紙の本
フランス人に対しても変わらない語り口で話したのだろうかと思わせるインタビュー本だった
2011/03/30 22:38
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
北野武へのインタビューと言えば、私は断然ロッキング・オンから出ている「自叙伝」シリーズを挙げたい。他のインタビューなどからでは窺えない北野武/ビートたけしの言葉が出ていると思えるからだ。
もちろんそこにはインタビュアーである渋谷陽一の力量も大きく影響していると思う。
そこへ、フランス人ジャーナリストによる北野武へのインタビューの本が出た。今更何を語らせようというのか。あるいは北野武が何を語っているのか。そこが興味深くもあり、怖くもあり、しばらく手を出せないでいた。でもやっぱり気になるのだ。それで、手にしてしまった。
「プロローグ」によると、インタビュアーは日本在住のフランス人ジャーナリストで、2005年春から2009年春にかけて数十回におよぶインタビューを収めてあるようだ。インタビュアーはビートたけしよりも(映画監督である)北野武として見ていたようだ。
以下、インタビューの内容は各章のタイトルを見るとわかりやすいかもしれない。
第1章 幸せを探して
第2章 浅草の舞台で
第3章 俺の分身、ビートたけし
第4章 テレビがすべて
第5章 日本のテレビ界
第6章 俺の映画の世界
第7章 死と直面して
第8章 償いと花火
第9章 ふたつの顔の三部作
第10章 映画の衝撃
第11章 テレビドラマ
第12章 絵は想像力の源
第13章 俺と科学
第14章 あっぱれニッポン!
第15章 アジアの問題、人類の危機
第16章 心のアフリカ
第17章 友達
第18章 畳のうえで告白話
自叙伝から始まり、ビートたけしとして活躍するテレビ界の話、映画監督としての自作解説、出演したテレビドラマの話、絵を描くこと、理科系への興味と続く。ここらあたりは以前のインタビューにも通じるところだが、映画で言えば『戦場のメリークリスマス』のことや『バトル・ロワイヤル』『血と骨』といった俳優として関わった映画のことにまで触れられていることやテレビドラマでの演技のことを語っていて、実はそのような経験が監督としてや芸人としての活動に影響を与えていることがわかる。
と、ここまでは比較的これまでにも読んだことのある話であったりしたが、北野武/ビートたけしを知るという点では何度読んでも面白い。
それに比べ後半の5章あたりは自身のことを離れて日本や世界のことへ話が移る。それはそれで面白くはあるのだけれど、なんだか文化人北野武として無理矢理話をさせているような感じもしなくはない。やはりインタビュアーにとって北野武はあくまで映画監督で文化人なので、このような話もさせたくなってしまったのだろうか。
そして最後はまた自身のことになる。比較的簡単に「成功とカネ」「有名でいること」「性欲」「自分の外見」「宗教」「死について」と語っている。これもまた、他のインタビューでも読んだことがあるような話でもあるが、比較的最近の言葉であるというのが意味あることかもしれない。
総じて、私たちがイメージしている北野武がそのまま表れている感じのインタビューであったと思うし、インタビュアーの偏見もあまり出さずにニュートラルな感じがした。
それにしても、これはたぶんフランス語でインタビューし、通訳(例のゾマホンがしていたらしい)を通じて日本語で答え、それをフランス語でまとめて出版したものを日本語に訳した本として読んでいるという、なんだかややこしいインタビュー本だ。北野武がもともと日本語で語ったものがどれだけ生かされているのかわからないが、日本語訳での北野武の語り口は比較的私たちが普段知っている北野武に近く、どこぞの出版社のインタビュー本のような違和感はなかった。それもまた、この本の印象を良くしているのかもしれない。
紙の本
フランス人による北野武へのインタビュー録
2021/10/10 19:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:もちお - この投稿者のレビュー一覧を見る
北野武関連の書籍は基本的には本人のインタビューを文字に起こして終了というもので、本書は主に映画監督としての北野武を主軸に生まれてから、インタビュー時点までをすべて語る構造になっている。すでに大半の話は既出のものであるが、フランス人がインタビューしているため、フランスに関するヨイショが後半になると目に付く。むしろ、北野武入門書として読むのにちょうどいい。ちなみに、フランス語の通訳はあのゾマホンがやっていた。
