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紙の本
読みやすいミステリでした。
2010/10/15 21:06
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とら子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近は変わった表現や難解なトリックを使うことが美徳であるかのごとき様子も見受けられますが、この「再会」に関しては、読みやすいミステリだと思います。
同級生4人が現在の事件と23年前の事件に関係しているという、ややサスペンスにありがちな題材ではありますが、4人の現在の状況と性格的な特徴が明解であるせいか、読み進む上で「あれ?この人誰だっけ?」「これって誰のことだっけ?」などと前のページを見返したりする必要がありません。
23年前の事件については、多少の間、小出しに引っ張ったけれど、ちょうど良い頃合で一旦は明らかにする、というように、読者を余りイライラさせずにいたと思います。
気になる箇所もありました。同級生4人の中のひとりの心理描写が途中で変化したところがあって、マズイかな、とは思いました。独り言として心理描写している部分で、同じ行為に対して、例えば、「誰がやったんだろう?」と言っていたのに、途中で「自分がやったのだ。」になっていたら、「ん?」となりますよね。そんな気になる箇所はありました。
ま、そんなところも全体に大きく影響を与えることなく、読みやすい文章で書かれているミステリです。
県警捜査一課の南良(なら)刑事が、しつこくこだわって真実を明らかにしていくのですが、嫌味がなく、優秀である分、気持ちよく読めました。
終盤、偶然がうまくいきすぎでると考えられることがあり、「ご都合主義の典型」と辛口評価されている作家先生もいらっしゃいますが、私としては、むしろ救われた気がしました。ホッとする偶然に感謝感謝でした。
ありえないヒーローとして科学者を持ってきたり、難解な分野のトリックを使っていたり、残虐なことを誇示したりするミステリよりも、日常の中に想像できるミステリであるところが、この「再会」の読みやすさだと、私は思いました。
紙の本
傾向と対策を考えてしまわずにはいられない人に贈りたい
2011/03/01 01:57
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けい - この投稿者のレビュー一覧を見る
傾向と対策。まるで受験生のようですが、よくよく考えれば、気づけば、私たちはあらゆることに「傾向と対策」を見出して臨んでいる気がします。たとえば、恋愛。たとえば、仕事。
ここで、みなさんに、いや、自分自身に問いたい。あなた(私)の考える傾向と対策なんてものは役に立つのか? そもそも、そんなもの本当に存在するのか? と。
話は変わります。いきなり、江戸川乱歩賞に飛びます。乱歩賞といえば、日本で最高クラスの推理小説の登竜門と言ってもいいでしょう。新人賞といえば「ありもしない傾向と対策にとらわれない新鮮で、前代未聞、業界に新しい風を吹き込むことを期待する」なんて無茶を注文されることがしばしば。
そして、江戸川乱歩賞こそ、そのネームバリューゆえか、「傾向と対策」が語られて、実は存在しているのではないかと考えられていた賞(異論・反論は承知)なのです。
ざっくり書けば、その傾向と対策とは、目新しい特殊な業界での「お勉強ミステリ」的な情報をたくさん盛り込んだ、その業界での知識を生かしたミステリを書くこと、だったように感じます。
さて、今回、紹介する第56回江戸川乱歩賞受賞作は「異質」でした。これまでまことしやかに語られてきた傾向と対策をまったく無視した、露ほどにも感じさせないのです。
どこかの誰かの物語ではなく、どこかの私の物語、と感じるのです。
どこにでもいるような普通の生活をしているメンバー四人の幼馴染。彼らがかつて遭遇した事件こそ、非日常であれ、そんな特殊な体験すら風化してしまうほど、登場人物たちは日々の仕事や家庭の忙しさに追われる普通の人々。そんな彼らが関わってしまう新たな事件。そこには「ひょっとしたら自分も」と読者が感じる一方で小説のなかでこそ想像をめぐらせることができる、という絶妙な距離感があります。
誰かが嘘をついている?
誰もが嘘をついている?
ここで描かれる謎は、日常と地続き。だからこそ、説得力を持ち、読者は感情移入できるのです。
選考委員のなかでただ一人、乱歩賞受賞者の東野圭吾先生はこう語っておられます。
「乱歩賞の傾向と対策」のようなものから解放されたのが勝因だと思う。
ごりごりの本格ミステリの世界観では成立するのが微妙なメイントリック。でも、この作品の肝はそこにはないからいいのだ、と感じます。さまざまな登場人物の「再会」が描かれるじんとくる一冊。
ここからの乱歩賞が楽しみで仕方ないです。
紙の本
読者を混乱に巻き込む。
2011/12/12 18:59
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
再会 横関大(だい) 講談社
推理小説です。出だしの「髪を切る」美容室シーンは斬新で気に入りました。店長岩本万季子、彼女の元夫清原圭介建築士、佐久間直人佐久間産業社長の息子、飛奈淳一(とびな)地元警察署刑事、彼らは同級生で35歳です。彼らが23年前、小学校の校庭に埋めたタイムカプセルに、この物語の核心が納められています。舞台は神奈川県三ツ葉市、人口20万人のベッドタウンです。嘘を解き明かしていくのが、県警捜査一課の南奈(なら)刑事30歳で、彼が軸になって推理は進んでいきます。
私立中学校受験にからんだ母親岩本万季子さんのわがまま勝手、よくいえば母性愛で、正規のルールを無視したために殺人事件が勃発(ぼっぱつ)して、周囲の人間の過去が暴(あば)かれ、予定されていた未来が崩壊します。発端は、万季子さんの小学生息子正樹くんの行動です。作中で、彼の気持ち表現が薄いことが気になります。
犯人が複数でみんなが仲間ということも考えました。作者は意図的に、タイムカプセルの中身を読者に知らせました。中身について、読者は公表の前に気づけます。公表した目的は何だろう。そして、誰がタイムカプセルを掘り起こしたのかも同様に知らせました。読者を混乱させるためという目的でしょう。わたしは、もしかしたら、もう1個タイムカプセルが校庭に埋められているのではないかと推理しました。
23年前、12歳の4人に何があったのかをドラマチックに記述してあるのは成功です。銃弾の発射数は、気になるところです。読みながら何度も計算しました。飛奈淳一刑事は殺されるのではないかと心配しました。