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日露戦争時代のある医学徒の日記 小野寺直助が見た明治 みんなのレビュー

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紙の本

明治時代の医学徒の生活ぶりが活き活きと感じられる。

2010/07/18 09:11

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 福岡という町は地方都市でありながら、日本各地に縁のある方の末裔が住んでいる。その多くは博多港に上陸した旧満洲からの引き揚げ関係者であるが、大陸に近く、再び満洲に帰れるかもしれないという願いと、何事にも適当な大陸的風土が気にいって住みついた人々である。そういう下地があるため、帯に付された「福岡」という文字と著者の「小野寺」という東北地方特有の苗字を見て、引き揚げ関係者と思いこんでしまった。
 しかしながら、ページを進めるうち、著者の祖父小野寺直助が盛岡中学から東京の第一高等学校に進学し、新設の京都帝国大学福岡医科大学に進学した話だった。年代も確かめずに地名と苗字から引き揚げ関係者と勘違いしたが、国を思う熱意と若気の至りから福岡まで医学の勉強にやってきたことが分かった。ロシアの南下政策により半島、大陸に日本が関与しなければならなかった明治時代中期、著者の祖父が残した日記から当時の医学徒の生活ぶりが窺えて、ついつい、時間を忘れて読みふけってしまった。
 この一冊は、日記に残されたものを基にして描かれているが、そこに登場する人物の名前、それは著者の祖父小野寺直助と密接に交際のあった人だが、歴史書と勘違いするほどだった。電力の鬼といわれた松永安左衛門、水平社の松本治一郎、浪花節の桃中軒雲右衛門、三菱重工の郷古潔、海軍大尉時代の米内光政、新聞人の福本日南、全国の帝大総長を総なめにした山川健次郎、物理学の田中館愛橘、八木アンテナの八木秀次、野口英世、日本女性初ともいわれるソプラノ歌手の三浦環、朝日新聞から政治家に転じた中野正剛、果てには皇后陛下のご母堂、共産中国の要人で医者の郭沫若まで。
 さらに、日本海海戦での爆音で障子や襖がガタガタ鳴ったという言い伝えが福岡・博多の街には残っているが、それが事実であったことを日記が証明してくれた。

 日本という国が世界に伍するため競って近代化に励んだが、本書を読みながら明治日本の情景が目前のスクリーンに映し出されるかのようだった。高名な人物の日記は後世の人々に読まれても恥ずかしくないように書き直しされている場合が多い。しかしながら、この小野寺直助の場合は自身の日記であるために心情を吐露し、それだけ臨場感に溢れている。当時の若者が何を考え、何に悩み、何に憧れたのか、実際はこの一冊には収まりきれないほどあると推察するが、それでも十分にポイントを押さえた内容になっている。
 皮肉なことに、著者の祖父小野寺直助は九州帝国大学医学部教授を定年退官した後、満洲の新京医科大学教授に着任し、日本の敗戦にともない引き揚げ者となっている。懐かしき福岡・博多の街を目にして、どんな感慨を抱いたことだろうかと想像をめぐらした。
 膨大な日記の中から、ロシアとの緊張関係にある時代を中心にして綴られている。まだまだ、視点を変えれば時代を感じるものがあると思うので、続きに期待している。

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