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もう、理屈じゃないです。北野武が、ビートたけしが、何をしゃべるのか、とにかく読みたいんです。こんな欲求を見事に満たしてくれる本。
全編にわたり、生い立ち・映画・テレビ・現代日本・アフリカ、などに関してモノローグ的に思うところを語ってゆく。本の体裁はフランス人記者によるインタビューということになっていますが、ほぼ独白本と言ってよいと思います。ところどころに記者の目から見た「KITANO」の解説が入ります。
正直、個別のテーマに対する考え方については、それは違うんじゃないか、と思う箇所もありました。でも、そういうことじゃないんです。当代随一のコメディアンでテレビスターで映画監督で俳優で、etc、etc...カリスマとかセレブとかそういう言葉ですら表すことができない(と私は思っています)、「たけし」という存在が、何を考え何に心を動かしているのか、それをこういう口述筆記に近い形で表すこと自体に大きな意味があると思います。
コンテンツとしては、戦場のメリークリスマスからわりと最近までの(残念ながらアウトレイジは含まれていない)、演じたor監督した映画が一連の流れとして理解できることが良かったです。
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“ココが良いっ!!”っていうように部分的に突出したところはないかもしれない。でも、全体的に“グ~ッと沈み込む”深い感じを受けました。読んでよかった。
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芸人として、映画監督として、年齢を重ねるごとに存在感を増す北野武。他にも多くの彼に関する著書はあるが、この本は特に北野武の考えていることがとても素直に読み取れる一冊だと思う。
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フランス人である著者がヒアリング(ゾマホンがインタープリタとして協力)を通じて、北野武の生い立ち、映画に関する思いや政治感なんかをレポートしたもの。生い立ちや映画の話はおもしろく読めた。ただ北野が直接書いていない分、毒気が抜けてややエレガントな雰囲気を醸し出しており、コアな北野ファンには物足りないかも。
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フランス人によるたけしのインタビュー。わざとらしいたけしのギャグが無い分、楽しく読める。最後のフランス賛美は、とってつけたようだが。
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たけしの映画をみたときに、たけしのことが知りたくなった。
たけしが書い著書やたけしについて書かれた著書はほかに多くある一方で、私がたけしについて書かれた本を読むのがこれが初めてなので、対比はできないが
この本は、映画の事を軸に彼の生い立ち、芸人、映画監督等自身の話から国際政治・日本映画界・海外映画賞など多岐にわたってたけしが言及している。
とりわけ、自身の映画についてはページが多く割かれており、たけしの映画について知りたかった私には好都合な本であった。
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フランス人記者がインタビューアーのせいか、いつものようなはぐらかしたような言い方がなく、アートへの造詣、政治観、慈善活動など率直なたけしの意見を読むことができて、たけし本を読みなれた人はちょっと驚くかも。原書は仏語でそれの和訳になるのだが、一応たけしの語り口調を模して和訳しているところに苦心がしのばれる(女性一般のことを「オネエチャン」としてたり w)。
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最近「ロッキング・オン」自伝シリーズが内容的におとなしくなってしまったように感じていたところのこの翻訳版自伝、知らなかった情報も多く、また、たけしの素直な思い出のモノローグにはとても心を打たれた。自分の映画に対する冷静な洞察も秀逸、読み応えあり。ただ、アマゾンのレビューにも誰かが書いていたが、後半の政治の話などは少し眉唾モノ。少なからず(記者による)バイアスがかかっているような気がしないでもない。それからもう一つ問題なのは、原本から削除された部分が多いということ(まるごと一章抜けているらしい)。翻訳本は(しかもインタビュアーによる自伝の翻訳本などは)なかなか正確に評価できないところがあるのだな、と実感。まあでも、そういうことを差し引いても、文章もうまいし、本自体は相当面白い。「ロッキング・オン」のほうも引き続き頑張ってもらいたいですね。
