紙の本
ちいさなミミズのおおきな役割。
2003/04/10 23:42
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投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この季節になると、道路で日干しになったミミズをよく見かける。学級花壇や自宅の庭で、植え替えや種蒔きをしようと、土を掘っていたら、ミミズと遭遇したり、ミミズをエサにして、フナやコイを釣り上げるのに夢中になった人もいるだろう。
「ミミズ博士」というあだ名をつけられても、余りうれしくはないかもしれないが、作者のミミズとの出会いから、ミミズの生態を追って世界をまたにかけるなど、文字通りミミズ、ミミズ、ミミズの本である。
「ミミズは4億年以上の歴史を有して」おり、「地球上には約3000種類」いて、「日本では少なくとも155種類以上記載されている」そうだ。
「ミミズは毎日土を食べて生きている。−一部略−ミミズの口へ入る前の土と、ミミズが外へ出した土とは、土の性質がまるで違っている。第一に、土と一緒に呑みこまれた新鮮な草の葉や半腐れのワラなどが、ミミズの体内の分泌液によって豊かな黒い土になって出てくる。第二に、出てきた土は細かい団粒状であるから、空気が通りやすく、ふわふわと柔らかなものになる」確かにいい畑は、土が真っ黒でふかふかしている。
他にも「ミミズによって家庭の生ゴミ処理」ができるなど、ミミズの果たしてきた役割は決して小さくはない。ダーウィン曰く「もしミミズがこの世にいなくなったら植物は滅亡に瀕するだろうと結論している」。
「日本の農業では、ミミズをとりいれて土壌改良にとりくんで」おり、そこで「使っているミミズは日本固有のミミズではなく北米やヨーロッパからの導入種を改良したもの」だそうだ。なぜならば、日本のミミズはのんびりしていて生長も遅く、農業には適していないからだとか。
サブタイトルの「大陸移動の生き証人」とは、大陸移動説を提唱したアルフレッド・ウェグナーが「北米大陸東岸とユーラシア大陸とで、陸生5種と淡水生3種のミミズの分布がきわめてよく似ていることに気づいたミヒャエルソンの研究を参考にしながら」「かつて大西洋は存在せず、そこには気候と環境が類似した一つの大陸があったと述べている」。ミミズは、有力なアリバイとしても存在しているのだ。
とりわけダーウィンゆかりの地・ガラパゴス諸島で、それまで固有種は存在しないと考えられていたのに、「海岸の塩分のある所に、多数のミミズ」を発見したくだりは興味深い。「海水に弱いミミズは、大陸から1000キロメートル離れた海洋島ガラパゴスに自力で到達できたのか」その謎はまだ解明されていない。
海を何万匹ものミミズが泳ぐシーンは、シュールだろうか。かつて山中の川辺で、泳いで川を横断するヘビを見たことがあるが、くねくねくとすばやく巧みな泳ぎだった。
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投稿者:なま - この投稿者のレビュー一覧を見る
小さい頃、魚釣りのえさとして、イトミミズを捕まえていたことを思い出させてくれた。筆者のミミズとの出会いから、ミミズの生態を追って世界にまで出かけていくなど、文字通りミミズづくしの本である。ミミズは4億年以上昔からいて、日本では、少なくとも155種類以上いるそうだ。このミミズが大陸移動説の証拠になっていたとは知らなかった。
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[ 内容 ]
地球上に登場して四億年の歴史を有するミミズは、その分布から大陸移動の根拠を与えてくれる。
また、ダーウィンの晩年の書物『ミミズと土』にあるように、ミミズは生態系の一端を担っている。
著者はポーランドでの生態学調査を皮切りに、ケニア、ハワイ、モンゴル、ガラパゴス等々へ、シャベル持参で採集調査に出かけて、思いがけぬ発見をする。
オーストラリアへは巨大ミミズの見学に訪れる。
小さなミミズが大きく見える異色の本。
[ 目次 ]
第1章 庭のミミズ
第2章 動物学的にみたミミズ
第3章 ミミズの生態学
第4章 ミミズを追って
第5章 ミミズをあなどるなかれ
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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すすめられて読んだのだけれど…面白かったのは最初だけ。後半は飛ばし読みしてしまった。『ダニにまつわる話』のようにもう少し身近な話題か環境問題に展開すると思ったが…残念でした。
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ミミズのように生きられたら、生まれ変わるならミミズがいい、と思う私に魅力的なタイトルだったけど、残念ながら読み物として面白くなかった。
後半ほぼ思い出話なのにエピソードがアッサリすぎ。ミミズの話は数値が多くて、で、どう、という部分がものたりない。
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最初の40ページぐらいまでは面白かったけど、あとはグダグダ。
ミミズが生態系にどれほど貢献しているのか、また世界中にどのようなミミズがどのぐらい分布しているのか、といった視点からの話がもう少し多いのかな、と思ってたんですが、中盤以降はずーっと著者の研究の歴史を羅列しているだけ。各地での研究の詳細についても大して詳しく書かれておらず、特に何かしらの研究の成果が示されるわけでもなく、一般読者が関心を持てるような話が出てくるわけでもなく。
著者はダーウィンの『ミミズと土』に触発されてミミズ研究に携わるようになったらしく、またレイチェル・カーソンの『沈黙の春』にも影響されて環境汚染によるミミズへの被害についても声をあげたい、ように感じられます。しかし、この二つのテーマについても掘り下げが非常に甘く、軽くさらっと触れたらすぐに次の話に飛んでいってしまう感じ。
総じて、研究者が自分の研究の過程や成果をメモ書き程度に残している、という印象でした。生態系の中で見たミミズの益についてもっと体系的に書かれていればよかったのにと思うと、本として残念です。
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読売新聞の書評に載っていたので読む。
ミミズ研究者による、ミミズについての話。
ミミズは世界に3000種いるということが、目から鱗。
それ以降は門外漢には、さっぱりな伝わりにくい文章が続く。
サブタイトルに「大陸移動の生き証人」と書いてあり、そこで再びダーウィンやウェゲナーの名と、彼らの学説が出てくるので「世界がわかる理系の名著」とつながりがあったのはよかった。
しかし途中で挫折した。いつか続きを読むかもしれない。
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ミミズが肥沃な土にしてくれる。植物はミミズが生息する地で育つ。しかし、移動が遅いミミズは環境の変化に弱い。現代、ミミズが生息できる地を狭めている。もっとミミズに関心を持たねば。
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ダーウィンの最後の著書は「ミミズと土」ということで、図書館のミミズの本の並びの中から選んだ。1996年刊で、もっと新しい本もたくさんあると思うけど、著者の名前と生年からリケジョのはしりだわ、と選んだ。なぜミミズ?著書の中村さんもやはりダーウィンの本がスタートだった。
最後の方で何度も、ミミズの研究をしたかったが、なかなかできず、遠回りしてしまったと書かれていたが、それでも環境破壊により跡形もなくなってしまう前に標本を集めたいと世界中を奔走していた様子がよく描かれていた。分類の難しさから集めた標本もすべてはまだ特定されていない中、この本でいったんまとめられたようで、その後が気になる。普段知ることのない研究者の生活もわかり面白かった。コミュニケーション能力が高く素晴らしい研究者だなぁと感じました。
海を渡ることが出来ないはずのミミズが、なぜガラパゴスの海水混じりの場所で見つかるのか、大陸が分かれる前まで遡るスケールの大きさに途中から一気読み。
この続きの話はどこで読めるんだろう。
今後もミミズの研究の最新情報についても読みたいと思った。