紙の本
読めば、あっという間に違う空間へ連れて行ってくれる 連作短編集
2022/07/25 08:35
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「水が笑う、とあの本にあった。」
冒頭の一文はこちらでした。
読みはじめから、気持ちよいヒタヒタ感があります。
ひんやり。
読み進めると、Sの文字が気になり、いろんなSの文字がアピールしてきます。
えっ、あそこにも!
ここにも!
あのね、Sと言うのは、例えば、
シスターのS、
シルバーのS、
スネークのS、
スマイルのS、
ストーリーのS、
まだまだ登場します。
さらさら水のように流れる吉田篤弘さんの文章の中からの
S探しがどんどん楽しくなってくる。
彼の小説は、読んでたら引き込まれる系(こんなのあるん?)だと、私は思います。小説で遊ばせてもらう感じ、うまく表現できませんが…。
あとね、淡いグレイのセーターをつみれ色のセーターと彼は言うのですよ。
つみれって、おでんのつみれよ。
もうこの表現にキュンコロリです。
6遍の連作短編。
あっという間に、違う空間へ連れてってくれます。
紙の本
吉田篤弘氏の水のようにきらめく、美しい物語6篇を収録した短編集です!
2020/09/19 10:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、映画化された『つむじ風食堂の夜』をはじめ、『それからはスープのことばかり考えて暮らした』、『小さな男*静かな声』、『圏外へ』、『パロール・ジュレと紙屑の都』、『モナ・リザの背中』、『木挽町月光夜咄』などの話題作で知られる吉田篤弘氏の作品です。同書には、水のように流れ、きらめく短篇物語が6篇が収録されています。その一つは、アルファベットの「S」と「水読み」に導かれ、物語を探す物書きの話であり、二つ目は、影を描く画家の話であり、三つ目は、繁茂する導草に迷い込んだ師匠と助手の話であり、四つ目は、月夜に種蒔く人の話、そして五つ目は、買えないものを売るアシャの話、最後は、もう何も欲しくない隠居のルパンの話です。どの物語も、人々がすれ違う十字路からある一つのそれぞれの物語がはじっていきます。ぜひ、多くの方々に読んでもらいたい物語集です!
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ファンファーレが鳴る。十字路で出会う。
どちらかというと『圏外へ』の吉田さんの方向。
ぼくは『つむじ風食堂の夜』の吉田さんの方向を期待してる。
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小説6篇。
あとがきを見ると、もともとは『十字路のあるところ』という単行本だったものを加筆・修正をした作品だそう。
彼の作品を手を取るのは「つむじ風」に続き、2作目。
6話それぞれ、舞台も登場人物も違うが、
どれも、現実とちょっぴりだけ繋がっていて、
大きく緩く歪んでいる。
心に残ったのは、『水晶万年筆』と『黒砂糖』。
鏡の向こう側の世界が広がっている。
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路地の十字路に隠れている言葉達と、遊んでいる気持ちになる。物語は遊んでいるうちに心にじわじわと沁み込み、はんなりと忘れられない。文章のリズム感のよさなのか、読んでいてとても心地いい。
六篇の短篇集が収められている。十字路に降る雨や、落ちる陰や、漂う甘酒の匂いまで、どれもこれもが愛しい。
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クラフト・エヴィング商會の吉田篤弘氏による短篇集。かつて朝日新聞出版社から刊行された〝十字路のあるところ〟を再編集したものだそうです。
非日常に迷い込んでしまった者たちのお話ですが、居心地の良い不可思議な日常感が漂っています。
この幻想的な6つの物語は、実在する東京の街がモチーフになっているそうです。昼となく、夜となく、見知らぬ路地に、つい足を踏み入れたくなるような小説でした。
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読みしなからなんかデジャブ。
あれ?この話知ってる…。
「十字路のあるところ」の改題、加筆修正、文庫化でした…。
紛らわしい!!!
でも何回読んでも面白いです。
そしてやっぱり路地に雑草を生やす仕事の人の話が好きです。
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綺麗な文章に惚れ惚れしました。私が読んだ吉田氏の小説は確かこれで4冊目だけど、これが1番好きかも知れない。この短篇集の中では、「ティファニーまで」「ルパンの片眼鏡」が特に好き。前者の、大真面目に屁理屈を並べたてているところが屁理屈好きの私にはたまらない。森見氏や伊坂氏は奇怪且つ抱腹絶倒な屁理屈を作中の登場人物に言わせるのがお得意だけど、吉田氏の屁理屈は詩的だ。どの作者のも好きだけど。
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2011年1月3日読了。
読み始めてから『十字路のあるところ』の改題だと知る。ちょっとがっかり。
あちらは写真入りで、大人の童話の世界。こちらは文学的に感じた。
前者の方が吉田さんの作品らしくて好きかな?
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不思議。受け取る側の稚拙さで、今はこの言葉しか出てこない。「百鼠」と合わせて、じっくり再読したい作品。
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東京の路地の十字路から想起された物語たち。夢と現、日常と非日常が錯綜し交叉する物語世界が素敵です。この作者は町を描くのが本当に巧いですね。そこに住みたくなるような描写がここかしこに。少し地から足を離したい時に読みたい一冊ですな。
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こんなに身近に感じるのに、なぜこの十字路はどこにも見当たらないんだろう。
絶対ないのに、なんでか「あるのかも」って思わせてくる巧みな書き手に完敗。
こうなったら見つけるしかないな。
探そう。
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中公文庫のありそうなところまで走りました。ああそうか、『十字路のあるところ』の改題(「HBの鉛筆」による加筆/訂正)だったか、納得。文庫版「あとがき」にあるように、単行本(2005年、朝日新聞社刊)には写真も収録されてます、そちらがお好みの方は、そちらをどうぞ。
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不思議な雰囲気の短いお話がつまってます。
きれいな文章なんだけど読むのが少し億劫でした。
読み進めるのが作業的になってしまい残念です。
話の感じはどれも好きですが、ルパンのお話が一番好みですね。
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この人の書く小説は、いつの時代の、どんな地域なのか分からなくなります。
この本に限っては日本であるような描写があるので、そうなのでしょう。多分。
でも描写が細かく、しかし面倒にならない程度で、描かれているので、本の中のその場所に立っているかのような気持ちになります。
ヘンテコだけど、でも人間の性質や腹の底からのじんわりとした感情を感じさせます。
ドラマチックな展開や衝撃的な結末を期待して、本を読む方はやめたほうがいいかもしれません。
続きが気になるようなところで終わる話もありますし、淡々と進んでフワリと終わります。
何回か読み直したくなる作品です。