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とてもよかった。
私はつくづく、梨木さんのものごととの接し方や、
そこから広がっていく考えや、繋がりが、好きなんだなと思った。
鳥の話が主軸になっていて、
そこから意外な方向に広がっていく章もあった。
むくむくと、鳥に興味が湧いてしまい、鳥の図鑑など買ってしまいました。
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「渡り」すなわち旅をすることを、大好きな鳥たちのおっかけから、深く人間そのもののありかたに迫る作品。深く、あったかく、おもしろい。
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バードウォッチングと移民の人々について書かれている。特にバードウォッチングの趣味がなくとも、解説があるので楽しく読める。
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渡り鳥を追いかける作者の旅、そして鳥の移動と人の旅を重ね合わせた思索をまとめたエッセイ集。
「丁寧」という言葉を何度も思わせる作品だった。渡り鳥の丹念な観察。案内人となる人々との誠実な向き合い方。鳥と人の旅路に馳せる視線の柔らかさ。
きっと立ち止まって考えることの多い人なのだろう。
ときにその思考は、私にとっては追いにくいものだったりもしたのだが。例えば「コースを違える」に出てくる女性の逸話はこの話の流れからはちぐはぐに思われたし、何より、女性が実際どういう状況だったのか、想像の部分が多すぎて筆者が思ったとおりなのかどうかも判断しかねた。
「共感力」とも呼べそうな、思いを重ねていく筆者の丁寧な姿勢が、例えば「渡りの先の大地」の日系二世の人々や、「風を測る」「もっと違う場所・帰りたい場所」のHさん、「案内するもの」のカーチャやYさんとの出会いを支えているのだろうし、本書に登場する様々なそれほどメジャーとは言えない本に巡り会う能力にもつながっているのだと思う。これはこの人の持ち味であり、長所であるのだろう。時に、いろいろな人の思いを想像する場面で、少し踏み込みすぎな感はあるけれど。
個人的には、数十年前、アメリカで暮らしていた時にふと感じた、「ああ、遠いところに来てしまったなぁ」という思いをまざまざと思い出した。
願わくは、本書終盤に出てきたあや子さんのようにどこへ行っても「行ったとこで生きて」いく力が自分の中にありますように。
*本書には、各章ごとに登場した鳥の簡単な解説がある。鳥を知っている人にはおもしろいだろうし、知らなくてもまた楽しい。
*鳥の名前って時々、不思議だ。ハチクマとかノスリとかカイツブリって、聞いただけだと哺乳類かと思ってしまうのだけど、私だけだろうか・・・?
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後半の、ロシアの「渡り」が興味深かったです。日本でイメージする森と欧州の森の違いが感じられました。『クロニクル千古の闇』を読んだときの森の暗さの印象を思い出しました。
鳥については、図鑑を片手に読むと良かったです。
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久々に出版された梨木さんの本。今回は趣味の「鳥の観察」を題材にしたエッセイ集で、新潮社のPR誌『考える人』に連載されたエッセイ(2006年夏〜2009年冬)に、書き下ろし1編を加えたもの。 最初のうちは、単に趣味の渡り鳥観察の記録かと思っていたが、読み進めるうちになかなか哲学的な内容となっていることに気づいた。北海道や新潟、長野などあちらこちらに、渡り鳥を追いかけながら、「渡り」という行為について深い考察を重ねていく。 著者ならではの情景描写や思索の過程が綴られ、単なる観察記録を越えた哲学書となっている。
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まんが「とりぱん」の愛読者としては、出てくる鳥達の挿絵をつけて欲しい。文章だけでは伝わらないものがあるので。「沈黙の春」は現実になっているようだ。
