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卵をめぐる祖父の戦争 みんなのレビュー

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みんなのレビュー93件

みんなの評価4.4

評価内訳

93 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

青春の輝きとたくましさを描いて見事!「卵をめぐる祖父の戦争」。

2011/04/27 15:23

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 著者の祖父の話、という形で綴られる物語。ハヤカワのポケミスから
出ているので昨年のミステリーベストテンにも選ばれてはいるが、ミス
テリーの要素はほとんどない。裏表紙に書かれている「歴史エンタテイ
ンメントの傑作」という言葉が一番ピンと来る。

 さてこの物語、時は1942年の1月、場所はソビエトのレニングラード、
ドイツ軍がここを包囲した壮絶なる「レニングラード包囲戦」の真った
だ中の話だ。主人公のレフは17歳。拘置所に入れられるはめになった彼
は、そこで脱走兵のコーリャと出会う。彼らはなぜか秘密警察の大佐に
呼ばれ、娘の結婚式のケーキのために卵を12個調達してくることを命じ
られるのだ。期限は1週間以内。もちろんそれは、命がけの任務である。

 何と言っても素晴らしいのがこの2人の造形だ。詩人を父に持つレフ
は恐れとおののきを持つ硬派な17歳、一方のコーリャは口から先に生ま
れたようなお調子者。この2人が丁々発止のやりとりを繰り返しながら
卵を求めてさまよう姿はこっけいでさえある。しかし、そこは戦場。彼
らは人肉を売ろうとする男女や娼婦にしたてられた少女など悲惨な光景
を目の当たりにする。そして、パルチザンたちとの出会い。そこで彼ら
はヴィカという女の子と出会う。彼女に対して特別な感情を抱くレフ。
彼らはドイツ軍の捕虜の一群にまぎれこみ…。

 卵の話が中盤でかなりあいまいになってくるのでどうなることか、と
思っていたら、最後になってやっと話が戻って来る。この終盤の盛り上
がりは本当に見事。ドキドキするぐらいおもしろい。そして…結末は…。
後日談的な最終章が素晴らしい。ラストのひと言はグッと来る。読み終
えた読者は、誰もが序章に戻るだろう。この小説、反戦的な要素ももち
ろんあるが、若さの輝き、そのたくましさを描いて見事だ。これからも
時々、レフやコーリャ、そしてヴィカに会いたくなってページを繰るこ
とになりそうだ。

ブログ「声が聞こえたら、きっと探しに行くから」より

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紙の本

戦時下のレニングラード、バカバカしい指令に命をかける若者たち

2011/01/21 09:02

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ルルシマ - この投稿者のレビュー一覧を見る

「ナイフの使い手だった私の祖父は十八歳になるまえにドイツ人をふたり殺している」
作家のデイヴィッドは、祖父のレフが戦時下に体験した冒険を取材していた。
時は一九四二年、十七歳の祖父はナチス包囲下のレニングラードに暮らしていた。

居住しているところの消防団であったレフは、ある晩、落下傘降下途中で凍死したドイツ兵のナイフを奪った。
それがソ連警ら兵に見つかり、銃殺刑になるところを、拘置所で出会った脱走兵コーリャとともに、秘密警察の大佐の元へ連れていかれる。
大佐は、5日後に娘の結婚式を控えていた。
結婚式のウェディングケーキに使う卵が、レニングラードにはなかった。

「命を助ける代わりに、1ダースの卵を調達して来い」

ドイツ軍による包囲戦で、町は飢餓状態。
二人はあてもない卵探しに出かける。

こんな出だしをみるとコメディ要素が感じられる。
相棒コーリャは、饒舌で色男、頭もいい。
レフは常々、根性無しな自分にコンプレックスを持っている。
しかし、まったく正反対な二人の珍道中はそんなにやわなものではなかった。

人肉売買の夫婦、地雷を背負わされた犬たち、ドイツ秘密警察に囚われた慰安婦の住家・・・・

冬の原野を、若者二人が飲まず食わずで歩いて包囲網を突破、
ドイツ軍の懐へと入っていく。


少年特有の固さが残るレフと、いろいろ訳知り顔で多弁なコーリャは、
お互いたった一人の友達になっていくわけで、
軽妙なしゃべりや反抗勢力パルチザンの狙撃兵の少女との恋や、
緊迫した敵とのやり取り、、
「猫象」ほどではないにしても、命を賭けたチェスを打つ場面もあり、
どんどん先が知りたくなる。


敵軍に包囲され市民が次々死んでいくなか、
軍中枢には有り余る食材、そしてたった1ダースの卵を見つけるために命を危険にさらすことの愚かさ。
レフたちの崖っぷちな毎日は、初めて知るソ連の顔で、
これも去年読んだ「チャイルド44」の怖さとはまた別だった。

