲気を放っていたのだが、
かつての面影はない。
しかし夫の言葉が、
時を隔てた再会に微妙な色合いを与えるのだった……
(「スターバト・マーテル」)
表題作ほか1編を含む、
悩める女性たちに贈る篠田流スパイシーな恋愛小説。
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とあります。収められた二話について、初出とともに詳しく書くと
・スターバト・マーテル Stabat Mater(「STORY」2006年7月~2007年5月号):中学生のころ、特別な存在だった彼との再会。「死」をふと身近に感じた、あの日から置き去りにした「過去」へと揺れ動いていく――。癌と診断されながら、ほぼ完治したように見えるなか、彩子は夫から勧められた会員制プールに通う。そこで声をかけられたのが、中学校時代の同級生・光洋だった。当時は早熟で独特の雰囲気を放っていたのだが、かつての面影はない。しかし夫の言葉が、時を隔てた再会に微妙な色合いを与えるのだった……。
・エメラルド アイランド Emerald Island(「小説宝石」2007年10~12月号):先方の反対を押し切って挙げたマレーシアでの挙式。そこに出席、というのを口実に、じつは参加するひたたちとの合コンをもくろんでいた私。でも、参加者が思いのほか少なく、では割り切って気の置けない友人とバカンス、と思ったのも束の間、友人の家庭に不幸が。結局、千晶と秀樹の新婚二人と千晶ママ、そして私という4人がリゾートで過ごす羽目に。しかも肝心の花嫁は旦那さんそっちのけでママへのサービスばかり・・・
となります。今までの作品の延長線上にあるのが表題作、ちょっと雰囲気が変わったのが「エメラルド アイランド」でしょうか。私としては変化球が好きなので、これがあるおかげで「スターバト・マーテル」も引き立つなあ、と思った次第。で、この死出の旅、っていうのも際立つ。そう考えると、もしかすると作品の並べる順は逆のほうが良かったかも・・・