紙の本
「自分探しの時代」に読みたい時代小説
2010/08/27 16:49
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
戸田勘一(名倉彰蔵)の家は下士の身分。
父が亡くなったとき、勘一は少年でしたが
不慮の死を遂げたため、家は断絶されませんでした。
が、家は貧しく、藩校にも道場にも通えず、
竹籤細工の内職で家計を助けます。
一方、中士の次男に生まれた磯貝彦四郎は
藩校でも道場でも常に一番の成績をおさめる優秀な子ども。
その上、爽やかで、人を思いやる優しい心根の持ち主です。
次男のため、家督は継げませんが
婿養子の話に苦労しそうにありません。
この2人は身分を越えて、不思議な縁と
氣があうことから竹馬の友となります。
しかし、運命は2人を引き裂き
勘一は茅島藩8万石の筆頭国家老にまで上りつめますが
彦四郎は部屋住みの上に、不始末から蟄居を命じられます。
やがて逐電し、行方が知れません。
この2人の友情を描きながら
なぜ2人の運命が隔たっていくのかを描く力作です。
武士のなかにも身分があり、
そのなかから実力があっても、才覚があっても
出世の道など開かれず、
不用意な言動は、その地位から引きずりおろしていく。
そんな過酷な武士社会のなかで、どのように生きるのか。
「自分探し」がキーワードになっている現代人に
著者は生き方を問いかけます。
紙の本
その人生に悔いはなかったのか・・・
2011/09/26 23:18
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆこりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
消息を調べたときには、その男はすでにこの世にいなかった・・・。
茅島藩筆頭家老の名倉彰蔵は、固く友情を誓った男、磯貝彦四郎と
過ごした日々を思い出す。そして、自分が戸田勘一だった頃のことも。
不思議な絆で結ばれたふたりの男の、感動的な物語。
幼い頃、不幸なできごとで父を亡くした戸田勘一。彼を支えてくれたのは、
かけがえのない友だった。つらいときや苦しいとき、友はいつも見守って
くれた。だが、あるできごとがきっかけで、ふたりの運命は大きく違って
いく。出世の道を突き進む勘一。しかし、友は・・・。
光あるところに必ず影がある。表裏一体だけれど、そのふたつはあまり
にも違い過ぎる。日の当たる道を歩き続ける勘一。おのれの幸せを捨て、
おのれの人生のすべてを賭け、勘一の影に徹しようと決心した男。読んで
いて、胸が締めつけられるような切なさを何度も感じた。人はここまで
自分を犠牲にできるものなのか?私は彼に問いたい。「その人生に悔いは
なかったのか?」これを友情と呼ぶには、あまりにも悲しすぎる。ラストは、
涙がこぼれた。いつまでも余韻が残る、感動的な作品だった。
紙の本
泣きました。
2014/02/02 15:25
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投稿者:ねじまき鳥 - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公堪一がかっこ良すぎると思ったが、それだけの男であった。 最後、図書館で読み終えたが、涙が涙が 嗚咽でした。
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下士の嫡男 勘一は、子どもの頃から文武に優れていたため、上士が学ぶ藩校で学ぶことになる。その藩校で、中士の御馬廻役の息子 磯貝彦四郎と出会う。彦四郎は、学問にも剣術にもすぐれた天才肌、でもそれに奢ることもなく、さらに、身分差別もすることなく勘一とも良き友となり深い絆を結ぶ仲となる。
やがで、勘一は、農政を司る郡奉行付与力の下役になり、彦四郎は、城下の治安を守る町奉行与力助役へと出世する。あるとき、大目付の斉藤勘解由が、藩の剣術師範 森田門左衛門の悪行を見かねて、彦四郎と勘一に、上意討ちを命ずる。上意討ちに成功した勘一は、その後も出世を重ね、50歳のときには、茅島藩筆頭家老までに上り詰め、名も名倉彰蔵とあらためるまでになる。下士にもかかわらず、異例の出世をはたした勘一、正反対に、上意討ちでの失敗から剣士としての評価も下がり、あげくのはてに飲んだくれ、武士の妻に声をかけ藩から追い出され逐電、非業の死をとげる。
茅島藩筆頭家老となった勘一が、彦四郎が亡くなったことを知り、なぜあのような事件を起こし、そして、ひとり静かに死んでいったのかをあらためて思い起こす。そして、自分のこの出世が、彦四郎の影のチカラがあってこそのだったことに気が付く。
タイトルの通り、彦四郎は、勘一の影法師となり一生を終える。
勘一と彦四郎の友情を描いた物語。彦四郎は、友の夢のために自分の全てを捧げ影となり生きる。ただ、彦四郎の気持は書かれていない。本心はどうだったんだろうか?とちょっと思ってしまう、影のままで、勘一を助けることを心の底から願っていたのか、それとも影で支え、いつか自分も陽の当たる場所へ返り咲きたいと思っていたんじゃないのかとも感じてしまう。たった少しの違いで、運命は全く違う明と暗にわかれるってことはすごく感じた。
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「永遠のゼロ」の時代小説版。種明かしになってしまうのだが・・・
身分制度の枠があり、能力と志だけでは政ができない時代に、志高い勘一の能力を見抜いて、彼への友情と愛する女性の幸せを願う愛情のために、自分の表舞台では活かされないであろう能力を悟って、影法師となる彦四郎。
人にはそれぞれ能力がある。その能力を活かす場として人生で与えられた役割がある。人はその役割にいかに気づき、人生でその役割を全うできるかが大事である。
私も与えれた僅かばかりの能力を最後まで活かすべく人のために生きたい。
