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紙の本

私のようなマシスンの熱烈なファン以外にどれほどの価値があるのかは疑問

2011/02/26 11:06

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る

 夫デイヴィッド、妻エレン。もう孫が生まれる年齢の二人の仲は、デイヴィッドの浮気が原因でうまくいっていない。関係を修復するためにかつてハネムーンで訪れた海辺の別荘を借りるが、そこでデイヴィッドは美貌の女マリアンナと知り合う。マリアンナは貪欲にデイヴィッドの肉体を求めてくる…。

 リチャード・マシスンの旧作ホラーの本邦初訳です。巻末の訳者解説によれば、1970年代に執筆されたものの、出版社の勝手な編集に激怒したマシスンがいったんは本名で発表することを断念したもので、1989年になって英国ロビンソン・パブリシングから正規版が出たといういわくつきの作品です。
 私は今から20年近く前にこのロビンソン・パブリシング社版のハードカバー『Earthbound』をロンドンの書店で偶然見つけて買って帰ったことがあります。その表紙絵のあまりのおどろおどろしさに気圧されたこと、そしてまだ30代になったばかりの頃に読んだせいか、ポルノ・ホラーともいえるようなこの作品の描写に、大きな恐怖とエロチシズムを同時に感じて、大いにゾクゾクさせられたこと、その両方を今もよく覚えています。
 まさかこの作品が2010年に日本で翻訳出版されるとは思いもよりませんでした。

 40代も残りわずかとなった今読むと、かつて読んだときのような背骨をはいのぼる冷たい恐怖も下半身を撃つエロチシズムも感じるには至りませんでした。

 しかしその一方で、ホラーとエロスによってかつては見えにくくなっていたこの小説の、マシスンが言わんとした肝の部分が読みとれた気がしています。
 それは魂が肉体に対して優位にあるということ。マシスンはキリスト教的な肉体と魂の二元論を意外に保守的な視点から描いているように思います。猛り狂う肉欲をいかに制御するか、そのテーマをしつこく描いたのがこの作品であるようです。

 残念ながらマシスンの作品の中では決してレベルの高いものではないように思います。今なぜこのテーマのホラーを翻訳出版しなければならなかったのか。マシスンの熱心なファンである私のような読者以外には、さほど手に取る価値はないかもしれません。

*157頁「もっと水が欲しくなり、顔をしかめた」という文章に句点が欠けています。
*298頁「驚きで胸が高鳴らせながら」とあるのは「胸が高鳴りながら」か「胸を高鳴らせながら」と言いたかったのではないでしょうか。

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2012/04/05 01:41

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2011/04/06 22:02

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2011/09/04 07:20

投稿元:ブクログ

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