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梨木さんってコアな鳥好きでらしたんですね・・。(*^_^*)鳥の中でも渡り鳥に的を絞ってあちこちに出かけられた観察日記。あいにく鳥に詳しくない私は、かろうじて最近お気に入りの「とりぱん」に登場する鳥たちを思い出しながら、ふ〜〜ん、なるほどねぇ〜〜、うん、そうなのかも、などとそれでも随分楽しむことができました。嬉しかったのは、梨木さん、新潟の福島潟にもいらしてたんですね。地元民にはお馴染みの「クォーウ、コォ−ウ」に、あぁ、白鳥に季節に来られていたんですか、と思っていたら、梨木さん、他のアマチュアカメラマンから「白鳥の鳴き声ですよ」と教えられ驚いているのが可笑しかった。(*^_^*)そして、その元船長だというアマチュアカメラマンの赤銅色の顔いろは日焼けによるものなのか、酒焼けか、などと、わけありげな調子なのもね。渡り鳥を追いながら、鳥以外にもその周辺の人間に観察眼を向けてしまうのは小説家のサガなんでしょうか。私はむしろ、そちらの方がより面白かった気がします。渡りにかけた「移民」から、第二次世界大戦時のアメリカの日本人強制収容所の話が引き出され、アメリカで生まれた二世、三世たちの悲しみ、アイデンティティの喪失、アメリカの理不尽さが、彼らノーノーボーイたちへの取材からまた浮かび上がってきて、とても興味深いレポートになっていたと思います。梨木さん、私は「家守綺譚」「村田エフェンディ」のような日常と異界の境目があるようなないようなのお話が大好きなので、今度は新しい小説を読みたいな。
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食事をおいしくいただくとき、
材料や自分はどんな旅をして、
このテーブルでお互い向かい合うのか?
と、想像するのもありだと思ったり…
“ 近くの池や川に飛来するカモたちにも、
一羽一羽、物語がある。
命がけで渡りの旅を終え、
奇跡的に辿り着いている。 ”
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鳥の死骸を目にすることは稀なことですが、著者は北海道で大量のスズメの死骸が見つかった報告に強い関心を持ったようだ。私も春の剣沢でそこここにメジロの死骸を見て心を揺さ振られた。何故ここにという強い疑問が残った。留鳥以外は渡り鳥だ。観察する著者に鳥見の楽しさを感じざるを得ない。
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渡りをする鳥それぞれの目線を想像しながら、文章がつづられています。鳥を観察しながら、梨木さんは人間のことを考えているようにみえます。それは、梨木さん自身のことだったり、数日前に出会った他人のことだったり。だからどうしたということもなく、静かな気持ちになれるのが心地良いです。
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鳥のことがよくわからないわたしは、ふ〜んといった感じで読み進めていたけど、これは鳥よりも「渡り」の本でした。各章の渡りにつらなるエピソードが心にしみる。装丁がいいです。
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図書館にまだ読んでない本があった、と中身をあまり気にせず借りてきた。野鳥には興味がないので、ところどころ斜め読みはしたが、この人の文章はすっきりして読みやすいのでそうは言いつつわりと読んだ。人間の「渡り」の物語として戦争中アメリカで収容所に入れられた「ノーノーボーイ」の実話が出てくる。「栄光なき凱旋」を思い出す。
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渡り鳥を追った旅のエッセイ。
知床のオオワシから都会のヒヨドリまで。
そして、鳥だけではなく人の渡りのことも。
移民とは「渡り」だ、というそのつながり。
地図と野鳥図鑑を傍らに置いて読むともっとおもしろいだろうな。
北海道に帰ってもなかなか知床あたりには足を伸ばせないけれど、オジロワシやオオワシが北へ渡る、「風の港」も見てみたいし、チミケップ湖にもいってみたい。
各章の最後にある梨木さんが書く鳥の説明がかわいくてわかりやすくて好き。
ロシアでの通訳カーチャとの木に関するやりとりも、くすりと笑えておもしろかった。
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これは梨木さんが渡り鳥を追いつつ、
出会った「渡り」たちに触れている。
それはワタリガラスやヒヨドリ、
オオワシばかりではない。
生きてるものは
みな、「渡り」だ。
どこかに還りたくて仕方ない。
だから、
悲しいくらいに還る場所を作り続ける。
生まれおちた瞬間から、
私たちは「渡り」続けている。