第2次大戦中、ソ連がこれほどドイツにやられていた現状を、
恥ずかしながらまったく知らない。
粛清とかの内部抗争以外は、おおよそ常勝・ソ連のイメージを勝手に抱いていた。

そんな壊滅状態の町で、レフやコーリャのような若者がどんな生き方をしていたか、
その一部分くらいは垣間見ることができたのかと思う。

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紙の本

カズオ イシグロの作品みたいに、一般文芸書として売った方がよかったんじゃないか、売れ行きだけじゃなくて評価ももっと違ったんじゃないか、老婆心ながらそう思います。井上ひさし『一週間』を思わせる傑作・・・

2011/06/29 19:24

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

全く期待していませんでした。確かに、早川ミステリはデザインを一新しました。もともと、勝呂が装幀したポケミスは良くも悪くもそのバタ臭いデザインが特徴でした。版型と小口の着色と相俟って、いかにも海外ミステリのPBという雰囲気が溢れていた。ところがです、版型、小口はそのままでも、表紙を変えるだけで、ここまで雰囲気が変わるのか、そう思いました。

ともかく色合いに温もりがあります。ウォームグレーを基調とするだけで、ホッとする。茶色や赤系の色がもう少し多ければ、逆にまたバタ臭くなったはずです。そういうところが、新しく装幀を担当するようになった水戸部 功のセンスでしょう。とはいえ、どうタイトルを見ても、ミステリの気配はしません。裏表紙を見ると
       *
「ナイフの使い手だった私の祖
父は十八歳になるまえにドイツ
人をふたり殺している」作家の
デイヴィッドは、祖父のレフが
戦時下に体験した冒険を取材し
ていた。ときは一九四二年、十
七歳の祖父はドイツ包囲下のレ
ニングラードに暮らしていた。
軍の大佐の娘の結婚式のために
卵の調達を命令された彼は、饒
舌な青年兵コーリャを相棒に探
索に従事することに。だが、こ
の飢餓の最中、一体どこに卵な
んて?――戦争の愚かさと、逆
境に抗ってたくましく生きる若
者たちの友情と冒険を描く、歴
史エンタテインメントの傑作。
       *
とあります。ミステリ、ではなく〈歴史エンタテインメント〉の傑作。しかも、かなり分厚い。というわけで、最初はあっさりスルー。でも、書店に行くたびに気になる。手にしてみると、ともかく表紙の手触り、しなり具合がとても心地よいわけです。もしかしてこっちの紙質のほうも変えたのかもしれない、そんな気になります。ミステリじゃないからといって、読んで損するわけじゃない、まいいか、と一ヶ月以上の逡巡を経て読むことになりました。

裏表紙だけ読むと、戦争、冒険という括りのお話かと思います。でも、描かれるのは第二次大戦中のソビエト軍の、というかソビエトの様子で、読んでいると何だか村上春樹の小説を思い浮かべたりします。だって、お話の核にあるのが卵探しなんです。宝じゃありません。スパイ探しでもない。アリステア・マクリーンはジャック・ヒギンズじゃあ決してない。どちらかというと、井上ひさしの『一週間』のほうが近いかもしれません。

そう、ポケミスだからって、ミステリを期待したらダメです。血沸き肉踊る冒険小説を思ってもだめ。変則の伝奇小説、くらいであれば掠る。むしろ、素直に歴史エンタメ、とそのまんま受け止めるのが自然。それにユーモアを交える、そう、やはり井上ひさし、あるいは村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』を楽しむ、そういうつもりでいると、満足できるんじゃないでしょうか。

34歳になるデイヴィッドは、小さな保険会社を経営する祖父母の近くで暮らしていましたが、今はロサンジェルスを根城に、ミュータントのスーパーヒローもののの脚本などを書く作家で、34歳になります。今まで、あまり祖父が参加したという戦争に興味がなかったのですが、戦争のことが書きたくなり、一週間にわたり祖父に取材することにしました。

デイヴィッドの祖父レフ(リョーヴァ)・アブラモヴィッチ・ベニオフは、戦争当時、レニングラードに住む17歳の青年で、父親は有名な詩人ですが、1937年、勤めていた出版社から連行されて以来、戻っていません。母と妹のタイーシャは、戦火を逃れ疎開しています。レフの生活といえば親の目がないのをいいことに、死んでいたドイツ兵のものを略奪したりして過ごす、かなり危ないもの。運悪く、今回は現場を見つかり、逮捕されてしまいます。

