紙の本
卓越したギャグを交え、旅で出会う理不尽を等身大に綴った爆笑旅エッセイ。
2011/02/24 18:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は著者宮田珠己氏が、サラリーマン時代「当然の権利として有給休暇を取得し、その他当然じゃない権利もいろいろ取得したりして出掛けた旅の記録である。(【はじめに】より)」らしい。
一番目のエッセイ【そんなんじゃだめだ熊男(トルコ)】の出だしはこうである。
「昔、一文字隼人はブラジルに飛んだが、私は五年前にトルコに飛んだ」
仮面ライダーの本を間違って買ってしまったと、本を閉じるのは早い。これは著者一流の『つかみ』であり、旅の記録とは少ししか関係ないのだ。
素敵な旅エッセイが読みたくて買ったのに馬鹿にしてると怒る人もあろうが、バカにしてはいけない。ここには著者が旅で遭った、そして多くの人が遭遇するであろう旅の理不尽の顛末が、等身大に綴られているのだ。そして、この本を読み終えたとき、私も旅に出たいと気持ちが高まり、もしその旅先で理不尽に遭っても、これがあのエッセイで書かれたことなんだと、少しだけ慌てずに済むことだろう。本書はそんな旅エッセイ集である。
本書に収録されているエッセイは十六篇。
そんなんじゃだめだ熊男(トルコ)、中国悠久のやっちゃえ、やっちゃえ(中国)、まずはインド人から悔い改めよ(スリランカ、インド)、アイスウーロン茶の謎(香港)、南の国で戒める(ベトナム)、全面的に私が漕いだ件(ネパール)、スーさんの屁こき馬(ミャンマー)、ウミウシを呼べ、ウミウシを(バリ島)、標高5545メートルの真実(ヒマラヤ)、謎の女一号二号(タイ)、死海と肛門の秘密(イスラエル)、出張の海(パラオ)、雪山を勘弁してやる(日本)、不幸の小包(ベトナム)、坊主オブ・ザ・イヤー(ブータン)、花畑パカパカ王子(シルクロード)。
興味をそそるタイトルばかりである。実際読み始めると、トルコで熊男と遭遇し、スリランカやインドでは騙されて金を取られ、香港では冷たいウーロン茶の謎に迫り、ベトナムでは現地人から謎の小包を預かるなど、旅の理不尽な顛末に笑わされ、しょうもないギャグに笑わされ、ニヤニヤしっぱなしである。これだけギャグを取り入れながら、文章が妙なことになっていないのは驚きで、むしろ絶妙に組み込まれて、人を惹きつける魅力的な文章が出来上がっている。そして、この魅力がタマキンガーと呼ばれる熱狂的な宮田珠己ファンを生んでいるのだ。
この本はそもそも自費出版であった。それが『旅行人』編集長の目に留まり、やがて小学館文庫から出版され、そしてちくま文庫から再文庫化されて復活した、運が強く息の長い著者のデビュー作である。これはきっと、スリランカで養護施設に千ルピー寄付し、そのまたすぐ後に別の養護施設へ千ルピー寄付し、三回目に現れた養護施設の寄付を募るおばさんを断ったことへの、神仏のご加護に違いない。
最後に本書を読むときの注意点を一つ。
『電車の中で読むべからず』
しかし、あえてその禁を破るならば、この本の妖精がその勇気を讃えて、満員電車を快適なグリーン車に変えるだろう。周囲の奇異の目に晒されることなど、小さな問題である。
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投稿者:おどおどさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
アジアは、理不尽というか、いい加減な感じで困惑する事も、よくあるイメージ。しかし、それをちょっと自虐ネタのようにして書ける筆者が良い感じ! またアジア方面旅行したいな。
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<一読悶絶。一歩間違えれば誰でも遭遇する旅の理不尽の数々を、名もない素敵な一介のサラリーマンが独特な文体で描いた旅行エッセイ。こんな旅でも許されるのか、と旅に対する考え方が変わる一冊。また、誰でもちょっと視点を変えるだけで、こんなに面白く旅ができるというガイドブックにもなっている。口コミ人気で重版を重ねる幻の自費出版の奇書が、文庫になってメジャーデビュー。アジアの知られざる一面がここにある。>まさかの別文庫での復刊。ギャグ大連発の文章に驚きつつも、たまにプッと笑ってしまう。
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宮田さんのエッセイは、今まで、『わたしの旅に何をする。』と『ときどき意味もなくずんずん歩く』の2冊を読んだことがありました。本の内容より何より、宮田さんの文体が面白くて読んだ2冊です。羽田空港での飛行機待ちにいい本がないかと探していたところ、書店で、「幻のデビュー作、待望の復刊!」という帯の付いたこの本を見つけました。
アジアの旅で出会う、強烈な個性の人々にも増して強烈すぎる宮田さん。旅行記なのに、地理や歴史の説明なんかお構いなしで、宮田ワールドに引きずり込まれる感じです。少々、お下品な箇所が多いのが気にはなりましたが…。どの旅もけっして順風満帆とはいっていないのですが、それでも、何故か最後には、自分も旅をしたいという気持ちになりました。
この本、最初は自費出版で刊行されたそうです。この本がきっかけで、宮田さんがサラリーマンからエッセイストになられたと思うと、ゆるい内容とは似つかわしくない反応ですが、しみじみした気持ちになりました。
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この作者は読者を煙に巻くような執筆手法なので賛否両論ありそう。
ブログみたいな感じだが書籍としてはどうなんだろう?