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今回はなんと時代小説、竹馬の友であった二人の武士の友情と生き様がつづられますが、泣きました。号泣です。今のところ俺的には文句なしで今年のベスト。読後にタイトルの意味がわかりますが、それにも泣けます。Amazonレビュー情報ですが、単行本には未収録の終章が小説現代4月号に掲載されているそうです。
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百田初の時代小説。
下士の倅だった二人が出会い、
一人は上り詰め、一人は落ちぶれたまま死んでいった。
職場の昼休みに読み始めたが
冒頭から泣きが入ってしまったので焦った。
最後まで一気に読みたくなる作品だが
ラストにもうひと盛り上がり欲しかったかな。
【図書館・初読・6/19読了】
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はっきりとした身分制度があった武士の時代。
下士の出ながら異例の出世を果たし筆頭国家老にまでなった名倉彰三。
彰三には運命的な出会いをした刎頸の友、磯貝彦四郎がいた。
文武両道、天才的な彦四郎は彰三のあこがれの存在でもあった。
そんな彦四郎がなぜ落ちぶれて淋しい最期を遂げなければなかったのか。
彰三の回想とともに物語はその謎にせまっていきます。
終盤に向かって一気に読ませる迫力たっぷりの面白さ。
徐々に浮かび上がってくる真実に胸がじんじんしてくる。
そして最期に彦四郎という人物の真の思いに気づいたときには切ない痛みとともに深い感動が押し寄せてくる。
『影法師』というタイトルからも読み手はうっすらとこの物語の結末を予測することができるのですがそれ以上のものがありました。
ちょっと出来すぎって感じもするんですが、デビュー作「永遠の0」をちょこっと思い出させてくれるような感動作でした。
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内容(「BOOK」データベースより)
光があるから影ができるのか。影があるから光が生まれるのか。ここに、時代小説でなければ、書けない男たちがいる。父の遺骸を前にして泣く自分に「武士の子なら泣くなっ」と怒鳴った幼い少年の姿。作法も知らぬまま、ただ刀を合わせて刎頚の契りを交わした十四の秋。それから―竹馬の友・磯貝彦四郎の不遇の死を知った国家老・名倉彰蔵は、その死の真相を追う。おまえに何が起きた。おまえは何をした。おれに何ができたのか。
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新田開発に功績があり、家老にまで上り詰めた下士の戸田勘一(名倉彰蔵)。
理不尽な理由で父親を上士に殺された勘一を支え続けた、勘一のあこがれの磯貝彦四郎。
上意打ちの際の処し方で明暗を分け、身を持ち崩したかに見える彦四郎の生き方について、最後に種明かしがある。「刎頸の友」という言葉そのままの関係だった。
武芸にも学問にも秀でていた彦四郎ががなぜ「影」に徹したのか。勘一の度量を見抜いて自らは退いたのか、勘一の妻になった女性との約束の故か、そのあたりはぼかしてあったが、知りたかった気がする。
勘一が進む道は父が導いた道でもあった。志半ばで殺されても、遺志というものは受け継がれるのだなと思った。
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裕福な生まれにありながらなお、聡明で文武両道をソツなく行き、友思いでもありリーダー的存在の彦四郎。
極貧の中に居ても野心家で賢くその才を認められ、上り詰めてゆく彰蔵。
竹馬の友となった境遇の違い過ぎる二人の半生、運命の悪戯。
いつでも彰蔵の光であった彦四郎。
いつのころからか自ら影となって生きる道を選んだ彦四郎。
次男、下士、農民それぞれが抱える厳しい現実。
何がどうとかいうことではなく、とにかく壮大で感慨深いものとなりました。
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『永遠のゼロ』 を読んで、作者に興味をもったので、今回手にしてみました。コレがまたまたすごい~。『永遠~』 に匹敵します。こんな面白い時代物は読んだことが無いです。大きな運命の流れは、どこかで誰かが作っていてくれているものなのかもしれないなぁ。
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最初は中々物語が進まないのですが、最後は一気に読めした。
ただ、途中で何となく先が読めてしまったのと、若干テンポがいつもの百田尚樹さんのよさでは無かったので星4つにしました。
伏線の拾い方はさすが百田尚樹さんで、友の想いを実現させるために、全てを計算し尽くして裏方に徹した彦四郎が本当に素敵でした。
最後、もうひと展開欲しかったな。例えば彦四郎が生きていたなど。。
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なぜこんなにも友を支えるのだろう…
もちろん友だからと言うだけで理由はないのだろうし彦四郎の持って生まれた性格なんだろうけど。
あとほんのちょっとだけ生きていてくれたら、たった一言の感謝が伝えられたのに。
きっと感謝なんて望んではいなかっただろうけど。
それでもたった一目で良いから合わせてあげたかったと思うほどに彼の心の内が伝わってきた。
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「ボックス」
「永遠の零」
「風の中のマリア」ときて、この「影法師」
それぞれ
青春、スポーツ
戦争
蜂を主人公にしたその一生(なんていうのかな)
時代物
とジャンルは全く違うので、つくづくひきだしの多い作家さんなのね、と思う。エンターテイメント性も高いし、すごい。
どの作品に共通するのは「絆」を描いていることかな、と思いました。
後半最後の謎が一気に説けていくところが一番面白かったのだけど、彦が主人公を後押しをした理由が、ただ自分が持たない夢を持って、自分が憎からず思っていた娘の夫で親友だから、というだけでは動機がいまひとつ弱いような気もしたので、星3つ。
「モンスター」を図書館でまだ予約待ちなので楽しみ。