そして監房に入れられることになりますが、ここで、その後、行をともにする相手と出会うことになります。男の名はニコライ(コーリャ)・アレクサンドロヴィッチ・ヴラゾフ、金髪碧眼の脱走兵で、口から先に生まれて来たような男で、既に逮捕されていたレフの監房に、同様に逮捕されて入れられるのです。このニコライ、ともかく主導権を握るのが上手で、その後の探索行でも一人で物事を勝手に決めていくことになります。

この二人に、一見、なんでもない、でも戦時下のソビエトでは極めて困難な任務を与えたのが、グレチコです。ドルゴルーコフ一族が住んでいた邸宅に暮らす秘密警察の大佐で、自分の娘の結婚式でだす食事に不可欠な卵を1ダース、探し出すことをレフとコーリャに命じたのです。案外、簡単に思えた仕事は、徐々にその難しさを二人に見せ始めます。

二人の探索行に、さらにドイツ兵を狙うパルチザンのリーダーで、黒いひげを生やし、古い狩猟用ライフルを持つコルサコフや、その仲間でパルチザンの名射撃手で、痩せているせいか少年のようにしか見えないヴィカ、彼らの宿敵ともいえるドイツ軍特別行動部隊の少佐アーベントロートが絡んで、任務は一層の困難に見舞われます。このアーベントロート、性格は残忍かつ鋭い洞察力をもつ最悪の存在で・・・

どうなる、どうなる、で読ませる点では一級の冒険小説レベルですが、お話自体は地味ですし、作家の狙いはハラハラドキドキさせることではなく、この理不尽ともいえる秘密警察の大佐の命令から、ソビエトの軍や警察組織の状況、そしてそれに負けるとも劣らないドイツ軍少佐たちの行動、そしてソビエト内のパルチザンの様子を描くことにあります。

といって、無味乾燥な告発ドラマかといえば、決してそうではありません。悪人もですが、主人公たちの様子が、その勇気もですが、いい加減さや嫌らしさも含めて実によく描かれていて、時折見られるユーモアは、状況が悲惨なだけに、読者をほっとさせてもくれます。そしてラスト。やはり、井上ひさしと村上春樹を連想したことは間違いじゃあなかった。でも、これって、ポケミスじゃないほうが売れたんじゃあないかな・・・

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紙の本

卵を持て、さもなくば死

2015/10/05 02:28

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:こでまり - この投稿者のレビュー一覧を見る

面白かった! ナチス・ドイツに包囲されたレニングラード。厳しい寒さの中、3年弱にわたる包囲戦で食料にも困窮する住民たち。ハンニバルもどきも横行するような食料事情下での「卵を1ダース持て、さもなくば死」の状況ながら、そこの男子! 下ネタ多すぎ。戦争の凄惨さが詰まった話にもかかわらず、驚くほど軽やかかつコミカル。『中庭の猟犬』、世紀の名作になりそうな予感でした。最後のセリフまで傑作。

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紙の本

愚かな命令を実行する二人の物語があぶりだす戦争の愚かさ

2010/10/01 22:54

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る

 アメリカ人作家のデイヴィッドはソ連出身の祖父レフ・ベニオフの戦時中の体験談を取材する。
 1942年、レフはドイツ軍によって包囲されたレニングラードに暮らす17歳だった。略奪罪に問われて拘束された彼は、少し年上の脱走兵コーリャとともにある大佐から密命を果たすよう命じられる。娘の結婚式のケーキのために卵1ダースを今度の木曜までに調達せよと…。

 激しく愚かな戦争のさなかに、娘の結婚式のために卵を手に入れよという愚かな命令を実行する若者二人。その二人が卵探索の旅の途上で出会うのは、飢餓によってむしばまれた市民、戦争の犠牲となる犬、ドイツ兵の慰み者となる少女たち。二人の心が壊れてしまっても仕方ないような筆舌に尽くしがたい体験の数々が続きます。
 馬鹿馬鹿しさを通り越してどこか滑稽で仕方ない物語の進展と、決して避けて通れない戦争の厳しく無残な現実。主人公二人の間に交わされるのはあけすけな性にまつわる話と文学論。
 心の針が交互に両極へと振り切れる思いのする書です。

 最後にレフのもとをある人物が訪れるのですが、それはおおよそ予定調和的であって驚きや新鮮味を感じさせません。ですが、胸を引き絞る体験の連続の果てに、このエンディングはほんのりとした温もりをひとつ残すものとして、この物語にはやはり必要なものであったとも感じます。

 

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2011/05/09 18:58

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2010/10/20 01:24

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2010/09/30 23:23

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2010/10/03 11:35

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2010/11/14 18:31

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2010/11/25 23:54

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2010/12/13 22:50

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2011/01/03 14:53

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2010/12/22 22:10

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2011/03/25 23:12

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