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たけしの言葉が翻訳調で語られてるのはもちろん違和感あるのだが、内容はとても興味深い。そしてかなりボリューミー。北野武の特異な人間像を浮き彫りにするインタビューとしては労作だと思う。アンビバレンツな死生観が興味深い。
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一気に深くのめり込ませてもらった。
今の日本の事とか、奥さんの事とか、普段、あまり語られない北野さんの
内面が深く記述されている。
ちょっと寂しいのは、この本の著者はフランスのジャーナリストだと
いうこと。
日本での評価と世界での評価が、これほど違う方も珍しい。
とにかく深い人だ。こういう人になりたい。
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凄い本だった。読んだあとも衝撃はなかなかやまず、内省が続く。
このところ浴びるようにたくさんの本を読んできたが、当然のことながらそうそう良書にはめぐり合えてこなかった。どの本もそこそこ面白く、読み終われば自然に忘れていくことができる。
しかし、この本はそうはいかない。影響が強すぎて、とうぶん別の本は読めそうにない。この本が良書かどうかは別として、しばらくは北野武の生み出す世界から抜けられそうにはない。
『Kitano par Kitano-北野武による「たけし」』は、仏人ジャーナリストのミシェル・テマンが五年間に渡って北野武にインタビューし、生い立ちから現在までの軌跡、映画、メディア、女性、政治、支援活動…、あらゆる北野武の思想と行動を徹底的にさらけだしている。
北野武はよほどこのフランス人ジャーナリストを気に入って、信頼しているのだろう。非常に饒舌だ。日本で出版された他のたけし本ではありえないほど、内容が濃い。日本ではこういう本は作れないのか? 北野武がフランスを愛するのがわかる気がする。
この本は北野武が日本語で話し、それをベナン人のオスマン・サンコンがフランス語に通訳してテマンに伝え、テマンがフランス語で書き、それを松本百合子氏が翻訳している。
こうした複雑な多重性を持っているためか、インタビュー本でありながら、非常に虚構性を感じさせる本になっている。それは、ここに書かれていることが、どこまで正確に北野武が最初に話した言葉のままなのかがわからないところがあるからだろう。そのために、虚構と事実がどちらともつかず、からまりあって提示されているような不思議な感覚を持たされる。そしてそれが却って、もっとも北野武に近づいたような錯覚を与えられるのだ。
この錯覚を解くためには、とにかく北野武の言葉を聞き、映画を観続けていくしかない。
わたしはすっかり北野武の術中にはまりこまされたようだ。
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10代のときから北野武は多面体だとおもわずにいられなかったけれど、近年はさらに磨きがかかって一体何面体なんだろうと思うほど可能性に満ち、さらにいろいろな側面を見せ始めている気がする。
政治、映画、数学、科学、文学、差別、哲学、宇宙…どんな切り口でも納得が行く回答をする彼はまさに異能の天才だろう。
またインタビューを数年にわたり担当したフランス人ライターの粘り強さにも敬意を表したい。
今までたくさんのたけし本を数十冊にわたり読んで来たけれど、その中でもとても読み応えがあり内容も充実し、本来のナイーブな北野武を赤裸々に描いた優れた一冊だと思う。
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僕の最も波長の合うアーティストは、漫画家・新井英樹さんとこの北野武(ビートたけし)さんなんですけど、ここまで濃い生の言葉ってすごい嬉しくなっちゃうよな。影響された映画が一番興味があって、真っ先に読んだんですけど、それ以上に引き込まれたのは政治関係のお話でした。「ここが変だよ、日本人」をきっかけに知り合ったゾマホン(二代目そのまんま東)から提起されたアフリカの問題とチャリティの欺瞞。コメディアンっていうのは社会的な特別なズレた位置にいて、どんな毒舌の社会風刺をやって茶化すことができる。