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みんなのレビュー90件

みんなの評価4.0

評価内訳

90 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

母さんの小さな手

2010/11/28 10:06

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:サムシングブルー - この投稿者のレビュー一覧を見る

わたしにも母がいる。そしてわたしも母親になり、母のことを一人の女性として理解できるようになってきました。

佐野洋子さんは昭和13年父・佐野利一と母・シズコさんの長女として生まれました。中国から引き揚げ終戦後、2つ違いの兄と2人の弟を亡くし、19歳の時に父親を亡くしました。そのときシズコさんは42歳、まだ一番下の妹は7歳でした。それからシズコさんは母子寮の寮母になり、女の手で4人の子どもを大学まで行かせます。自分が建てた家を弟の嫁に追い出され、認知症の症状が現れたシズコさんは自ら老人ホームへ入居します。

幼い頃、母に愛されていないと感じたときから母を愛せなくなり、ホームで最期を送る母を自業自得と思いつつ、自責の念で書いた本書は、娘から母への詫び状です。著書・『100万回生きたねこ』にでてくるとらねこはご本人でしょう。黒と白のしま模様のとらねこは母が何度も編み直してくれたセーターを着た佐野さんでしょう。一回も泣かなかったとらねこは洋子さんではありませんか。

がっしりして、太く赤かった母さんの手は、さき細りの白魚のような手になってしまいます。その小さな手を見つめて、母さんの生きてきた人生を思う佐野さんはあたたかい。母親との葛藤に苦しみ、その苦しみを乗り越えた佐野さんもまた、病床のひとになってしまいます。

佐野洋子さんの訃報を知り、『シズコさん』を読みました。佐野洋子さんは小さな子どもを3人連れた母さんのもとへ、静かに懐かしいそちら側へ旅立たれたことでしょう。合掌。

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紙の本

柔らかな眼差し

2010/10/12 14:30

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:野棘かな - この投稿者のレビュー一覧を見る

自分すら呆けはじめ、体も弱り、視力さえ衰えると、視界と同じで感情の振れ幅が狭くなり、物象は曖昧に見え、柔らかな眼差しで見えるようになる。
こんなこと、そのお歳になって書かなくてもいいのでは、枯れて楽になるはずの頃に、と、はじめは思いながら読んでいたが
柔らかい眼差しになった、その時だから、今だから書けるというタイミングなのだろうと理解した。
いくら、自分で自分を冷淡だと言っても、その時々に、わかりやすく書いたとしたら、生々しすぎて、奮って斬りおろした包丁で、逆に斬り返され、倍以上の力、倍以上の数の包丁がふりおろされ、あえなく絶命。
なんてことが、100万回とは言わなくても、何十回かあったかもしれない。そこまではいくらなんでもできないだろう。
今、佐野洋子さんがこれを書くなら、これはある意味遺書なのかもしれない。

けれど、私はそうは思わない。
って言うか、残念ながら、その域まで、佐野洋子さんの域まで達しなかったのだ。
なぜなら私の母は、61歳で亡くなったから、まだ呆けてはいなかったし、リュウマチという持病はあったがそこそこ元気だった。
だから、母と娘の立場が逆転もしなければ、弱みにつけこむことさえできず、一方的にジエンド、ピリオドがうたれた。
私は、老いていく生身の母を見続けることすら拒否され突き放された娘なのだ。
母との確執は据え置かれ、死んでもなお私を苦しめた。
羅針盤を失った船のように彷徨い、インナーチャイルド、アダルトチルドレン、自分を沈静、癒すことにかなりの時間を要した。
なのに、思い出の中の母は、まだ美しいままだし、年を追うごとにそぎ落とされいい人になる。

佐野洋子さんの生い立ちはうっすら知っていたが、今回の本で新たに知ったこともあり、改めて、混乱の人生だと思う。
はっきり、きっぱりした態度が逆の意味でやさしいし、何ものにもとらわれないように見える人生観は素敵だ。
母性本能が強くカンガルーのように1体だけを抱え込み回りが見えなくなるのはちょっといただけないが、切れやすい面、辛辣なところにも親近感が湧き、嫌いじゃない。
歯に衣着せぬ表現は愛情の裏返しとも言えるが、やさしくないのは本人の言葉通りという部分が読みとれるとやはりちょっと切なくもなる。

この本を読む人の反応は本当に千差万別だと思う。
人それぞれ違った見方ができる。
私のような見方もできれば、素直に自分の将来の姿だと思うかもしれないし、あきれる人もいれば、何言ってんの拒否とばかり中断する人もいるかもしれないし、泣いて癒される人もいるかもしれない。
でも、それらも含めすべて正しい読み方だと思う。
佐野洋子さんは
ただただ独り言のように書き綴り、こだわっていることは何度も何度もためらいもなく重複させて書き、ただ、綴る、それだけで、誰がどう思っても関係ないのだ。ただただ自分のために書いているのだから。

裏表紙の言葉「そして訪れたゆるしを見つめる物語」
結びの文章「静かで、懐かしいそちら側に、私も行く。ありがとう。すぐ行くからね」
そういう域に達したのでしょうか?佐野洋子さん。
佐野さんらしい結び方だとは思いますが、呆けていたし、臨終にも立ち会ってないから、たとえ、そちら側で会えたとしてもお母さんの反応は想像通りではないかもしれない。
ゆるしを共有していることを祈ります。

最後に、それでも、佐野洋子さんのお母様は尊敬できる素敵な方だと私は思う。

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紙の本

切ないなぁ、ヨーコさん

2017/05/13 08:44

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る

母と娘の、愛憎にまつわるさまざまなことが言われるようになったのはそう古い話ではない。
 きっと昔から同性ゆえの駆け引きや騙し合い、あるいは深すぎる愛情はあっただろうが、それが表面にあぶくのように浮かび上がってきたのは、それだけ女性たちがものを言い始めたということだろう。
 絵本作家でもあり良質なエッセイストでもあった佐野洋子さんもまた母親との関係において深刻な事情を抱えていた一人であった。
 2008年に母との関係を記したこのエッセイを書いたあと、佐野さん自身2010年に亡くなるのだが、きっと生あるうちに書いておかなければならなかった一冊だったに違いない。

 「シズコさん」というのが洋子さんの母の名。
 その母からつなごうとした手をふりはらわれたのが、洋子さんの四歳の時だという。
 それから二人のキツイ関係が始まるのだが、洋子さんの筆は母を全否定しているわけではない。
 戦争が終わって大陸から逃げかえってくる悲惨な状況の中で、たくましく立ち回った母の姿も料理が上手だったことも、父を亡くしたあと女手一つで幼い子どもたちすべてを大学まで進めた努力も、洋子さんは認めた上で、母を否定する。
 それはもう生理的な嫌悪でしかない。

 そんな二人に和解の時が訪れる。
 この作品はまさにその一瞬のために書かれているともいっていい。
 その時、それは母の痴呆が進んでからだと、洋子さんは書く。
 「私は母さんが母さんじゃない人になっちゃって初めて二人で優しい会話ができるようになった」と。

 「私も死ぬ。生れて来ない子供はいるが、死なない人はいない」と、この作品のおわりに洋子さんは記した。
 生きるとは、切ないものだ。

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2010/10/12 19:59

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2010/11/21 03:18

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2010/11/23 14:07

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2010/10/19 17:57

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2010/11/02 21:22

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2010/12/05 22:52

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2011/03/19 19:29

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