最後はちょっといい感じで締めくくられた。
自費出版でその後メジャー出版社から文庫化されたというレアなケース。
そのためか、常識にとらわれないような書体にはなったんだろうなあと。
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書かれたのは10年以上前だが、旅行先がどうなっているこうなっているという話ではなく、旅行者としての心情が語られているので、今に通じる部分が多い。とくに旅先で出会う人々の生き様は、変わらない。最後のエピソードが、らしくない分だけいいかも。キュンとくる。
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宮田珠己の処女作。
あっちに行って騙され、
あっちに行ってボラれ、
あっちに行って勘違いをして。
色々な国の人たちとの出会いを
独特の宮田節で描いた
終始くだらなさ全開でお送りする
抱腹絶倒の旅行エッセイ。
この勢いのまま続けて
「東南アジア四次元日記」を読みます。
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とってもくだらなくて、きっと実際の旅の参考にはまったくならないけれども、とっても面白くて旅に行きたくなる本。ほかの著書も読んでみよう。
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たまきんぐ2冊目。
旅行記ということになっているのだが、特に旅先のスポットの詳細やその土地の背景など何も語られない。ただそこで糞便をもらしそうになったとか、金をぼられたとか、女に言い寄られたとか自分のことばかり。
この人の場合、語り口がさえまくっていて、抱腹絶倒。
涙目になって本を閉じれば、すぐに記憶から霧消するほどの薄い内容。
しかし私はそんな著者が大好きなのだ。
決して自分の金では買わないけれどね!
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219ページでついに声を出して笑ってしまった。バックパッカーの話でよく聞く話が御多分に漏れずここで出たか~と。限りなくふざけていて最高の本です。
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カナリフランクな文章で最初は読みづらく感じたけれど、慣れれば楽しい。
最近、旅行に行きたい欲求を抑えるために旅エッセイを読む。
短編集みたいで読みやすいことに気付いた。あー旅行に行きたい。
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2011年11月6日。タイトルどおり、アジア旅行記です。インド、タイ、中国、ベトナム、日本などなどアジア各国での実体験。とにかく文章がおもしろい!軽妙で不真面目(?)な感じ。笑えて、なんか元気出る!ハワイしか外国に行ったことないワタクシですが旅行記は好きです。とくにアジアは・・・「ちゃんとしてない」とこが多くて、行ってる人(著者)が苦労するほど、読んでるほうはおもしろいよね。
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若きタマキング青年の若気の至りが極まれまくっている爆笑処女作。公衆の面前で読むと、ついニヤニヤしてしまい、可哀想な人とみなされてしまうので要注意(笑)
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いわゆる旅行記という名のエッセイ集。
…なのだけど、これが大いに不真面目で、変でした。
具体的に言うと、読み始めて5行目くらいで既に変。
10行目まで来るとますます変で、非常に嫌な予感にわくわくと胸が高鳴ってくる。
19行目に辿り着く頃には、これはけしからん!と呟きながら本屋のレジに真っすぐ向かっていたのだから恐ろしい。
実はこの時点でまだ前書きを1ページ半しか読んでない。
たったそれだけで「なんかすごい変で面白そうな本」スメルがぷんぷんしてたのだ。
そして買って帰って読んだら、やっぱり変で…いや、思った以上にもっと変で、もっと面白かった!
残念ながら、この本は旅の参考には一切ならない。
というか、これは笑って読める「旅のお土産話本」であり、
美しい景色や心温まる国際交流みたいなイイ話も、旅の豆知識も、観光案内もない。
むしろ、ぼられたり騙されたり雪山で凍えたりと、だいたいロクな目にあってない。
これを読んで「こんな旅をしたい!」なんて1ミリも思わない。
思ったら変だ。
…けれど、なんだかんだあっても、彼は楽しそうなのだ。
旅が好きで仕方ないのが、このエッセイの端々から伝わってくるのだ。
だからいくらひどい目にあった話ばかり並んでいようと、読後はなんだか気分が軽い。
まんまとしてやられた感じがする、悔しい。
悔しいから後でAmazon検索する。
…べ、別にもっと読みたい訳じゃないんだからねっ!
火浦功を彷彿とさせるギャグタッチで書き出された、変だけど正直な旅の記憶。
電車とか喫茶店とかで読むと、ついニヤニヤして不審者っぽくなるので要注意!
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独特の話の運び方と文体で、かなり笑える。
でも、読み終わってみると、残っているのはそれだけ。
同じ筆者のほかの作品を読もうという気にはならない。